絶望の始まりー後編
神風琉と呼ぶことに決めました。
キメラが此方に向かって馬の足を走らせる。
速い、ギリギリ反応できるかどうかの境目ぐらいのスピードでキメラが迫って来るのだ。
だけど少し違和感を感じて仕方がない。
キメラは自分自身の能力にまだ慣れてないのでは無いのか?
そう思っても仕方ないだろう。
走るスピードと攻撃スピードが全く重なってないのだ。
それを裏付けることをキメラが俺に向けて喋る。
「後、2分で俺様は俺様の力を物にできる。2分で俺様を倒せるかな?無理だろうけどな」
2分か、無理だな。
2分後
「ぎゃあはぁぁぁぁはぁぁあああああ」
叫びと共にキメラの体が少し小さくなる。
多分、能力が体に適合されたのだろう。
それに合わせるように剣までも刀身が短くなっている。
「これで貴様も終わりだ」
「俺も70%で戦ってやるよ」
「なに?!今まで本気ではないと?」
「まあな」
そもそも俺は100%なんて出せないのだ。
70%は脳のリミッターを一時的に解除して思考能力を上げるものだ。
ただ、1時間しか使うことができない。
もしも1時間以上使ったら脳がはち切れて俺は死ぬ。
100%で使ったら数秒程度で脳がはち切れるどころか爆散するだろう。
それでも今はこれでいい。
キメラが此方に向かって襲いかかって来るが、普通に見える。
思考能力が上がったことにより、俺自身の反応速度やらなんやらが上がっている。
キメラの右剣が迫って来るが受け流す。
ミシミシ
受け流した余波だけで激しい痛みが来るのが分かった。
受け流すのは危険だ。
なるべく回避に専念しよう。
スキル専用流派を使うか。
「神風琉。【炎風雷鳴剣】」
MPを10消費してスキルを発動させる。
刀に風と炎が混ざったものがまとわりつく。
風の流れや炎の熱さは感じることのない刀が完成される。
体充に電気が流れるような感覚に襲われて、自分の素早さが上がったことを実感する。
駆ける。
キメラがギリギリで反応して左剣を俺に向けて振り下ろす。
地面に向けて炎風刀を振りかざす。
炎風の閃光が地面に当たり、弾ける。
その風の威力を利用して上に上がって回避していく。
刀の閃光をキメラに向かって何発か放つ。
キメラが右腕でガードするが少しだけささやかな火傷を追っていた。
炎風雷鳴剣はMP消費が少ない分、発動時間が1分とかなり短い。
それでも中距離と近距離の威力が上がるのでコスパはいい。
もしも相手がキメラではなければかなりの大ダメージを与えてたかもしれない。
キメラが迫ってくる。
高速の斬撃をギリギリで全て躱す。
ギリギリで躱すのは無駄な動きをしないためだ。
無駄な動きをして脳に余計な負担は掛けたくないのだ。
時たまに右腕の火傷に向かって刀で斬りつける。
あまりダメージがあるようには見えないが塵も積もれば山となる、だ。
高速✕高攻撃力が相手なら俺は高速✕低攻撃力だな。
それでも今の俺は圧倒的とまではいかずともキメラより機動力は高い。
さらに、二足歩行の方が小回りもできるので回避はかなり余裕がある。
それでも1時間が経ったらこの70%を解除しないといけないのでまた、俺の方が不利な状況になるのだ。
かなり右腕の傷口が大きくなってきたキメラ。
そろそろ頃合だろう。
キメラからかなりの距離をとる。
「・・・・・・」
油断なく構えるキメラ。
体制を低くして、足に力を掛ける。
地面を蹴り、キメラに接敵する。
「神風琉。神速疾風剣」
全力の直線スピードの威力を載せた刀による斬撃を斬り口の大きい右腕に入れる。
ベシャ
中に舞うキメラの右腕と長剣。
これが俺の求めていたチャンスだ。
「ーーーッ!」
2段ジャンプを駆使して後ろに後退する。
キメラの左剣が空気を斬り裂く。
辺りに凄まじい衝撃と嵐が舞う。
「貴様はこれを最初から狙っていたな」
「バレていたか」
「あえて言おう。俺様はせこいなんて思っていないからな。弱き者は知恵を使わないといけない。だから俺様は正面から叩き潰す。覚悟しろ」
それは俺が弱き者と認定され、キメラは自分のことを強き者と言っているようだった。
俺は、俺には負けると言う選択肢なんて鼻から存在しない。
キメラが器用に自分の右腕と手に握られていた剣を後ろに飛ばす。
後、50分。
「はぁ、はぁはァ」
10分駆動させるだけでこの疲れようだ。
「神風琉。【神風】」
スキル神風。
