Intro.1 暁ナユタは人でなし。
対神防衛機関リベルタ、それは神と戦うために人類が作り上げた組織。この大陸の東方面一帯の防衛をまかされており、東西南北と中央の五つの支部から成り立っている。そんなリベルタにはこのような詩があるのだ。
『中央にいれば一生安泰、
東の勇者は覚悟を示し、
西の猛者は神をも屠る。
南の狂者にゃ近づくな。
北の悪魔は人でなし。』
・・・北と南は何をしたらこんな詩に残るのだろうか。南なんて近づくなとか名指しで言われていてかわいそうにもほどがある。西と東がべた褒めされているのも本当かどうか疑わしいものだ。しかし、この詩にも正しいところはある。一つは、中央にいれば一生安泰であること、もう一つは北は人でなしの集まりだということだ。
そして、今まで巧妙に人でなしであることを隠し続けてきた俺こと暁ナユタのもとに一通の辞令が届いた。いや、届いてしまったのだ。
辞令: 暁ナユタ殿
本日をもって貴殿の西部戦線での任期を終了、
明日より北部戦線への異動を命じる。
対神防衛機関リベルタ中央本局
・・・どうやらすっかり人でなしだと認識されてしまったらしい。昨日まであいさつ程度は交わしていた西部戦線の連中も誰一人話しかけてこなくなった。こうなると分かっていたからひた隠しにしていたのに、ちょっとしたミスから完全に周りにばれてしまった。人類が一緒になって戦おうとしている時、人でなしの存在は邪魔なのだろう。生きにくい世の中である。
「北部戦線ってやっぱり寒いのかなぁ。」
誰に話しかけるでもなくつぶやいた俺こと暁ナユタはしかしポジティブな男である。明日から人でなし仲間が増えると思えば悪くない、と気持ちを切り替えて西部戦線から北部戦線へと向かう唯一の列車に乗り込むのだった。