日常、そして非日常へ
第2話です。
相変わらず拙い文章ですが、楽しんで頂ければ幸いです。それでは本編をどうぞ!
午前中の授業内容を終え、昼休みの時間を告げるチャイムが鳴り響く。
そのチャイムと同時に生徒達は行動を開始する。それは購買にお昼を買いに行く生徒や、自分の友人の近くに移動する生徒等、様々だ。
俺はといえば、自分の席で弁当を食べていた。
「創太、一緒に食べようぜ!」
そう声を掛けてきたのは玄信。お昼は大体玄信と一緒に食べてるから、もうこの光景も見慣れたものだ。
「そうだな、一緒に食べよう。まぁ、お前とはいつも一緒に食べてる気がするけど」
「いやいや、お前たまに弥生ちゃんと一緒に食べてるじゃん!まったく学校でもイチャイチャしやがって…」
「そうそう…神白、妹ちゃんのこと好きすぎでしょ」
からかうような口調でそう告げたのは前の席の褐色肌の少女、紡木玲奈、彼女とは2年生になってから一緒のクラスになった。
彼女の明るさやコミュニケーション能力の高さに最初は若干驚いたものだが、いざ話してみると普通に良い奴で今ではこんな会話を交わすぐらいには仲良くなった。
「まぁ、創太がっていうよりは弥生ちゃんが創太のことが大好きって感じだけどな。創太も何だかんだ弥生ちゃんが大好きみたいだけどな」
「じゃあ、相思相愛ってこと?兄妹の禁断の恋ってやつ!?まるで漫画みたいじゃん」
「勝手に何言ってんだよ…まったく、そういうんじゃない…俺と弥生はただの仲のいい兄妹だよ……っと、ご馳走さまでした」
「もう食い終わったのか!?早っ!」
「昼休みに弥生と約束があるからな。早めに食べておかないと」
「やっぱ、妹ちゃんのこと大好きじゃん…」
そう言って、こちらをジト目で見つめてくる紡木をスルーしつつ、鞄を取って席を立つ。
「鞄ごと持ってくのか?」
「あぁ、一応な…鞄の中には財布とかもあるし、持ってかないと危ないからな」
「それならウチらが見張っとくよ。神白は安心して妹ちゃんのとこに行ってきな」
「そうか?それなら頼んでも良いか?」
「任せとけ!ほら、弥生ちゃんの所に行ってやれよ」
「サンキュー、2人共」
2人にお礼を言ってから、怪盗シャインの本を手に取り、図書室に向かって歩いて行った。
「行ったか……ところで聞きたいんだが、ぶっちゃけ紡木って創太のこと好きなん?」
「ぶっ!は、はぁっ!?べ、別に好きじゃないし!」
「そうか〜?」
「あくまで、友達としては好きだけどね!そういう恋愛的な意味とは違うから!」
「オッケー、そういうことにしておくわ。まぁ、もし創太にアプローチしたかったら、いつでも相談に乗るぜ」
「勝手に言ってれば…まぁ、アピールする時はよろしく」
「おう、任せとけ」
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「さて、弥生は居るかな?」
図書室にやってきた俺は弥生の姿を探してみる。
…どうやらまだ来ていないみたいだな。
しょうがない、弥生が来るまで何か本を探してみるか。
そうして、しばらく本を探していると後ろから肩を叩かれた。
「兄さん、お待たせ」
「俺もさっき来たばかりだよ」
「そっか、じゃあさっそく始めよ!兄さん」
「あぁ、そうだな。さっそく始めよう」
弥生とそんな会話を交わしながら、近くの席に着く。
「私の最近ハマっている本はこれ!『妹がメインヒロインになるにはどうすれば良いのか?』だよ!」
「タイトルの癖がすごい……これってラノベか?」
「そうだよ!この本は妹視点のライトノベルで、妹が兄にどうにか女の子として意識してもらいたくて、あの手この手でアプローチしていく話なんだ」
「な、なるほど…弥生はその話のどんな所にハマったんだ?」
「この小説の妹がすごく健気で可愛くて、ついつい応援したくなっちゃう所かな……私との共通点も多いし」
「そうか…」
「私も兄さんには妹としてじゃなくて、女の子として意識してほしいなって思ってる所とか」
「それはなかなか難しいな…」
「だよね〜、わかってる…だけど、私は諦めないよ!必ず兄さんに私を女の子として意識させてみせるから!」
