わいや!
「いやお前なんなん?遅刻ばかりする、仕事は出来ない、昼休み会社から抜けた後帰ってこない、こんなんでよう今まで生きてこれたなぁ?辞めてしまえ!お前なんか、会社に要らんわ。ホンマ、どうしようも無い奴雇ってもうたわ。ウチも人手不足だから、書類選考もろくにせず、面接もさささってやってしまったから、まさかこんな奴が入ってくるとは思わなかったわ!」
「すんません、すんません。朝ちょっと寝坊してもうて、あ、これアカンかギリ行けるかって急いで電車乗ったら、その電車が人身事故で止まってしまいまして、、」
「言い訳は聞きとう無いねん!自分、立場分って口聞いてる?」
「すんません…」
「もうええわ。辞表書いてもらおうか。自己都合退職や!わかったな!」
「ええ…。自己都合退職だけは困りますわ。わいももう45歳、これで会社を数日で自己都合退職って、履歴書とかになんて書けばええんですか、もう正社員すら受からない年齢なんですよ…」
「やかましいわ!」
「お、お疲れさまーっす。木下さん」
「あー、田中君、まだ会社残ってたんか」
「課長めっちゃ切れてましたねー、あ、辞表書くんですか。数日間お世話なりましたー」
「ええなあ、田中君は。まだ若くて、、おっちゃん、今年で45や。しかもハゲ。この年でアパートで独身、人生積んでもうたわ…」
「そんなことないですよー、木下さん、西成のホームレスよりはマシな生活送ってると思いますよ?」
「いいや、ホームレスの方が間違いなくええ生活送ってるわ!考えてみぃ?朝から晩まで、自分より若い上司にガーガー怒鳴られ、プライドずたぼろにされ…!」
「…それで手取り18万っすからね。確かに、ホームレスの方がストレスフリーでしょうね」
「せやろ?ちなみにわい、この会社から給料もろてへんで?なんせ数日足らずで退職やからな!」
「ドンマイっす!まあ安心してくださいよ。ボクもここ2か月無給っすよ?この会社そろそろヤバいんでしょうね、今会社残ってたのも、ネットで転職のこと調べてたんですよ。さすがに家には家内と小さい子がいるんで、会社に残って探したほうが良いかなってね」
「ええなあ、君には家族がおって」
「あー別に嫌味で言ったわけでは…」
「ええんや。分かってる。もうわいはええんや、じゃ、さいなら。田中君もはよ帰りー」
「お疲れ様でーす」
なあにが人情や。大阪なんて、ブラック企業しかあらへん。愛知に行った派遣工の方が稼いでる。来月には同窓会や。東京に行った、今某大企業の営業マンでめっちゃ稼いでる奴が年収自慢に明け暮れるんやろ。
「もう生きててもいいことないがな…」
「そんなことないですよ!」
ふと、背後から綺麗な20前後のべっぴんさんが現れた。
「わわわ!誰や君は?」
「私は転生エージェントのルミです♪」
「なんだ、また人売りか、転職がなんや!どうせ青森のリンゴもぎの短期派遣とか長崎の造船所の門の警備員とかやろ、で、手取り13万。どうせ俺にはそんな職しか残っとらんわ!」
「それは色々失礼ですよ!青森や長崎の人に謝りましょ…(汗)。それに私は転職エージェントでは無くて、転生エージェントです!」
「転生エージェント?なんやそれ。45年間生きてきたけど初めて聞いたわ」
「ここ日本で生きてても地獄、それで自殺する人が毎日たくさんいます。それを聞いて、はるばる異世界にやってきたのが私、ルミです。この地球とは別世界に飛ばして、そこで頑張ってもらいたいのです!異世界も今は人手不足なんですよ~」
「ふん!まあええわ。今から飛込み自殺でもするか考えてたとこやったしな!で、異世界転生はどんなんがあるんや?」
「今一番人気な異世界がスライムに転生して生きていく奴ですねー、この生活はあなたに結構合ってると思いますよ」
「あ?今俺の頭見て言ったやろ!ハゲでもスライムに転生すればどうってことないってか?」
「そ、そんなことないですよー。だったら、これは?【異世界転生急募!年齢50歳までOK!アットホーム生活が貴方を待ってる!住む場所提供!職種、勇者】」
「ほう、50歳までOKってのはええなあ。今の日本の会社はどこも35歳までとかやし。アットホームってのがちと気になるけど、その転生求人めっちゃええな」
「ありがとうございます!(やったぁ!その求人、紹介手数料すごく良いんだよね!!)」
「ん、でもちと待って。その職種の勇者ってのはなんな…うわあ!」
ーーーーーーーーどさっーーーーーーーー