日向の最近
『迷宮に入れ迷宮に入れ』
「うるさい」
はぁはぁ、と肩で息をしながらベットから起き上がる。
「もう、一体何なのよ。はぁ、先輩まだかな」
最近ずっと同じ夢を見るようになっている。
大きな蛇のような違うようなモノが自分の目の前におり、迷宮に入れと言ってくるのだ。
マジモンの恐怖。
しかも、姿がはっきりしていないのだ。本当に怖い。
しかも、時には『契約しろ』とか『お前には我を使いこなす才がある』とか全く意味が分からない。
さらに『原初の魔王様にお力を』とか勝手に自分の世界に入り込む事もあるので困っている。
「一体何なのよ。迷惑迷惑本当に迷惑なんだから。迷宮って、まだ私18歳ちゃうし」
しかも夢を見たすぐに自分の顔を見ると髪の毛がより蒼くなっている気がするのだ。
ダンジョンが出来てから数日で髪の色が変わった。
魔力によって髪の色が変わった人はかなり多く、さらに魔力をステータスなしで操れる人も出るようになった。
そう言う人達は大抵子供で専用の学校に通っている。
ダンジョンが出来てから色々変わったのだ。
そして、私の誕生日はまだまだ先なのだ。
全く、こちらの事情も工面して欲しいものだ。
「私が冒険者になったら翔さんはパーティを組んでくれるかな」
ああ、先輩では無く翔さんの前でも、翔さんに向かって翔さんって言いたいな。
「日向、まだ起きていないの」
「起きているよ今行くよ」
食パンを食べながら数日前から夏の長期休暇になったのでやる事がない。
課題も休みから2日で終わらせたし。
「おいおい寝ぼけるなよ」
「私は寝ぼけていまへんよ」
「「⋯⋯」」
お父さんの隣にお母さんが座っていて、その対面に私がいる。
本当に長期休暇はやる事がない。
夜闇達は補習が当分あるからな。
両親は仕事に行くので何時も家には1人なのだ。
「暇だなぁ」
「そんな事を入れる日向は凄いなぁ」
「そうねぇ。成績は何時もいいし。家では何時も寝ているのにね。夜闇ちゃん達にも見せたらどんな反応するのかしら?」
「辞めてね」
夜闇達は私は家でもきちんと勉強をしているイメージを持っているのだ。
家に招待した事があって、その時に厳しい親がいるイメージが壊れたらしい。
うちの両親は超が付いていいほどに優しい両親だ。
『はよ迷宮に』
「ぐぅ」
「「どうした(の)」」
「だ、大丈夫」
さっきの言葉に付け足ししよう。
最近寝ていなくてもこの渋い声が頭に響いて来るのだ。
本当に有り難迷惑。
この声のせいで最近の目覚めは良くない。
ちなみに私の休日のスケジュールはだいたい寝ている。
やる事がないからだ。
ゲームもあんまりやんないし、アニメとかは見るけど1度見たら内容を一言一句覚えているので2度と見ていない。
アニメやラノベ、漫画は好きだ。
しかし、数分もあればラノベは読み終えるし、漫画も同じだ。
そして、新刊が出るまで暇を持て余す。
そんな生活していたら寝る事が1番の特技になっていたのだ。
皮肉だ。
夜闇達と遊ぶのはとても楽しいが、テスト期間になると大抵勉強を教えている。
赤点は回避しているが、成績がそこそこ低いので補習を受けるのだ。
そして、毎回「一緒に行こう何処までも」と連行されるが、先生に追い出される。
「行ってらっしゃい」
両親が仕事に行ったら私は朝風呂に入って頭をクリアにする。
そのまま部屋に行き、翔さんからメールが来ていないか確認し、ベットにイン。
ぶっちゃけ頭をクリアにしてもすぐに意味が無くなる。
目を閉じて意識を闇へと送る。
◆◆◆◆
そこは何処までも続く深海のようなところだった。
奥も、空も、何も見えない水中の中に居る。
ただ、暗い。
そんな所に私はいた。
これは夢だと分かっているが、何かと懐かしい気持ちになるのだ。
「なんだろう」
しかし、この深海はこの世のモノではないように感じるのだ。
時折、このように深海に居る夢を見るのだ。
しかし、今回は何時もとは違うようだった。
ジュボン
水の中に入る音がしたので、その方向を見ると1人の少女が居た。
水圧も浮力も全く受けて居ない動きで私に近づいてきて、頭の上に手の平を置く。
何故か、とても心地が良かった。
それは翔さんにとても似ていた。とても心地が良かった。
『─────よ。しばしの間、居なくなる。この世界は大変な事になる。それが何かは分からない。しかし、とても大きな戦いなるだろう。せめて魂を壊されないようにするさ』
「⋯⋯」
『おいおい、そんなに怒るなって。いずれ──の座を譲るつもりだったさ。しかし、私より強い奴は居ないがな。強くなって転生できる事を祈る。それか、この世を導く人と出会えること、かな』
「⋯⋯」
『じゃあ、行ってくる』
そう言って少女はこの深海から登っていく。
私は行かないでと手を伸ばすが、それが少女に届く事はなかった。
「はっ」
手の甲に水が落ちる。
額に手を当てると分かったが、これは私の涙だった。
私は泣いていたようだ。
心に、ぽっかりと空いた悲しみとどうして置いて行ったのと言う怒りが巻き起こる。
しかし、この怒りは悲しみを紛らわした怒りなので余計悲しくなる。
「あなたは一体何なのよ。本当に。私に、何を求めているのよ」
しかし、何を望んで、何かを託したくて私に夢を見せている何かは反応していくれない。
「はぁ〜まじでなんなのよ」
そう言って仰向けに枕に頭を置き、布団を整えてまた、眠る。
心地良い感覚が襲い、闇に向かって意識を投げ飛ばす。
◆◆◆◆
今度は激戦の戦争のような場所にいた。
新しい夢だな。
私は空を飛んでいて、辺りを見渡せるようになっていた。
そこには角の生えた人とは到底言えない者が飛んでいたり、騎士のような人が戦っていた。
それが沢山。⋯⋯死体も沢山。
まさに戦争の図だった。
しかし、それよりも気になる2人の女性の大人と先程見た少女が戦っていた。
純白の鎧に剣、髪をした女性の大人の人が剣を振るうが、少女は赤黒い悪魔を連想させるようなワンピースにこれまた悪魔を連想させる翼、その色と合わせた剣で受け止めていた。
何度も剣と剣がぶつかり合い、ぶつかる度に辺りに大きい衝撃波が巻き起こる。
あの人たちがきっと1番強い人達なのだろう。
「勇者と魔王」
そう、自然と言葉が出てきた。
私で無くともこの2人の戦いを見ているとまさに人類の希望、勇者と人類の絶望、魔王の図だと思うだろう。
勇者側には人間、魔王側には悪魔に魔物と阿鼻叫喚だった。




