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プロローグ1

 舗装されていない道をガタゴトと左右に大きく揺れながら荷馬車は進んで行く。

 こんなに揺られて進むのはいつ振りだろうかとしっかり荷台に掴まりながら(から)は遠く離れていく首都を振り返った。

 舌を噛まないように慎重に体勢を整え、ホッと息を吐き終わると決別するかのように前を向き直りぐずぐずと後ろ髪を引く意識を切り替える。

 これから向かう目的地を徒歩で向かうとなれば自分の脚だけでは七日はかかるだろう。

 そう考えれば尻の痛さはさて置き荷馬車に乗れただけでも重畳の部類なのだ。



 首都より最西端の村であるサフォ。魔の山アラクに程近い村の学校に(から)が赴任する事になったのは早い話が左遷だ。

 国は王が治める。

 王の下には神官・法官・武官・識学官・貴族が仕えている。

 (から)は王城の端ではあるが自身の住まいを貰い受ける程の、いわばエリートだった。

 それが何故左遷に繋がったかというととある貴族の反感を買ったからだ。

 正確には売ったのだがそれはさておき。

 そして神官の上位にあった自分が何故教師になったかといえば冷笑と共に送り出してくれた上司の計らいだった。

 本来なら学校で教える為にはそれなりの免許や実績が必要になる。

 移動になった学校も特に何の変哲も専門性も無い識学官庁が管轄する場所だった。

 そこを卒業し武を目指す者は武官庁が管轄する武官学校。護りを目指す者は法官庁が管轄する法官学校。文官を目指すものは識学学校と分かれていくのだ。

 もちろん各専門学校へ上れるのは秀でた一部の者だけだ。

 そこまで上れない、地位にある者達に弟子という形で従事する者達の方が圧倒的に多いのだが。

 十五歳以下の者しかいないひよっ子田舎学校に赴任する大義名分は『特別講師』だ。

 才に恵まれ教師とはまた別の角度から若い世代を育てる為の特別枠。

 王城に勤めて一年しかなかったものの余りにも早い人生の岐路。

 いつか必ず戻ってやると上司に宣言したかったが世の中そう甘くはない。

 先ずは明日からの移動方法を考える事が先決だと痛む身体を馬車に預け背伸びをした。



「もう少しで村に着きますよ旦那」

「それはありがたい、世話になったね。私に出来る事をお返しに渡したいのだが」

(もっとも今は神官の地位が怪しいんだけどね)

 神官の仕事は多様だ。

 生まれから葬式まで医術と儀式は全て神官の管轄になっている。

 各村には祈りの塔があり、村の規模にもよるが大抵神官三人以上が常駐しているのだ。

 よっぽど何もない限りは宿としても機能している。

 早く凝り固まった筋肉をほぐしてベッドに横になりたい。

 そんな事を思いながら形だけしおらしく感謝の礼をすると、荷馬車に乗せてくれた農夫は大袈裟に腕を振った。

「とんでもねえ。神官様方にはいつもお世話になってますから」

 王宮の含んだ笑顔とは違う純粋さにバツの悪さを飲み込みながら、改めて(から)は農夫に感謝の意を贈った。

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