あの曲もこの曲も聴けない! サブスク未解禁なアーティストさん達
冬の足音がビシバシ感じられる今日この頃、2020年もいよいよ大詰めに向かい始めた。
ところで、今年に入ってからは、かのコロナによって世の中が自粛自粛の大騒ぎで(密になるから騒ぐなよな)、自宅にいる時間が長かった、なんて人も多かったのではないだろうか。
そうして家にいるうちにお世話になった物といえば、人によって様々な答えはあるだろうが、やはり音楽のサブスクリプションサービスもその一角を担う物であろう。そうであってくれ。じゃないとこの話始まらないから。
実際、定額払えば聴き放題なサブスクというサービスはかつての僕らから見たらこの上ないほどに魅力的なサービスだろう。今時CDなんてこの不景気では高過ぎて買ってられないし、かといって配信も容量がかさむしといったムードの中颯爽と登場してきて、そりゃ飛び込む他の選択肢はありますまい、といった具合に世間の潜在需要と合致し、今ではYouTubeに続く音楽の最先端を牽引するメディアへと成長したわけだ。何人も一度サブスクの魅力に気づいてしまえばもう離れることはできない。
だがその流れに未だ逆らい続けているアーティストも決して少なくはない。サブスクに関して反対声明をハッキリと挙げているアーティストこそ実は少ないものの、おそらくサブスクには反対なんだな〜、というアーティストもまだまだ現役で活躍しているのだ。
ではここにその一例を示そうと思う。
こういう時真っ先に槍玉にあげられる存在がジャニーズだ。
元々ジャニーズは30年以上前から時代の波に乗り遅れる傾向があり、90年代のCDバブルの時でも周りが「どんなときも。」や「君がいるだけで」などの新鮮な音楽に沸く中、ひとり80年代のノリを引き継いだ音楽を用意して当時駆け出しだったSMAPやTOKIOを不遇の時代に追い込んだり、インターネットに自社所属のアイドルの顔出しを禁止する意味不明な暴挙に出たり、何かと新しいものには頑固というか、扱い方を理解していない節が垣間見えることが多かった。
サブスクに関してもジャニーズは完全に唯我独尊で去年ようやく嵐のみが解禁に踏み切ったものの、それ以外はサブスクはおろか配信にすら出していない。(というふうに書いた一年後、一応他にも堂本光一・堂本剛のソロ作品などが解禁されたもののSixTONESやSnow Menのような新顔だったり主要なヒット曲はまだ未解禁。ていうかどうせソロ作品を解禁するんだったら一緒にKinKi Kidsも配信してほしかった…)
確かにジャニーズの音楽性を問われれば、どうしてもあくどい複数商法がチラつくので正直保守的な方向へ走っているイメージが固定されてしまうのだが、なんだかんだで「ジャニーズがサブスク解禁」という文面は物凄いパワーワードだと思うし、良くも悪くも話題にはなるし、ジャニーズが好きな人はサブスク解禁があろうとどうせCDを買うんだから儲けがなくなるわけではないだろうし、別に悪いことではないと思うんだけどなぁ…って感じである。
それに僕だってサブスクで聴きたいジャニーズの曲がないわけではない。光GENJIの「パラダイス銀河」みたいなジャニーズが時代に取り残されていなかった頃の曲には興味があるし、SMAPなんかはテレビで耳にする機会が多かったのでサブスク解禁の末には是非とも聴いてみたい。
また、往年のベテランミュージシャンがサブスク解禁に踏み切らないなんてこともザラにある。その一例が山下達郎だ。
一応、妻の竹内まりやは解禁に踏み切ってはいるが、それでも限られた期間のアルバム数枚とベストアルバム1枚の解禁にとどまっている。
で、当の山下達郎は、サブスクはおろか配信にも微妙に消極的で、「RIDE ON TIME」「クリスマス・イヴ」「SPARKLE」などの数々の名曲をサブスクで聴くことはできないし、配信でも「クリスマス・イヴ」以外の昔の曲はほとんど聴けない。
まず本人が音響に対して職人レベルのこだわりを見せていることや、何かと世間の流れとは馬が合わないような言動を見せているところからも、サブスクに本腰を入れるのは不本意なのかと思いきや、サブスクリプションサービスは利用しているか?との質問に、「もちろん、使っていますよ」と笑顔で答えたほか、竹内まりやのアルバムがサブスク解禁されたのに際してAppleのデジタルマスタリングについて言及したり、サブスクに全く興味がないわけではない様子ではある。このままサブスク解禁まで突っ走ってくれれば嬉しいのだが、果たしてこの先どう転がるか。
(…と書いて2年が経った2022年、新作「SOFTLY」のインタビューにて「サブスクはおそらく死ぬまで解禁しない」とキッパリ明言してしまった。解禁への暗雲が立ち込めるとかそういうレベルでなく一気に可能性が閉ざされた形になったけど、「おそらく」という言葉の含みを信じて解禁を待ち続けるほかなさそうだ。)
