A級ダンジョンー⑭
「そんな、攻撃当たるか!」
乱暴に振るわれる大剣を躱している。
体操選手のように身体を曲げて躱したり、すれ違いのように前方、リビングアーマーに向かって進む事によって躱したりと色々な方法で躱している。
その間にラプラスやウリエルを自在に操作し、鎧の隙間、目を狙って突き刺しているが、刀や剣といった型式を持った武器では無い為、威力が弱すぎる。
すぐに再生されるのループーに入っている。
かなり時間が経っているのか、MPが105まで回復している。
黒色の大剣を持たせないように近くで戦っているが、盾が変形して出来た大剣もかなり強いので、きつい。
ずっと燃えているのに魔力は尽きないのかよ、と何回も思った。
此奴の攻略方法が分かればいいのだが、全く分からい。
ひたすら隙間を狙っているが、そこまでダメージを負わす事も出来ないし、だんだん学習しているのか最初の時と比べても当たる頻度が下がってきた。
ジリ貧、と言うよりも俺が押され始めている。
そして、こんな奴には魔石を破壊することが1番手っ取り早いが、鎧が会ってそれが不可能なのだ。
相手の魔石は心臓部にある筈だ。
基本、魔物が魔石を持っている場合は心臓部にある事が多い。
解析で魔力の流れを見ているが、心臓部に当たる所に集結しているところから魔石は心臓部にある事が分かる。
なので、この鎧を破壊すること目標にしている。
回避にも専念しないといけないので【神風雷鳴剣】は意味がないんだよな。
「本当の意味での風に、俺は慣れないのかな」
そんな、意味の分からない質問を自分に聞く。
風とは、空気の流れ、空気を振動して伝わるのが音。
「音速を越える事が出来れば!」
そう結論に至った。
音速、神速は今の俺では到底到達出来ないだろうが、音速ならいけるのではないだろうか。
風を、空気を、完全に支配出来れば⋯⋯いけるのかもしれない。
しかし、今の俺で音速を越えられるのだろうか。
いけないかもしれない。難しいだろう。
「それでも、やるんだ。やるしかない!」
そうだ、やるしかないんだ。
音速の速度を持って、火力を上げる。
攻撃を躱し、最大限の高火力を同じ場所に叩き込み鎧を破壊する。
夢の語りだろうとなんだろうと、現実にすれば良いだけの事だ。
火を纏った大剣が俺の真上にあり、振り下ろされる。
横にステップを踏み、躱していく。
俺にとっての最速は【神風】だ。
しかし、あれは空気の流れを自分自身にしている訳なのであの状態からの攻撃は出来ない。
それに、あれだと音速には達していないだろう。
俺には、防御力も攻撃力も乏しい。
しかし、塵も積もれば山となる、と言うことわざがあるのだ。
音速で、同じ位置に何十、何百、何千と攻撃を与えたら、破壊出来るのではないだろうか。
思考の渦に潜りながらもリビングアーマーの攻撃を躱していく。
今の、俺には力が、足りない。
強く、なる為の力が足りない。最強の冒険者になる為には力が、足りない。
俺には普通の冒険者と比べても勝っているのは素早さだけだ。
3桁もいっていないレベルでA級ダンジョンなんて普通は挑まない。
無謀だからだ。
しかし、俺はそうとは思わない。
慢心するつもりも傲慢になるつもりも毛頭ない。
ただ、何があっても攻略する意思が重要なのだ。
《ダンロード率48パーセント》
な、なんだ?
なんだ今の天の声わ?
ダンロード率?そんなものは今始めている知ったぞ。
こんな危険な状況でよく分からんことを言いよって。
しかし、なんだろうかこんの感覚。とても重要な気がしてならない。
俺が力を求めているから反応したのか?
