■23 死者の帰還
宮殿の中は、倒れている者達が多数だ。非戦闘員は避難出来ているだろうか、まずはここの状況把握からだ。
あの宿から見た炎の柱。それを作り出す、そんな魔法を使えるのは俺の知る限りただ一人。
__俺の、二番目の兄上。オスカー・ルナティアスだ。
「……これは一体、どういうつもりだ」
少し入った所で、槍を向けてきた複数の者達に囲まれた。こいつらは一体どこへ隠れていたんだ。数が多すぎる。しかも、その槍や身に付けている装備は全て軍のものだ。数日後に兵士を戦場に送り込む事になっていた為、準備されていたその軍備品を奪ったのだろう。メルテルス伯爵の件もこれで謎が解けたという訳だ。
そしてそう考えるとこいつらは〝碧の使徒〟というわけだ。
皇族に武器を向けている。簡単に言えば、これは謀反だ。
なら、その首謀者は誰なんだ。
奥の方では、激しい戦闘音が聞こえてきて地面が揺れている。ここまで激しいという事はきっと魔法が使われている。陛下と……オスカー兄上。死んだはずの兄上がどうしてこんな所にいて魔法を使えているのは分からないが、相手は陛下だ。陛下は強い。陛下の右に出るものはいないくらいにな。きっと余程の事がない限り負ける事はないだろう。
「皇太子殿下が心配だ。まずはそちらを最優先に」
「御意」
「では、道を開けましょうか」
無傷ですぐに戻らなければならないのでな、さっさと終わらせて帰らせてくれよ。
「さぁ、来い__」
幸い、奴らは戦い慣れていなかった。魔法を使うことが出来る俺がいて、背中を預ける事が出来るマクスとカシアスがいてくれたお陰で思ったより早く宮殿の奥へ進めている。
だが、ちょうど廊下を曲がる所でなにかが目の前に飛んできた。咄嗟に風魔法で受け流したが、これは……
そして、それを飛ばしてきたのは……
「見つけましたよ、大公閣下」
ウッド伯爵家当主、ローガン・ウッドだ。どうしてこいつがこんな所に、そう思うだろうが奴の手には剣が握られている。そして、彼の周りに漂うそれ。
「……待て、それは……」
「えぇ、閣下。その通りですよ」
周りにふわふわと浮かぶ、水。普通の水であれば、空中に浮かばせる事なんて出来ない。なら、どうして浮かべられているのか。その答えは、ただ一つ。
〝水魔法〟
だがおかしい。彼は青い瞳に青い髪。皇族ではないのだ。それともう一つ、皇族は先祖代々、誰一人、水魔法を使えたものはいないのだ。だが、この者は今、目の前で水魔法を使うことが出来ている。
「……どういう、事だ」
「本来魔法が使用可能なのは、我々なのです。貴方方は、略奪人。そして、__罪人だ」
知らず知らずにこのエリアに漂わせていたらしい水が、四方八方から鋭い槍となって我々に襲い掛かる。何とか風魔法で交わしたが、マクスとカシアスは剣で避けきれなかったようだ。所々血が流れている。
「……狙いは〝皇族〟という事か」
「貴方方は、我々から神を奪った」
さっきから、理解の出来ない事ばかりを話してくる。魔法が使用可能なのは皇族のはずだ。その昔、皇族の中に魔法を使うために必要な〝マナ〟を身体に宿して生まれた子供がいた。今の皇族はその皇子の血筋。先程の彼の言い方だと、我々のみ、という風に聞こえる。
そして、神だと……?
「我々の苦しみを、味わってもらいますよ」
まるで、津波の様な大量の水が押し寄せてきたのだ。
面白いと思ってくださった方、もしよろしければブクマ、評価、ご感想などなどよろしくお願いします。特にご感想やレビューなどがあればとても嬉しいです。励みになります!




