F級ダンジョンー⑨
奴と目が合う。
右の短剣を相手の目に目掛けて突き刺す。
刺さり、人狼が後ろに後退して刺された右目を手でおさえながら此方を見てくる。
その目は恐怖や怯えなどは全くなく、むしろ好奇心や喜びの色が伺えた。
奇妙な奴だ。こんな状況でも奴はこの戦闘をきっと楽しんでいるのだろう。
此方は全く持って楽しくはない。
死ぬか死なない、というギリギリの境目にいるのだから。
グツグツ、、、ぐちゃぐちゃ
なにかが煮えたぎるような音を鳴らし、ぐちゃぐちゃと肉を再生しているような音が聞こえる。
見なくても分かるが違う可能性があるからきちんと見ることにした。
人狼が手で抑えている右目が指と指の隙間から見えている部分がどんどん再生しているのだ。
その再生力は凄まじく3秒足らずで完全なる再生を果たしたのだ。
人狼の右の手には右目をおさえていた時に付いたであろう血がべっとり、と付いていた。
人狼がその血をペロリ、と舐める。
そして天井を見てなにかを考えるような感じで黄昏ていた。
何を思っているのか、何がしたいのか、何を考えているのかは俺には分からない。
人狼が此方を真剣な眼差しを向けてくる。
先程の好奇心や喜びではなく、何かを品定めしているようなそんな目をしていた。
だが、一切の油断はない、それは先程からずっと同じだ。
人狼が地を蹴る、そして此方に向かってくる。
同時に俺も地を蹴り、人狼に向けて走る。
「グァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
「はぁああああああああああああああああああああああああああああ」
互いの叫びとともに剣と拳がぶつかり合う。
圧倒的に相手の方が実力が上だった。
そんなのは分かりきっている。
左の短剣で腕を斬る、だが人狼も分かっていたのか左腕でガードする。
「ーーッ!」
後ろに飛ばされた。
そこまでの勢いはなかったが、地面に着地した時に少し体が揺れた。
その隙はこの戦闘において何よりも致命的な瞬間だった。
人狼がその隙をついて、一気に近づいて拳を俺の体に向けて振る。
正に正拳突き。威力は鉄を易々と砕くだろう。
「おおおおおおおおりゃあああああああ」
短剣を後方に投げて空いた手で相手の腕の上の部分を使い逆さ立ちのような格好で回避する。
相手の腕を利用した回避行動。
デメリットが大きい躱し方だ。
体はがら空きになるし武器も捨ててしまっている。
人狼の左拳が迫ってくる。
腕を曲げ力を込めて跳躍する。二段ジャンプを使い天井に避難。
人狼が気玉を使ってこっちに向けて投げるが、溜めている隙に短剣を拾いあげる。
人狼の気玉が不発に終わる。
その事に驚愕などの感情は一切見えなかった。
ただ「あたりまえ」だとでも言いたげな目で此方を見てくる。
真っ直ぐと、一切のブレもなく、見てくる。
目を潰された事は少し驚いたが我の腕を使って我の攻撃を避けたのにはかなり驚いた。
天井に逃げたから気玉を放ったが、予想どうり躱された。
そうでなくては困る。それだと我の魂を与えるに満たない。
魂を預ける者にこの程度で負けては困るというものだ。
きっと奴の所に居れば色々と学べるハズだ。
あの戦闘センス、すぐに完璧な行動に移せるその応用力はとても参考になる。
きっと奴の元に居れば我はさらなる強さを手に入れられる。
そう確信できる。
だが、だからと言って手加減はしない。
そもそも我に負けたらそれまでの相手だったことになる。
それなら我の魂を与える訳にはいかない。
魂を預けるか預けないを決めるのは此方側にあるのだから。
時間が経つに釣れて→時間が経つにつれて 色々な情報が頭の中に過ってくる。
どんどん強くなるのを感じる。
情報が入るに釣れ→入るにつれ 我の体も変化してきている。
さあ、奴はどこまでやれるか、楽しみで仕方ない。
わざと負けるつもりは毛頭無い。
全力でやる。
ここまでやるのかあいつは、こんなにも粘るのか。
頭上からの回し蹴りが迫る、横に回避。
すぐに拳が飛んでくる。先程と同じように躱す。
勿論短剣は持ったままだけどね。
なぜだろうか。奴は時間が経つにつれて弱くなるどころか強くなっている気がする。
多分事実だろうな、解析で肉体が徐々に最適化になっている。
クッソ、どうすればいいんだよ本当に。
皮膚が薄い部分を斬り裂いても再生されたし、目を潰しても少し長くなった程度で再生されてしまう。
まじでどうすればいいんだよ。
考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ。
「そういえば魔力が多い奴には魔石があるんだよな。ボスは基本魔石があるが落とすかはランダム。いや、そんなのは今は重要じゃない。魔石がある奴は魔石が壊されたら消滅するはずだ。つまり魔石さえ見つければあとはそこを狙うだけ」
小声で独り言を呟く。そしてそれを実行に移す覚悟を決める。
解析をフル活用してひたすら探す。
拳を足を気玉を躱して、時たま短剣で斬り裂く。
そして······························あった。
奴の心臓部分、そこに魔力が集中している。つまりは魔力の塊、魔石があるのだ。
「これでトドメだ。【確殺の一閃】」
神速の走りと共に心臓ーー魔石ーー目掛けて短剣を突き刺す。
刺さりはしたが、まだ浅い。
「はああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ」
人狼が頭上で手を組、振り下ろそうとするが、遅い。
それよりも速く俺の短剣が魔石を貫いた。
消滅する人狼。なぜだか分からないがその顔は笑っていた。
「見事だ」
そんな言葉が聞こえた。魔物は喋らない、きっと気のせいだろう。
《一定の経験値に達しました。Lvが28に上がりました》
《受診しました。個体:人狼から筒井 翔に魂が譲渡されました》
《初めての魂譲渡を確認しました。スキル【魂管理書】が与えられます》
なにそれ?
魂?人狼?魂管理書?後で確認しようかな。
まずは宝箱の中身だ。
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臭い遮断のネックレス E級
耐久値10/10
スキル
臭い遮断
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臭い遮断
自身の臭いが無くなる。
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臭覚が優れている奴には有効かもな。
さて次はアーティファクトだ。
白く輝いており、完全なる球体だ。
手に持つと眩しくひかり形が変わっていく。
札みたいなものになった。
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万能突破 C級 (アーティファクト:道具型)
所有者 筒井 翔
限界値150/150
アクティブスキル
限界突破
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限界突破
対象にはると効果を発揮する。
限界値を上げてくれる。
4つランクを上げる。
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俺以外にこれ使うやついるのかな。
いずれアーティファクトに使ってみたいな。
随分長引きましたね。