分からない事が増えたな。
しかし、何かが変わる気がする。
証拠も、確信もないが、ただそんな気がするのだ。
諦めるのも、辞めるのも、俺にはまだ早すぎる。
「後、少しな気がする」
リビングアーマーの目は確実に俺を見ている。
油断、そんなのは一切見せてはいない。見えてもいない。
リビングアーマーは俺を敵と認識し、俺を殺す為に動いている。
人に限る話しでは無い。
人は感情や覚悟によって力が変わる生き物なのだ。
誰かを守りたい、誰かを救いたい、誰かを助けたい、そんな感情でも人は変わる。
火事場の馬鹿力と言う奴だ。
それだけでは無い。
倒す覚悟と殺す覚悟では全く違う。
殺す事に躊躇が無くなった人はとても危険で、強いのだ。
心が特に。
そしてリビングアーマーは俺を殺す為に動く、ならば俺もリビングアーマーを殺す覚悟で挑むべきだろう。
ラプラス刀の先端をリビングアーマーに向け、宣言する。
「俺は、お前を殺すッ!」
その答えを聞きたかったかのようにリビングアーマーは笑う。
目しか分からないが、そんな感情が伝わって来るのだ。
《ダウンロード率50パーセント》
《1部、能力の解放を行います》
《秘宝、演数之大悪魔の万能器・殲滅之大天使の万能器の最大質量を上げます》
《スキル、分離を解放しました》
《ダウンロード完了》
十分だ。
俺は両足にウリエルを、そして両手に短剣のラプラスを持つ。
分離、内容を観なくても分かる。
火人王も分離をする。
しかし、その分質量が減るのだが、質量が上がった事により問題が無くなった。
翼で飛んでも安定出来るようになっただろう。
そして、靴型になったウリエルにより俺の素早さは少し上昇して、太もも、ふくろはぎをコーティングしているので足への負担も全然ない。
ウリエルを通して行えば気の無駄遣いも減るだろう。
「いくぞ、リビングアーマー」
意識を、一点に集中させろ。
「神風琉。神風の脚」
俺が、10人になった。
しかし、分身ではない。残像だ。
さらに数が増えていく。
たった今作った技。
音速で次の場所に行き、0.01秒止まって2段ジャンプの要領での気を足場に次の場所にいく。
地面、空中、リビングアーマーの前や後ろ、左右にも俺がいるように見える。
リビングアーマーが1人の俺を捕まえようとするが意味がない。
その場所に行かなければいいのだから。
分身とは違う嫌らしさを持った残像体達。
狙うは心臓部の鎧。
そこに止まる時は1秒にして、音速を越える斬撃は無理なので高速、いつも以上のスピードでの連撃を叩き込み、また移動して、戻って、連撃、攻撃するタイミングでリビングが手を伸ばして来るが、その場合は少しの間行かない。
手が離れたら、また戻り連撃、移動、戻って、連撃、ひたすら繰り返す。
鎧には再生能力は無いようだ。あっても困るけど。
どんどん鎧に短剣の跡が出来、深く深くなっていく。
リビングアーマーは黒色の大剣を持ち、二刀流になって、黒色モヤを辺りにばら撒き、火もばら撒く。
その度に残像は減っていく。
しかし、違う場所にまた現れる。
やり方を変えたのか、心臓部を手で守っている。
その代わりに赤色の剣を地面に刺している。
これで、火の剣よりも黒の剣の方が危険だと教えてくれる。
少し離れた場所に落ち着く。
黒いモヤを一直線線に俺に伸びてくる。
かなり広範囲で躱すのは難しい。
難しい、だけだ。
今、俺はリビングアーマーの上空にいる。
真上だ。
リビングアーマーは数秒遅れて俺が真上に居ることに気づいたようだ。
純白の翼で金色で付け根を装飾している天使の羽が一対二の羽が生えている。いや、付いている。
質量が増えた事により、ギルド戦よりも大きくなっており安定している。
リビングアーマーは俺に戸惑いと驚愕に満ちた視線を向けてくる。
リビングアーマーに飛ぶ術はないだろう。
あったはあったで困るけどね。
相手はまだ、本気を出していないだろう。
その慢心が何時まで続くかな。




