■25 化物
あの後、奴の水魔法で押し流された。壁を突き破るほどの威力に、只耐える事しか出来ず何とかしのぐことが出来た。ここは……広い空間、謁見室か。マクスとカシアスは無事だろうか。
「さすが皇族、何ともしぶとい」
近づいてきたローガンに、すぐに体勢を立て直す。来るか、そう身構えていると、この部屋の壁が勢いよく破壊されたのだ。
「ほぉ、この程度か」
陛下と……もう一人の、金髪金眼。肖像画で見た事のある人物。顔には大きな傷があるが、まごう事なき炎使いのオスカー・ルナティアスだ。
マズいな、雷使い、炎使い、風使い、水使いが揃ってしまった。
陛下は、好戦的。周りなんてお構いなしに魔法を使ってくるだろう。まぁ相手も同じではあるが……間違っても陛下の雷に巻き込まれたくないものだ。離れられるなら離れたいが……
それと一つ気になる事がある。ローガンとオスカーの関係性だ。目的が同じなために手を組んだのか? だとしてもローガンのあの発言。
『本来魔法が使用可能なのは、我々なのです。貴方方は、略奪人。そして、__罪人だ』
『貴方方は、我々から神を奪った』
狙いは皇族。もしその〝貴方方〟にオスカーが含まれていたとしたら__
気が付いた時には水の槍がもう目の前だった。顔を右にズラし回避してから風魔法で自分を後退させる
「考え事ですか? 随分と余裕ですね」
「……お前こそ、余裕を見せている暇はないと思うが」
奴の周りに風の渦を4つ作り出した。水の防御を作り出してはいたが、それは壊せばいいだけ。何度も何度もぶつけ少しずつ水を削り壁を薄くしていく。これはマズいと思ったのか抜け出そうとしている所を見逃さなかった。俺は風使い、自分で作ったのだから近づく為の隙間は作れる。その僅かな隙間に、自分の剣を思い切り突き刺した。
「チッ」
何て奴、避けきれないと判断し左腕を犠牲にしたのだ。突き刺さった俺の剣をすぐに抜き隙間に水の槍を突き返してきた、すぐに避けはしたが、離れざるを得なかった。これで仕留めるはずだったが仕方ないな。
……と思っていた矢先、後ろから火の球が飛んできた。オスカーだ。かわす陛下に次々と打ち込んでいるようで、こちらにまで飛んできたのだ。しかも俺の竜巻まで壊された。中にいた奴は水で覆っていたため被害はない。俺も風魔法で軌道を変えて回避……した、が……陛下が、天井に、手をかざしている……
本能で感じた、以前にも何度も感じた悪寒。
陛下のかざした手の上空に、マナを集め出していて。思わぬスピードで作り出される、大きすぎる光の球。俺は知っている。戦場で何回も見てきた。
そして、バチバチと音を立てて……床に叩きつける。床を抉りながらオスカー目がけて突進していったのだ。俺が立っている位置、丁度オスカーの後ろだ。
逃げろ。
毎回見てきては巻き込まれそうになり必死になって回避した記憶がよみがえる。ローガンなんて気にしてられない、逃げなければの一心で全力のマナを込め天井へ逃げたのだ。
……死ぬかと思った。
陛下は、周りのことはお構い無しにあれをやるから、毎回毎回周りへの被害が甚大だ。一度瀕死になった事だってある。
オスカーや、ローガンは……ローガンは何とか逃げ延びた様だ。直ぐに水魔法を解いて逃げたんだろう。雷で感電してはたまったもんじゃないからな。位置的にも遠かったから逃げ延びれたようだ。
オスカーは直撃だったのか砂埃でよく見えない。
「ほぉ、まだ生きてるか」
「ッ……ハッ……ハハッ…………アハハハハハハハハハハッ……」
あんなのが直撃してもまだここまで笑う余裕があるとは……まるで化物だな。まぁ陛下も化物だが。まるで狂ったかのように笑い続ける。一体何にそこまで……
「ッ……ッ俺は、なァ……アンタの戦場に立つ姿、好きだったんだぜ……アンタは俺の憧れだ……だからこそ、アンタを殺すのは俺なんだ。
__たとえ、道連れにしてでもな」
彼を中心に、白い光が放たれた。
そして、大きな爆発音が宮殿全体に響き渡ったのだ。
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