A級ダンジョンー⑪
右の壁に黒い影が出来る。その影は手のような形をしている。
すぐさま、前方へダッシュする。
ミニマップで確認すると、壁の向こうには道はない。
ないが、道が出来ているのだ。
つまり、先程の足音は足音ではなく、氷の壁を進んでいる訳だ。
後ろを振り返ると、1つ目の青い肌の魔物がいた。
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#@%@* 〇級
HP無限
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な、なんだよそれ。
今から青い魔物と死の鬼ごっこが始まった。
全力で走っているが、相手も速い。
しかも、地面を走って進んでいる訳ではなく、地面を滑っているのだ。
その分、走るのが速い。
「ごあああああああああ」
魔物が叫びを挙げると、先程の氷が割れる音が響く。
ミニマップを確認して、どのように進んでいるかを確認。
しかし、どのように出てくるかは分からないので、スキルを使う。
「未来視」
なんだよこれ!
心の中で叫びを挙げる。
前方からまず、氷の柱のような物が飛び出てくる。
上から躱そうとすると、上にも柱が出ているのでそれに潰される。
下から潜ろうとしても、同じように柱が下から上へ出てくる。
逃げ道は柱が出てくる前に逃げ切る。
「神風琉。【神風】」
風になり、最速でのスピードで氷の柱ゾーンを乗り切る。
「ごああああああああ」
また魔物が叫びを挙げる。
ズトォォオオン
上から柱が飛び出てくる。
天井は氷になっており、少し影が見えるので未来視を使わずとも回避は出来る。
柱を躱して躱して躱す。
氷の柱を壊しながら俺に迫ってくる青色の魔物。
MPが無限。つまりは倒せない。
この階層のトラップなんだろう。
目の前から白色の毛皮を生やしたゴリラが現れる。
俗に言うイエティーだろう。
都市伝説ではなかった!
今はそんな事はどうでもいい。
ゴリラの後ろに回り込んで、背中を蹴る。蹴る寸前にラプラスとウリエルを足に纏わせ、威力を上げる。
ゴリラが魔物に迫るが、魔物が右腕を横に動かすだけでゴリラが氷の壁に埋まる。
「攻撃力も高い訳ね。ハハ、なんだよそれ」
泣き言も言いたくなるものだ。
どうしても勝てない完全る『死』俺に与えようと奮闘する魔物。
ミニマップを全開にして、逃げ道、或いは攻略方を導き出す。
あいつは氷の壁を突き破って現れたのだ。
何か、何かヒントがある筈たのだ。
それは俺の決めつけかもしれないし、自分の心に余裕を持つ為に無意識にそう思っているかもしれない。
何か、何かないのか。
「ご、ごあああああああああああああ」
バキバキ
後ろを振り返ると、地面をえぐり丸めて固めて片手に持つあいつがいた。
「範囲殲滅」
咄嗟に範囲殲滅を使った方がいいと本能が訴えているので、躊躇いもなく使う。
刹那、範囲殲滅の光と、あいつが片手で野球の投げ方のように大きく振りながら投げた、ダンジョンの地面塊がぶつかり合い、火花を散らす。
「これが、唯一の弱点かッ」
範囲殲滅は俺の意思での制御ができる訳では無い。
範囲の設定は出来るんだけどね。
ただ、殲滅するための光を発動した場所の俺を中心にしてドーム状に広がるだけだ。
穴を開けたり、前方に飛ばせる訳でもないのだ。
なので、動く事が出来ない。
しかし、あいつは違った。
あいつはこの中をドシドシと進んでいるのだ。
ドームの光が収まったと、同時に前方へ全力疾走している。
ズトォォオオン
先程いた俺の場所はあいつの手の平によって抑えられていた。
地面が地震かの如く、上下に揺れる。
何時まで追いかけて来るんだよ!
ミニマップの左に新たな道がある事に気づいた。
しかも、しかも階段のマークがるのだ!
「やるしか⋯⋯ない!」
ラプラスとウリエルを混ぜて拗らせていく。
そのまま、階段に突き刺し、拗らせを高速で解除していく。
そう、ドリルだ。
しかし、氷の壁は俺の予想よりも全然硬かったのだ。
またもや全力で前方に走る。
ラプラスとウリエルを混ぜて刀にする。
そのまま氷の壁に向き直る。
「神風琉。【一風の太刀】!」
ガッキィィン
一撃の重さを重視した技で、さらにスキルでの使用で威力を上げているのに、壊すどころか傷すら付かなかった。
畜生、神風雷鳴剣は時間が経てば馬鹿みたいな威力になるが、今は1秒1秒重要なのだ。
なので使えない。
一瞬の火力で言うなら、一風の太刀なのだ。
この技は横に一閃する技だが、気を合わせる事によって空気を操り高速で流れを作って風にしているので、威力はただの一閃よりも高い筈だ。
今は冷静に分析している場合ではない。重要だけど。
火は意味無い。
解析で火人王に似た、体質がある事が分かっている。
つまり、火属性攻撃は意味がないのだ。
「やばい!」
あいつがまた、地面の塊を投げて来る。
範囲殲滅は⋯⋯間に合わない!
「神風琉。【神風】」
風になり躱す。
壁に地面塊が壁に当たり、壁を貫通していく。
「ま、まじっすか」
ヒョンの事から階段までの道が開けた。やったぜ!
すぐさま階段に向かって、階段に着いたら降りる。
階段が暗くなるが、暗視があるので問題はない。
しかし、なんで暗くなったんだろうか?
階段の上を見ると、1つ目が俺を見ていた。
血走っていて、目は黒と丸い赤い目だ。
足が震えてくる。
虫との恐怖とは違う、本当の恐怖だ。
虫は苦手からの恐怖だが、こいつからは怯えによる恐怖だ。
あいつは、あいつは本当に魔物だったのか?あいつは本当にトラップだったのか?
てか、5層なのにフロアボスがいなかったな。
そこに疑問を思いながらも、暗くなっている階段を進む。
後からの、殺意の視線を感じながら。早く次の階層に着いてくれ。
「もしかして、あいつがフロアボス?いやいや無い無い。倒せないフロアボスってなんだよ。それとも、あれ程厳しいトラップがフロアボスの変わりなのだろうか」
あ、光が付いた。
暗かった階段がとても明るくなるのを感じる。
そして、俺の前には、俺とそっくりの影が階段に出来ていた。
◇◇◇◇
「魔物が多いよ〜。辛いよ〜」
「楓、泣き言言ってないで、もっと爆破しないと」
「だって、倒しても倒しても奥の道から魔物が来るんだよ。辛いよ」
「はは、まあ、頑張れ」
「んな、他人事のように。まあ、私が集団相手には適任だろうけどさ。あ、レベル上がった」
「良かったね!」
「それは、嬉しいけど。私ってレベル上がっても、恩恵ってSPだけだしな。しかも、アイテムボックスにつぎ込むだけだし」
「いやいや、いずれ重要になるよ」
「まあね、でもね。MPだけは本当に意味ないと思うんだよ。それでもMPが上がり安いんだけどね」
「いずれ使うようになるよ。多分、きっと」
「だんだん不安にならないでよ!」




