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学校赴任 第1章②

「その花、苦くて大量に食べるとお腹を下すけど、少量食べる分にはお腹がすっきりするんだよ。お浸しがおすすめ」

「すっきり?」

部屋へ向かう途中、庭に咲く花を指差しながら同僚が笑った。

「イノカだよ。多分君の方が詳しいと思う」

「え!」

イノカは薬の材料として使う薬草だ。それこそ腹痛の薬に使う。普段手にするのは乾燥した葉のみで、黄色い花を咲かせるなんて知らなかった。

「空くんが教えようとしていたのは薬草の使い方。深い知識。識学学校が教えるのは、この花はイノカという名前。少量なら食べれてお腹がすっきりする。そういった基本の話なんだよ」

空は呆然とした。それでは自分に教えられることなど何も無いでは無いか。

「『特別講師』には意味があるんだ。基礎を教えるだけそれこそ識学学校で講師をしている人たちで十分だ。分かるかい?」

教えるって難しいなあ。そう言う同僚は部屋に行こうか。と、歩き出した。

「私たちはそれに彩りを添える。子供達に分かる言葉でね。専門性は要らないし、基礎だけでもいけない」

「難しいです。貴方の口ぶりでは『特別講師』をして長いんですか?」

年齢の分かりにくい同僚は時々達観した物言いをする。

「長くは無い……かな。うん。数回経験はしたけどね。まあ期間が短かかったから」

「驚かれてましたね。若いと」

今回学校に赴任した『特別講師』は自分を入れて3人。

「着いたよー。入って入って。お茶淹れるね」

識学学校は基本通いが通例らしいが、簡単な宿泊施設は整っている。

今回『特別講師』として赴任した3人はいずれも部屋を貰っていた。

勧められるまま椅子に座り、渡された茶をすすった。

「『特別講師』になれる条件も、空くんは知らないよね」

「はい」

「大きく分けて2つ。まずひとつめは、ランク。もうひとつは特別枠の推薦。空くんはこっちだね。推薦枠。あっはっはっはっは」

ひとこと多いんだこの同僚は。

「もうひとつのランク。これは 殿だねえ。高位隊長職を10年以上経験者か、隊長職を未経験でも最上位ランク者なら成れる。法官か武官に多いルート」

挙げられるランクに青くなる。城でも自分などでは滅多に拝めない程の高上位者だ。

「後継の為にってことですか」

「まあそうなんだけど。滅多になる人はいないよ。大体ご意見役でもっと上位の場所へ指導へ行くしねえ」

「あ……識学学校ですもんね」

「そうそう」

自分にとっての基礎さえ教えれない程の場所だ。確かに志願する理由は考えにくい。

「推薦枠も結構ハードル高いんだよ。某ランク以上の推薦。また、某ランク推薦が5人以上。こちらはだいたい研究者に多いねえ。研究者はほら、研究に没頭しやすいので知識が偏るだろ。だからちょっと飛ばされるやつが多い。はっはっは。まあ大体教えるのに向いてないんだけどな」

「……だめじゃないですか」

「さてここで問題です! 私はどのルートでここに来たでしょうか?」

「一択じゃ無いですか。推薦枠でしょ」

隊長職経験者には見えないし。教えられた高位ランクもあり得ない。

「上司に! 行ってこいされたよ!」

推薦枠も結構高ランクだが、要は自分と同じ左遷されたんだなと納得する。識学学校を左遷先に使うな!

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