それと、事務所ぐるみでサブスクに出していないなんてパターンもある。例えばビーイングなんかがその一例である。
一応最近になってSARD UNDERGROUNDやDAIGOなどの比較的最近の所属アーティストを解禁し始めたり、唐突にB'zやらZARDやら大黒摩季やらの作品全般やTUBEのベスト盤だけを謎に解禁したり、ちょくちょく動き始めてはいるのでジャニーズ並みとは言わないが、やはりサブスクにかける熱量は小さい。一説によると、事務所のトップの頭が古いからサブスク解禁には消極的、なんて噂も立っているそうだ。
だが、サブスクに対する潜在需要はジャニーズ以上であろうと僕はみている。近年の復活で話題を呼び、「時の扉」「世界が終るまでは...」などの代表曲にも恵まれているWANDS(第4期・第5期は解禁済)や、「突然」をはじめとする現代に通じる普遍的なヒット曲を持つFIELD OF VIEWといった数々のアーティストたちはこぞってみんなサブスク未解禁なのだ。これぞ、サブスクに向かってそびえ立つ、ジャニーズに次ぐ大きな山と言って差し支えないと言えよう。
事務所が古いとか何だか知らないが、僕は今も彼らのサブスク解禁を待っている。
他にも事務所ぐるみで出していないパターンがある。モーニング娘。やその他矢継ぎ早に登場するアイドルグループでお馴染みの、ハロプロだ。
サブスクに出していてもアイドル系は特典があるからCDは変わらず売れるというのはライバルの48・46系グループを見ていればわかるはずなのに、こちらも未だにサブスク未解禁。
曲を作っているつんく♂が拒否しているのか、と思っていたら存外そうでもないらしく、事務所側に大して旨味がないというのが原因ではないか、と囁かれているという(実際、つんく♂が所属していたバンド、シャ乱Qはサブスク解禁済み)。
あくまで噂なので真偽は不明だが、だとしたらあまりにも残念というか、打算的というか。
それと、あまりにもマイナーすぎて解禁に踏み切らない、というか忘れ去られているんじゃなかろうか、というアーティストもいる。
V6のカバーで有名な「WAになっておどろう」の原曲を作ったAGHARTA、「それが大事」とその他の曲の知名度だけでなく売上にさえも超弩級の差があるマジモンの一発屋・大事MANブラザーズバンド(一応「それが大事」だけは解禁しているが…)、ハモネプブームでRAG FAIRに続く人気を博し、「この木なんの木」でお馴染みの日立のCMソングの歌い手も担っているINSPi、などなど。
正直、僕だって彼らに前述のアーティストたちにならぶ興味を寄せているわけではないけど、V6がサブスク解禁に踏み切らない現状では、「WAになっておどろう」がサブスクで聴けない(一応カバーはあるものの)のはどうにもやりきれないし、INSPiも「エンターテイナー」のようなアカペラならではの持ち味を活かした曲を出しているだけに、これらの曲が埋もれてしまうのは何となく悲しい。大事MANブラザーズバンドは知らねぇ。ぶっちゃけ「それが大事」さえあればいいみたいなところあるよね。
さらに、世代が昔すぎてサブスク解禁に踏み切らないパターンもよくある。角松敏生、THE BLUE HEARTSなど、比較的古い時代のアーティストたちはやはりというべきか、あまりサブスクには積極的ではないようだ。特にTHE BLUE HEARTS、↑THE HIGH-LOWS↓、ザ・クロマニヨンズといった甲本ヒロト・真島昌利コンビ率いるバンド群はもれなくサブスク未解禁である。
別に彼らの音楽に詳しいというわけでもなければ、彼らの音楽に興味があるわけでもないが、いざこうして時代に取り残されてしまうのはなんとも寂しい。
あと、意外とアニメ・ゲーム関連の作品はサブスクに出していないことが多い。
こないだかつてそこそこの人気を得ていたアニメに関連する曲が全部解禁になったというニュースを見たのを受けてSNSで「サブスク 解禁」で検索をかけたが、ニュース記事を乗っけた投稿しか見かけられず、その解禁を喜ぶ発言は見つけられなかった。
「COOL JAPAN」の文化を牽引し、世界に広めていく最先端の文化とまで謳われた割には業界は世界に発信する上で強みになり得るサブスクには興味がないようである。それでも全く配信されてないというわけではないけど…
サブスクが日本に浸透を始めてもう3年近くになる。当初はあまり理解を示されなかった逆境を乗り越え、現在サブスクに懐疑的な(もしくは興味がない)のは、上記の方々ぐらいだ。ていうかそう考えると2016年の時点で「サブスクリプションまるで分かんねえ」とか歌って真っ先にサブスクの話題を持ち込んだ桑田佳祐は意外と先見の明を持っていたのかもしれない。そっからサブスク解禁まで3〜4年ぐらいかかったけど。
現在はかつてほどの盛り上がりは失われてしまったものの、着実に新しい音楽媒体としての立ち位置を固めつつあるサブスクリプションサービス。早いうちにこの記事が過去のものとなることを祈るばかりだ。