■11 ファラストメアの民
「貴方は……一体、誰なんですか……!」
また、会った。偶然である。そう、あの時、あの大図書館で、本を取ってくれたあのお兄さんだ。25歳A型のあの人。バッタリ会って、腕を掴まれて、人気のない場所に連れ込まれて、まさかのこんな発言をされた。しかも、目の前で両膝を付いて、見上げてきた。いや、ちょっと立ってくださいって。他の人がこれ見たら、私が座らせたみたいに思われちゃうじゃないですか。
しかもこの人は何者、と聞いてきた。ちょっと待て、これはバレちゃったってやつ? あ、でも吸血鬼ですかとは聞かれてないしそこまでは気付いていないようだ。
私は、立ってくださいとジェスチャーをしてから、ジェイクに貰ったメモ帳とペンを取り出し、サラサラと文字を書いた。
〝何の事でしょうか〟
そう書いて見せた。心の中では大混乱中ではあるが、顔には出さずに。彼は、言葉は話せないという事に気付いてくれただろうか。だが、混乱はしているようだ。あ、あぁすみません、と謝ってきた。
「オリヴァー・デービス、第三騎士団副団長をしています」
自己紹介をしてくれたお兄さんに、私も筆談でイヴと名乗った。さて、どういう事なのだろうか。
「図書館で、初めて会った時……あの時、感じたんです。言葉では、表せないんですけど、でも、あの日から忘れられなくて……」
……ん”ん”ん”ん”?? 私、今告白受けてる?? え、違う?? いや、冒頭で誰なんだって聞いてるから違うでしょ。何かを感じたって言ってたけど……何を?? それ分からなきゃ意味なくない??
〝何か、勘違いされてません?〟
「いえっ! してませんっ!」
お、おぉ……即答っすか。しかも両手取られちゃったし。これ、離してもらわないと筆談できないんですけど。なんか言いたいんだけどうまく言えないってやつ? あぁ、話すことが決まってないくせに私見つけてつい気持ちの方が勝っちゃってってやつかこれ。いや、こっちが困るんですけど。
【25歳男性 血液型:A型 ファラストメア国神官の子孫】
甘味:★★★★★ 栄養:★★★★
塩味:★
旨味:★★★
……おい、それを先に言えよシステムウィンドウ。てか甘味増えてない? え、 味って変わるものなの? しかもついこの前だよね、会ったの。こんなに短時間で?
しかも、この人ファラストメア国の子孫かよ。あぁ、だからこうなってるのか。私がファラストメア国の新たな君主だっけ、だから何かを感じ取ったって訳か。……いや、これ知らなきゃただの変態って思われてただろうよ。大丈夫かこいつ。……あの、そんなに見つめないでもらえます?
はっ、となんか正気に戻った彼はぱっと手を離してくれた。顔が汗だらだらですよ大丈夫ですか。取り敢えず、持ち物からハンカチを渡した。いえいえ! と拒んではいたけれど、いやそのままじゃマズいでしょ、とちょっと強引に渡した。
「こ、これ、洗って返します。いつ、会えるでしょうか……」
こりゃ困ったぞ、いつ、だなんて……あ、そうだ。
〝あの図書館に行くことが多いので、もし会えたらその時に〟
「はっはいっ!」
あら、元気のいい事。さっきまでオロオロしてたくせに。
バイバイ、と手を振って別れた。……なんか、ぼーっとしてたけど大丈夫かアイツ。騎士団なんでしょ、しかも副団長。……心配だ。
あ、あの人ファラストメア国の民の子孫なら、あの国について知ってる事あるかもしれない。……どうやって聞き出すかが問題だけど。
「……お腹、空いたなぁ……………」
この前から、収まらないこの渇き。空腹感。
以前好きだった、お肉をいくら食べても満足感がまるでない。
……お腹、空いた。
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