初めの村にて②
「やっと終わった」
勢いよくベッドに倒れこむ。
ギシリとあまりよろしく無い音がしたような気もしないでも無いがそれはそれ。
在庫0になる薬草の種類を見ると、本当にここの長はよく分かっていると言わざるをえない。
慣れない荷馬車の移動に加え、簡単な調合とわいえ神経を使う薬の作成まですれば後は意識を失うようにそのまま空は眠りに落ちた。
「おはようございます」
「はがっ!!」
耳元で大きな声を出されれば寝起きに変な声だって上げてしまう。
空は耳を押さえてベッドから転がり落ち、強かに腰を打った。
「耳が弱いんですね?」
「あんたのせいだろうが」
よくよく見てみれば塔の長。
泊めてもらった手前自分の主張だけを荒げるのは悪いと、声を潜めたが吐き出す様に言い放つ。
「朝餉の準備が出来ましたよ。良くお眠りでしたね。勿論昨夜は調合をお願いしたので休まれたのは遅かったとか。ご苦労様でした」
深々と礼を取る長に空は目を見開いた。
絶句したのは礼だけでは無い、長の言葉の内容にだ。
「朝餉の準備が終わった?」
神官の朝は早い。
日の出と共に起き(勿論交代制を取っている塔は多く、全員がその限りでは無いのだが)祈りと掃除、朝餉の準備がある。
確かに室内は朝日が差し込み明るかった。
大失態だ。
何も知らない世話になっている場所で朝寝坊などと。
「起きていただいていてもお手伝いはご遠慮していましたよ。気になさらないでください。それとこれを」
目の前に突き出された物を受取ると、中身は昨日作った湿布薬と手拭いだった。
「身体がバキバキでしょうが朝餉は下に降りて食べてくださいね。それと桶と水はそこに置いておきましたので身体を拭いてください」
「ありがとうございます」
言いたいことだけ言うと部屋を出て行こうとする長に慌てて空は礼を言った。
「御縁のままに」
扉が閉まると静寂が訪れる。
惚ける暇も無く、太陽は昇る。
「………さて。今日もおはようございます」
空は痛む腰を押さえ、床から立ち上がった。