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奏目線──白虎戦①

 奏は東京タワーに向かって全力で走っていた。

 MPを無駄に消費しないためにだ。

 東京に産まれてからずっと住んでいた奏に取っては東京は空間を展開しなくても完全に把握出来ていると言っていい。

 だからこそ、この攻撃を防ぐ事が出来たのだ。


「グッ、誰!」

『貴様の相手を任された。我は神速の虎、『白虎』だ』

「白虎?」


 奏前に現れたらのは自分の髪の色にとても似ている白銀の毛皮を纏っている虎だった。

 しかし、その大きさは自分よりも2倍程の大きさで、2重ダンジョンで見たグリフォンよりも魔力の圧を感じる事からこの虎はS級クラスの敵だと認識する。


「あなたはあの東京タワーの上にいた魔王の手下?」

『いかにも、我は心から魔王様に忠誠を誓っている者だ』

「そう、なら、貴方をここで殺す」


 奏の目には光がなく、ただ、目の前の、自分の親友を操っている可能性がある敵の手下だから、自分の敵だから、『殺す』それだけの感情しか出して居ない目だった。

 しかし、殺すだけの感情だが、一切の殺意がないのであった。

 これは奏が独自に取得した感情を表に出さない方法を取っているのだ。

 殺気は相手に自分の居場所をさらけ出す事になるから空間転移が意味をなさない可能性があるのだ。

 しかし、殺すとゆう感情だけはセーブできていなかった。


『殺そうとする相手に殺気を飛ばさないとは、やるな』

「行く!」


 奏はアイテムボックスから自分と同じ白銀の剣を取り出し、横薙ぎに斬る。

 白眼の剣筋が残る速度で振られた剣を易々と躱し、背後に周り爪で斬り刻もうとする白虎の攻撃を空間転移で躱す。

 空間転移は『空間エリア』を展開していない状況だと視界の範囲でしか使えないが、特訓と努力の成果で『東京』なら空間転移で視界外でも転移可能なのだ。

 かと言って、すぐに東京タワーに行けると言ったらそうでも無い。

 MPが足りないからだ。

 距離が伸びる程消費MPも増えるので東京タワーまで直行で転移は出来ないのだ。

 白虎は白銀の光の筋と自分の残像が残る速度で奏に近づき、爪による引っ掻き、牙による噛み砕き、神速のスピードでの突進、魔法による風の爪、氷のブレス、を使って攻撃するが、奏はその全てを防ぎ、躱し、弾く。

 奏は既に1年の冒険者歴を持っており、ベテランのプロなのだ。

 しかし、白虎のスピードは奏と同じ冒険者歴の人でも防ぐ事は愚か、躱す事など不可能なのだ。

 奏は白虎の動く時に生じる空間の歪みから起動、行動を予測し対応しているのだ。

 空間魔法を使う奏は微かな空間の歪みにも敏感になっており、さらにここは東京なのでさらに敏感なのだ。


『やるな。我の攻撃を全て去なすとは、しかし、もう終わりだ』

「なぜ」


 白虎は上を向き、合わせて警戒を向けながらも上を向く奏。


「なっ!」

『あ奴らは我と同格だ』


 奏は白虎の相手でもかなり必死だったのに、同格の魔物が2体もいたのだ。

 少しばかりの絶望をしたが、気合いを入れ直す。


「まだ、分からない!」

『無駄だ』


 白虎の攻撃を躱したところに、蛇が伸びてきて噛み付こうとするが、空間転移が躱し、飛んできた羽を剣で弾く。


空間転移魔法テレポートで逃げる事は可能だ。しかし、そこそこの距離を転移しないといけないし、そうなると陣を形成するのに2秒掛かる。その間、無防備。白虎相手にそれは、辛い)


 奏の思考速度は翔には及ばないがかなり早い。


玄武ゲンブよちゃんと当てよ』

『はん!朱雀スザクは弾かれているだろうが』


 ビルの上には巨大亀にまとわりつく蛇も居る魔物に、空を飛ぶ怪鳥が居た。


「まだ」


 まだ、終わってない。

 白虎に向かって地を蹴るが、それよりも速く白虎が奏の後ろに周り氷のブレスを放つ。


「空間切断」


 躱せないと判断し、空間を斬る事で生じる空間の裂け目で氷のブレスを防ぎ、玄武から放たれる炎のブレスを跳躍して躱して朱雀の赤い羽が20同時に来たので空間転移で朱雀の後ろまて転移して躱す。


「空間切断」


 空間切断で朱雀の右羽の付け根を斬るが、朱雀全体が羽となって散らばる。

 それだけではなく、その羽が全て奏に向かって飛んでくる。


「空間圧縮」


 圧縮した空間で羽をガードする。

 そのままビルに降り立つ。


『ほう、我の残像からの反撃を防ぐか』

「チッ」


 朱雀は既に奏の後ろ上におり、しかも玄武の隣のビルに降りてしまった。

 それだけではなく、ビルの上と狭い空間であの破壊力のブラスではビルは破壊され、奏ごと落ちるとわかっている。

 奏は空間転移で逃げれるが、瓦礫が地面に落ちると地面が不安定になり戦い難くなるのだ。

 しかも、それだけでは終わらなかった。


『全く、上に行くかね』

「──ッ!」


 バッと振り向くと後ろには既に登り切って居た白虎の姿が見えた。

 空には朱雀が、目の前には白虎が、隣のビルには玄武が、絶対絶命だった。

 しかも、今乗っているビルは320メートルはあるビルだ。

 地上まで転移するとそこそこのMPを持っていかれる。

 まだまだ余裕はあるが、節約出来るところは節約していきたい。


『手加減なんてしていると死ぬぞ。少女よ』


 白虎が今まで見た事のないような速度で奏に肉薄し、爪を振り下ろす。

 奏はバックステップでギリギリ躱すが、ふくろはぎに少し爪の攻撃が当たった。

 三本の血の線から血が垂れるが、あくまでかすり傷なので放置する。

 さっきの白虎の速度は空間は揺らぐが目視で見ていた白虎の姿は少し揺れた程度だった。

 白銀の動いた時に出来る線も、残像も、何もない状態で目の前に現れた白虎に奏は驚く。


「今のは、⋯⋯武術」

『正解だ。今のは我の能力でも魔法でもない。相手の無意識に入り込む動きをきちんとしただけだ』


 つまりはその呼吸も、動きもマスターしているとゆうことだ。

 奏が空間の微かな歪みに気が付いてなかったら奏は負けていただろう。

 奏以外だと何が起きたか分からない状態で終わるだろう。


「まだ、負けない。楓を助けるまでは、終わる訳には行かない」

『この状況で1人のたった、1人のちっぽけな力で何が出来る?』

『そうだよ白虎の言う通りやん』

『玄武の喋り方って高いので喋るな』

『朱雀酷!』


 和む会話の中で奏はどうやったら勝てる?どうやったら良い?っと考えていた。

 そして、その中に小さく、しかし確かに響く、『最強老夫婦』の2人の声が。


「まさか孫の様子を見る為に都会に来たらまさかこんな事になっておるとは」

「あの三体はさっきの有象無象とは違いますね」

「なら、儂はあの亀?蛇?を」

「なら私は鳥を」


 奏に取って、最高の最強の手助けが現れた。

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