■20 イヴ
俺とマクス、カシアスは俺達が今拠点としている家に戻ってきて、何か物音がした事に気が付いた。彼女はまだ眠っていないのか、と彼女の部屋に近づくと、何か違う気配を感じ、鍵のかかっている部屋を蹴破り中に入った。そこにいたのは、彼女をベッドに押さえつける人物。角が生え、手が長い為すぐに分かった。こいつは魔人だと。
すぐに剣を抜き奴に向かって振ったが、カラスに変化し逃げられてしまった。
「イヴ!!」
彼女は、意識がなかったが脈はあったようで一安心した。だが、顔色は良くないな。だが医者には見せられない。彼女は吸血鬼であるからだ。……何もなければ、いいんだが……
それから彼女は、一日経ち目を覚ました。だが……いつもの彼女ではなかった。ゆっくりとした動作、何も考えていないような無表情。瞳に光が灯っていない。まるで人形だ。話もしてくれない。こちらから何度も何度も話しかけても、答えてくれないんだ。
一体、あの魔人は彼女に何をしたんだ。
見つけ出して問いただしたい気持ちはあるが、探し出すにはだいぶ時間がかかる。手がかりがないからだ。それに、魔人は吸血鬼と違って昼間も活動する事が出来る。その為、変化をして烏の状態での移動も可能という事だ。これでは探しようがない。
この事件から、彼女は俺の血をねだるようになった。それは、頻度が日に日に多くなってくる。マクスやカシアスの血は嫌らしく、二人は苦笑いをしていた。
それと、こちらも着々と相手の尻尾を掴めそうなくらいに近づいてはいる。だが、俺はイヴとあまり離れられない。もし血が欲しい時に俺がいなかったら、どうなるのかはまだ分からない。責任を取ると言ったのは俺だしな。
そして、事件は起きた。
それは、アメトリス帝国が暗闇に包まれた、月の隠れる新月の夜。
大きな地響きがしたんだ。
その音は、この方向は……宮殿。すぐにこの部屋の窓を開けた。
「炎の、柱……」
宮殿に、炎の柱が一本立っている。あれは、魔法だ。そして、それを使うことが出来るのは、一人しかいない。
「殿下」
「……」
「遅くなってからでは何もできませんよ」
「ッ……」
俺の眼に入るのは、眠っているイヴ。
……大丈夫だ。そう心に言い聞かせ、いつもしている母の形見を外した。そして、イヴにかける。彼女に話した事のある、ホワイトムーンストーンの首飾り。
「__イヴ」
大丈夫、戻ってくる。
「行くぞ」
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