■4 うっそん。
それから私は、この理不尽な現実への怒りをこの石に込めていた。そう、石に込めたのだ。
「とりゃっ!!!」
【レベルが1上がりました】
「えいっ!!」
【レベルが1上がりました】
「逃がすかっ!!」
【レベルが1上がりました】
この洞窟、ヒュードルア洞窟内にいるモンスターを倒して倒して倒して。まぁ所謂八つ当たりというやつだ。
打撃スキルを殴って取得したわけだけど、殴る以外でも当てればいいって事だよねって思いつき地面に落ちていた石を投げてみたらビンゴ。近づきたくなかったからもう嬉しくて! だから石投げで一発K.Oさせどんどん経験値を根こそぎ取っている。それをだいぶ続けていて、見てみれば今はこんなにレベルが上がってしまったのだ。
STATUS
根本彩羽 Lv.31
種族:吸血鬼
称号:忘れられた王国[ファラストメア]の新たな君主
______________
飛行:Lv.25 打撃:Lv.29
吸血:Lv.25 治癒:Lv.25
目利き:Lv.9
______________
権力者の手:MAX
権力者の眼光:MAX
絶対服従:MAX
凄くない? 知らない内にこんな事になってたの。これならここ出れるかな? いや、でもこんがり焼かれるのは嫌だしなぁ。運試しする度胸は全くない。またシステムウィンドウが教えてくれるかって保証もないし、たとえ出られたとしてもどれだけ陽の光に当たれるかも分からないし。もうちょっと治療スキルも上げておかないとだね。
「それにしてもさ、この宝石達って……」
私の収納空間に入っている、3種類の宝石。ロイヤルブルームーンストーン、ラピスラズリ、アクアマリンだ。青系のものばっか。どうしてなんだろうか……あ。
ふと思い出し、私は収納空間を開きとあるものを出した。
「あーやっぱり! これにも付いてた!」
それは、エクスカリバーだ。鞘の方にもシルバーの細工と青系の宝石ばかりが埋め込まれていた。一体どういう事なのだろうか。
もしかして、この3種類の宝石って、このファラストメア王国の特産品とかだったり? だって、この国のレガリアとかと一緒にあったんだし、そう考えるのが普通じゃない? もっと種類があったら違うかもしれないけれど、3種類しかないんだもんね。
「おぉっとととっ」
持ち手の場所をじぃーっと見ていたら、剣を落としそうになって。落としたら欠けたりしない!? と慌ててしまう。けど、剣は地面に刺さった。あーぶなっ。なぁんて思っていた次の瞬間。
「えっ!?」
いきなりの地響きと共に、地面が大きく揺れた。ぐらぐらと立っていられなくなり、何とか剣を掴み立っていられている。ヤバイヤバイここ地震が凄い所なの!?
周りの岩の壁が崩れていて、それから地面が割れながら降下していった。ヤバイヤバイと私はエクスカリバーを握りしめ目をつぶってしまったのだ。
「……あれ?」
やっと収まった、そう思いゆっくりと目を開けた。崩れてハラハラと砂埃が立っていて。そして、そしてそして、何だかあたりが暗くなってきた。大きな地響きと、大きな物音……
【[ヒュードルア洞窟の主 地龍]】
地龍……地龍……地龍……あぁ、なんか、目の前に、大きな岩のようなものが……
「ぐぅ”ぅぅ”がぁぁぁぁ”ぁぁぁぁ”ぁあぁぁ”ぁぁぁ”あぁぁぁぁぁ”ぁぁあぁ”ぁぁぁ”ぁぁぁっ!!!!!!」
この洞窟に耳を押さえたくなるほど大きく響いた雄叫び。そして、暗闇の中光る二つの瞳。それは、確かに私を捉えていた。
「……マジかぁ……」
嘘だ、と言いたい所だけれど……とりあえず逃げろ。
私は、走った、走って走って走って走った。もう息が上がっていても、それでも走った。マジで、だって死にたくないし!! 私の人生がこのジメジメした洞窟で終わりとかふざけんなだよ!! マジで!! パクリと丸呑みとか嫌だからねっ!!
だがしかし追いかけっこの状況は変わらない。すぐそこまで地龍が迫ってきてる。あぁもぉ!! 何か、これを打開する策は!!
ん? 待てよ……よしお前、犠牲になってこい。そう、手に持っていたエクスカリバーだ。大丈夫、お前なら出来る。だって魔王すら倒した名剣よ? しかもこの地龍起こしたのお前なんだからな!! 自分で責任取れよ!!
「せぇ……のッッッ!!!!!!」
急に止まった私に気付きもせず、突進してくる地龍の頭目がけて、投げた。私には打撃スキルがある、たぶん……たぶん大丈夫!! 絶対刺さる!! 岩肌でもダメージはあるはず!! たぶん!!
そして、エクスカリバーは狙い通りに頭に突き刺さった。剣の鍔まで入り込んだようだし、たぶん、たぶん……あっ。
そして、音を立てて、さっき落っこちた時のような音を立てて……崩れ落ちていった。気付いた時には全速力で走って、瓦礫の中に巻き込まれることは無かった。
【[ヒュードルア洞窟の主 地龍]を倒しました】
「よ……よ……よかったぁぁぁぁぁぁ」
あっぶない、ここで死んでたらマジ最悪だった。生き延びれてよかったぁ。
【レベルが20上がりました】
いきなり、私の目の前にもう一つの表示が現れた。レベルが20? 20も上がったの? それだけ、レベルの高い地龍だったの? まぁこんなに広い洞窟の主なんだ、そりゃそうだな。でも、私倒しちゃった。いや、これはエクスカリバーのお陰だね。いや~さすが、拝んでもいい。恩人って言葉では表せないよ、ありがとうございますエクスカリバー様。
STATUS
根本彩羽 Lv.51
種族:吸血鬼
称号:忘れられた王国[ファラストメア]の新たな君主、聖剣[エクスカリバー]の主、龍殺し
______________
飛行:Lv.42 打撃:Lv.45
吸血:Lv.40 治癒:Lv.20
目利き:Lv.21 鑑定:Lv.20
筋力:Lv.MAX
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権力者の手:MAX
権力者の眼光:MAX
絶対服従:MAX
すっご、さっき投げただけでステータスが凄い事になってる。吃驚吃驚。……私、筋力ゴリラになってない? って質問は控えさせていただきます。
凄すぎるステータスに見入っていた私がふと気付いた。さっきの衝撃で、周りが崩れたみたいだ。そして、天井も。外は今晴天らしい、陽の光が差し込んできていて。
「あっ……OKですね」
外、出ましょうか。今ので亀裂が入って洞窟がまた崩れてしまってはたまったもんじゃないし。
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