「あはは…お手柔らかに」
俺は弥生のそんな言葉に苦笑するしかなかった。
もちろん、弥生の気持ちには気づいていた。というか、ここまでアプローチされて気づかない方がおかしい。
だけど、弥生はやっぱり妹で俺は兄だ…そればっかりは変えることができない。
ただ、弥生の気持ちを拒絶する勇気もなく、さりとて開き直って弥生と付き合う度胸もない。
我ながら中途半端だな……いずれはちゃんと向き合わないと。
「それじゃあ兄さんのハマっている本を教えて!」
「了解!俺の最近ハマっている本は……」
そう言って、怪盗シャインの本を見せようとしたその瞬間、辺りを光が包み込む。
「なっ、なんだこれ?」
「…眩しい!兄さん、大丈夫!?」
「こっちは大丈夫!弥生の方は?」
「こっちもなんとか…何なんだろこれ?」
「わからない…って、うわっ!?何か引っ張られてる!」
「私も引っ張られて!?」
「弥生!」
そう叫んで、弥生の手を握る。弥生もそれに応えるように強く手を握り返す。
「大丈夫だ!何があっても必ず弥生のことは守ってみせる!」
「兄さん…私も何があっても必ず兄さんを守る!だから、この手を離さないで!」
弥生のその言葉を聞いたのを最後に俺の意識は途切れた。
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「うぅん……あれ?確か俺は…そうだ!弥生は!?」
意識が覚醒し、すぐに弥生の姿を探す。すると、俺の手を握り、側で眠っている弥生の姿が目に入った。
「良かった…無事で。そういえば、ここは一体?」
辺りに広がっていたのは、色彩豊かな、まるで異世界のような場所で、空中にはシャボン玉のような球体がいくつも浮かんでいた。
何だここ…もしかして、玄信が言ってた神隠しか?まさか、本当に神隠しに遭ってしまうとは。
「…それにしても、なんか幻想的な場所だな…って、感想言ってる場合じゃなかった…弥生、起きてくれ」
弥生の体を揺すり、起きるように促す。
「う〜ん…どうしたの兄さん…うん?兄さん…?はっ!兄さん!無事!?どこも怪我してない!?」
「あぁ、この通り無事だよ。弥生は大丈夫か?」
「私は大丈夫だよ。良かった〜!兄さんが無事で…あっ…」
俺の無事を喜んでいた弥生がふと繋がれている手に視線を移す。
「手、ずっと握ってくれてたんだ…ありがとう兄さん」
「離すなって言ったのそっちだろう…まぁ、とりあえずお互いに無事で良かったな」
「うん、そうだね…あのさ、しばらく手を握ったままで良いかな?」
「えっ、いやそれは構わないけど…」
「ありがとう」
そう口にして、弥生は手をギュッと握りなおす。その表情はまるで大事な宝物を包み込むような表情だった。
くっ、なんという破壊力…惚れるかと思ったぜ…って、いかんいかん…とりあえず今の状況を把握するのが先だ。
「おやおや、随分仲がよろしいようですね。羨ましい限りです」
「誰だ!?」
突然響いた、軽薄そうな声の主にそう問いかける。
「これは申し訳ございません…私はこのストーリー・ワールドの管理者、コアです。以後お見知りおきを、フィクサーのお二方」
「フィクサー?何言ってるかわからないけど、とりあえず姿を見せろ」
「おっと、これまた失礼。今から姿をお見せしますね」
そうして、姿を見せたコアという存在に俺は思わず目を丸くする。
コアと名乗る存在の姿、それはどこからどう見ても巨大な一冊の本だった。
「巨大な本…?弥生、あれってどう見ても本だよな?」
「そうだね、どう見ても本だよ…というか、本って喋るの?」
「私は、姿こそ本ですが一応このストーリー・ワールドの管理者、神様的な存在なので」
「神様…?そもそもストーリー・ワールドって何なんだ?フィクサーっていうのもよくわかんないしさ」
本当にわからないことばかりだ、ストーリー・ワールドって何だ?フィクサー?そもそも何で俺達はこの世界に居るんだ?
「色々と聞きたいことがあるでしょうし、今からお話ししてさしあげましょう」
「そうしてくれ…今のままじゃさっぱりわからない」
「では、お話ししましょう」
そうして、この世界の神を名乗るコアは語り始めた。