単純な加速スキルだが、これはMP20消費して5秒風になれると言う代物だ。
一瞬で消える俺。狼狽するキメラ。
そして、俺は、キメラの長剣を拾い刀を捨てた。
キメラ俺の気配を感知したのか後ろをーー正確には俺にーー振り向く。
「いつの間に!」
魔物の魔石は人間で言う心臓部分にある。
ひたすら斬り込む。それだけだ。
「行くぞキメラ!これが俺の、最速斬撃だ」
「グァァァァァァ」
キメラが剣を高々に上げて振り下ろす。
衝撃が襲うがそんなのは関係ない。気にしている余裕もない。
「神風琉。【神風雷鳴剣】」
最速最大の俺の攻撃スキル。
MP100消費して放つ大技。
最速の攻撃速度を誇り、攻撃する度にスピードが上昇してそれと同時に攻撃力も上昇していく。
奥義とも言っていいいレベルのぶっ壊れスキルだ。
だが、俺が思うよりもキメラは冷静であり、賢かった。
キメラと俺の剣がぶつかり合う。
轟音、辺りを揺らす地震とも言える衝撃波が辺りを埋め尽くす。
衝撃波で軽々と吹き飛ばされ壁にぶつかる。
「がっはぁ」
口から血が出るほどには凄みのある衝撃波だったのだ。
キメラと俺の剣がぶつかり合い共に砕けていた。
目には目を歯には歯を、同じ武器同士なら共に砕かれると。
かなり攻撃力が上がった状態の俺の剣と同等の攻撃力か。
神風雷鳴剣は上昇限界がないのだ。
振れば振るほど速くなり威力が高くなる。
今、いるのは魔石が剥き出しになったキメラと結構限界に近い俺。
共に次の一撃で勝負が決まる。
右手に練れるだけ練って、気を溜めていく。
右手が熱い、それでも溜める。
俺の思いを、熱い、俺の覚悟を、熱い、全身全霊を掛けて、あつい、キメラに向かい打つ。
85%まで脳を解放させる。2分しか持たないが今はそれでいいのだ。
地面を蹴る。
キメラも俺を向かい打つ。
「はああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ」
「グァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアア」
いい、戦いだったよキメラ。
「見事だ。人間の男よ」
「さようならだ。キメラ」
俺の右手はキメラの魔石を貫いていた。
そう、勝ったのは俺だ。
最大まで上げた思考速度でギリギリ躱すことの出来たキメラの全身全霊のパンチ。
「敬意を払って最高の送り物を送ろうではないか」
キメラが消滅する。
《一定の経験値に達しました。Lvが42にあがりました》
後には宝箱が残る。
意識が朦朧としているが、体に鞭をうち宝箱を開ける。
そこには水晶玉があった。
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倍加の水晶
アーティファクトにのみ適応される。
アーティファクト取得時に個数が2個になる。
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ここは迷宮崩壊で今はS級だ。
ここで使う価値はあるだろう。
それだけではない。
あの札も使うとしよう。
アーティファクトに行き、札を貼り付け水晶玉を・・・・・・水晶玉どう使うの?
仕方ない。
そのまま取得する。
《アイテムの使用を確認しました。貴方に贈呈される秘宝が2個になります》
《このダンジョンの秘宝が崩壊寸前であることを確認。限界値を上げることが不可能。代用として新たな秘宝に取り替えます》
《同等の秘宝を2個貴方に贈呈します》
よく分からんことを言ってきた。
つまり、迷宮崩壊で限界値を無理矢理上げたキメラのせいでアーティファクトがボロボロで限界値を上げれなかった。
なので限界値が同等のアーティファクトに交換したと。
さらに取得時に倍加の水晶が発動したと言うことか。
今は何故かまだうにょうにょしていた。
意識がやばいので腕輪だったら運び易くていいな。
そんなことを思っていたらアーティファクトの光が収まり、俺の両腕には腕輪が嵌められていた。
確認は帰ってからでいいか。
魔法陣に乗り、地上へ帰還する。
外に出ると周りが騒がしかった。
「翔君!」
半泣きの楓が寄って来て、抱きつかれた。
楓の温もりを感じながら俺は意識を手放した。
このあとの面倒事を考えずに、今は幸せな眠りに着くのだった。
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