■8 図書館
次の日、私は大図書館に赴いていた。昨日、案内してくれたジェイクに、この国一の図書館だと教えてもらっていたのだ。今の私に必要なものは、情報。私はまだまだ知らなさすぎるのだ、この世界の事を。取り敢えず、まずは魔族についての情報を集めなければ。
さすが、この国一と言っていただけあってとても広く大量の本が本棚に収まっていた。これを全部読破するにはきっと何十年もかかるだろう。それくらいの量の本が入口に立っていても分かる。
魔族に関する本は、この図書館の奥にあるようで。見ただけで、あぁ、これは日が暮れそうだと諦めが入ってしまいそうだった。
まずは、魔族について。
魔族とは、4種類の種族からなるらしい。魔獣、魔人、吸血鬼、そして……魔王だ。魔界に住んでいるらしいが、1000年前に勇者に倒され半分を占めていた土地が、今ではこの大陸の5分の一となったそうだ。となると、魔族の数も減ったのか。
魔王は、勇者がエクスカリバーを用いて倒したらしい。エクスカリバー、エクスカリバー、ね……うん、とてもよく知っているよ。エクスカリバーは、対魔族用の剣らしい。……私、吸血鬼なんだけどなぁ。それ使ってヒュードルア洞窟の主の地龍倒しちゃったんだけどなぁ。……いいの?
待てよ、対魔族ですって? でも、どうして今なんだろうか。だって、魔王は1000年前に殺されたんでしょ? 魔族を殲滅させるために必要なのかな。
え、そしたらそれを探していたあの人達、超絶美味な血をお持ちのあのアンディさんだっけ。あの人達にもし私が魔族だって知られたら、即死刑……うん、ありそう。でもなぁ、血、美味しかったんだよなぁ……あ、やべ、味を思い出したらよだれが……
でも、私あの人達にエクスカリバーの鞘を渡した。もし本体が必要なら、すぐには殺さないはずだ。まぁそこは保留ね。
あとは、吸血鬼について。えぇと……あ、やっぱり太陽の光が弱点なのね。そして、大きな長い牙に、黒髪赤眼。ほら、やっぱりそうだった! 私の想像していた通りだ! じゃあ私はこのフードをとってもいいわけだ! あ、でも牙が見られるのはアウトだし……やっぱ駄目かぁ。マスクみたいなの、服屋さんになかったからなぁ。
この本の通りだと、私は例外って事になるのかな。だって、容姿が違うもん。でも、システムウィンドウにはちゃんと私は吸血鬼だって表示されてるし。転生したって所からしてもう例外って事?
もうちょっと調べたほうが良さそうだな、あぁあとこの世界の地理が載ってるやつ。えぇと……ここかな。
良さそうな本を、何とか見つけたけれど……うーん、ギリギリの高さにあるんだよなぁ……これくらいなら、台を使わなくても……んん~!!
「これっすか?」
いきなり背後から手が伸びてきて、私が取ろうとしていた本を取り出した。なんだかデジャヴってるんだけど。あの人もいきなり背後から来たよね。
「……っ!?」
後ろに立っていたのは、結構背の高いイケメンだった。目が合って、彼は私を見て固まった。え、何その反応。何驚いちゃってるの。どしたどした、と観察していたら、あ、あぁ、はいどうぞ。そうして手に持っていた本を渡してくれた。
疑問に思いつつも、私はお礼の意味を込めて頭を下げる。
【23歳男性 血液型:A型】
甘味:★ 栄養:★★★★
塩味:★
旨味:★★★
あら、栄養たっぷりですね。美味しそ……あぁいやいや、そんな事思ってませんからご安心を。
「……えぇと……これ、古いやつっすよ。改正版、ありますけど……」
慌てつつ、また違うものを取った男の人。あ、そっち新品そう。どっちにします? と聞いているような顔をしていて、じゃあどっちも、とジェスチャーで伝え渡してくれた。どっちも? と不思議に思いつつ何も言わず渡してくれた。この国は優しい人が多いらしい。旨味三ツ星ですしね。ありがとうございます、と頭を下げたのだった。
さてさて、あのヒュードルア洞窟はっと。うん、やっぱりメアマリン王国とアメトリス帝国の国境にあるようだ。てか、アメトリス帝国ひっろ!? まぁ、侵略大好き皇帝だからしょうがないか。……いや、しょうがないで片付けていいものなのかどうかは分からないけれど。
このヒュードルア洞窟、以前アンドリュー達はエクスカリバーを探しにここに来ていた。ここ、何かあるのかな。地龍がこの洞窟の主だったわけだけれど……何も書いてないし……忘れられた王国の、ファラストメア国の名前も地図のどこを探しても見つからない。確かに忘れられてる。でも、システムウィンドウにはちゃんと『忘れられた王国[ファラストメア]』って表示されてるんだよなぁ。
結局、分からない点も残ってしまったまま時間が経ってしまい宿に戻る事になったのだった。
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