A級ダンジョンー⑥
ファイヤーワームが火の玉を口から吐き出す。
半径1メールのでかさの火の玉。
ワームはミミズに似ているが、ミミズでは無いので何とか戦える。
時には口から食べようと、時には火の玉を、使って攻撃してくる。
口から食べようと、突進してくるタイミングで横にズレ、前に進む。
すれ違いざまにラプラスの刀でファイヤーワームを斬る。
そのまま身体を捻り、回転させ、ウリエルの刀で斬る。
そんな攻防を繰り返しているが、ファイヤーワームは再生能力があるらしく、すぐに傷が修復される。
かなりの速度で、俺が与える傷も浅いので決め手に欠ける。
「地中に潜るのか⋯⋯」
ファイヤーワームは地面に潜った。
サンドワームかよ!
冷静に辺りを把握するために、目を閉じて神経を研ぎ澄ます。
地中の音を確認⋯⋯出来ない。
辺りの気配を探る⋯⋯なんの気配もしない。
なんで?
それよりもかなりやばい事に気づいた。
「未来視」
未来を見て、分かった。
横に跳躍して、俺の足元から出てきたファイヤーワームの口を躱す。
未来を見て、5秒後にファイヤーワームが俺の足元から出てくる事が分かったのだ。
ファイヤーワームが飛び出た衝撃で、少し上昇する俺。
落下中にファイヤーワームにラプラスとウリエルの二刀流の連撃を入れる。
「よっし!」
深く斬ることに成功した。
ファイヤーワームは地中に潜る。
しかし、先程と違い、今度は感情が剥き出しになり、居場所が分かる。
怒りと屈辱を味わった感情が地面の奥へ深く進んでいく。
さらに、ファイヤーワームが地面に潜って出来た穴は火によって埋められている。
【神風】で入ったら効果時間が切れ、俺自身が燃えるだろう。
ファイヤーワームがかなり深く潜ったところで、冷静になったのか感情のオーラーが感じなくなった。
先程の深い傷も既に再生されている可能性が高い。
いや、完全に再生されるだろう。
俺は地中に潜れない、地の利を活かした戦い方をファイヤーワームはしているのだ。
脳みそが無い見た目なのに、知性がかなりあるようだな。
未来視を使っても、10秒以上以降の出来事は分からない。
そんな空振りで貴重なMPを消費したいとは思わない。
かと言って、天井に逃げて、ファイヤーワームが俺が逃げたと思って襲って来なくなっては、意味が無い。
俺に逃げる選択肢は相手が虫の時だけだ。
それ以外で逃げるつもりも、戦闘放棄もするつもりもない。
ウリエルの一部を細い紐にし、自分の腕に絡みつけ、刀のウリエルを地面に突き刺す。
後は待機だ。
先程の出てくる前に少し、地面に亀裂が入る事が分かっている。
亀裂が見えた瞬間にスキルを放つ。
逃げれないような大ダメージ、倒せれば尚良しだ。
地面に亀裂が入る。
「範囲殲滅」
白色のドームが辺りを埋めつく。
地面がえぐれ、ファイヤーワームが姿を表す。
ラプラスを天井に刺して、自分の腕に巻き付けているので落ちる心配はない。
さらに、範囲殲滅で徐々に削られていく地面に潜ろうとするが、範囲殲滅の方が早く地面を掘る。
ファイヤーワームは潜るために1度迂回しないといけない。それがタイムロスとなるのだ。
それに、範囲殲滅の光に触れた箇所が焼けるように削れていて、範囲殲滅の光にも警戒しているようだ。
それで、地中潜るのがさらに遅くなる。
範囲殲滅が収まると、ラプラスを俺が天井に行くような形で収縮する。
天井に足を着け、ラプラスとウリエルの刀の二刀流を腕をクロスさせて、構える。
範囲殲滅で体がかなり削り取られたファイヤーワームに向かって、天井を蹴る。
落下と蹴りの勢いで加速していく。
刀の射程範囲に入ると同時に、腕をクロス状態から斬る。
ファイヤーワームにエックス型の刀傷ができる。
「ぐぎゃぁああああ」
絶叫。
ファイヤーワームの絶叫が響き渡る。
それでもファイヤーワームは生きている。
湯気を立てながら自己再生に精を出すファイヤーワームに向かって、地をける。
地面はクレーターになっており、ファイヤーワームの血がそこらじゅうにある。
ファイヤーワームが火の玉を吐き出すが、全て躱す。
14発の火の玉を全て躱す。
ファイヤーワームに肉薄すると高速の連撃を繰り出す。
ファイヤーワームが地面に突っ伏す。
しかし、機転はほんの小さな事で変わるのだ。
ファイヤーワームにトドメをさすタイミングでミミズが現れたのだ。
その瞬間、俺は足が固まり、ファイヤーワームは喜びの感情を表した。
「ぐがあああああ」
「なっ!」
ファイヤーワームが火事場の馬鹿力の如く、最後の全力で直進し、先程姿を表したミミズを食べた。
むしゃむしゃ、ゴックン
咀嚼音の後に、何かを飲み込む音が鳴り響く。
ファイヤーワームはミミズを食ったのだ。
なんの、躊躇いもなく。ただ、嬉しさの感情と歓喜の雄叫びをしたのみだった。
ファイヤーワームの体が発光し始め、その姿を変えていく。
大きく大きく肉体が大きくなっていく。
それは、もはやファイヤーワームで無い、何かだった。
「な、なんだよ。それ」
鬼王は言った。
魔物が魔物を殺すのは自信が強くなるためだと。
他者の魔力を食らう事によって強くなるのだと。
魔物を倒して食べる知性がファイヤーワームには存在したのか。
さらに、鬼王の部下は元々がゴブリンだという。
ゴブリンからオーガに進化する事が有りだと言うなら、これも進化なのだろうか。
魔物を食らって、自分の力に変えていく。
ただ、通りすがっただけのミミズによって、ファイヤーワームは進化を果たしたのだ。
あの感情はきっと、あれを食べれば自分は進化出来るという確信からなのだろう。
どうして進化出来ると分かったのかは分からない。
今はこの現状をどうするかを考えるのが先だ。
「いくぞ!」
◇◇◇◇
「確か今は14層だよね」
「ん、その筈。白銀の剣にいた頃よりも圧倒的に攻略ペースが早い」
「そうなの?」
「そうなの。やはり一気に休む事が出来たのが大きい。交代制だと、全員休むまで時間が掛かるし、見張りの人は神経を研ぎ澄まさないといけないから、疲れが取りにくいし」
「そう言うものなんだ」
「そう。まだ2日も経っていないのにここまで来たのはすごい。平均A級ダンジョンの階層では、もうすぐボスだね」
「そうだね!今から気合いが入るよ」
「そうだね。楓、全力を尽くそう」
「あったりまえよ」
かなり進行ペースが遅い気がします。申し訳ありません




