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【スーパー池松屋ネコ砂館 第一話】  作者: 噛みつきピスタチオ
1/1

オシッコと流れ星の軌道は同じか?…



長年のイクラの努力が花開いた瞬間だった


私の傷口も開いた


傷口からバイ菌が入った


高熱が出て三日間寝込んだ


イクラは腹ペコになった


イクラは学んだ


「こいつを噛むとお腹が減る」


こいつを噛むのは今はやめよう…と。


それからイクラと私は つかず離れず一定の距離を保って生活を共にするようになった。


停戦協定


ゆるやかな冷戦


腐るほどない腐れ縁


しっくりする言葉はない。


今日も私はイクラのために砂漠を買いに行く


ネコのトイレの砂だ


私はプチコビ砂漠と読んでいる

イクラのオシッコがオアシスだ


猫のトイレの砂は近所のスーパーに買いに行く


スーパー池松屋だ


スーパー池松屋のネコ砂専門館に行く


スーパー池松屋つめきり専門館、スーパー池松屋きくらげ専門館、スーパー池松屋中古つめきり専門館、スーパー池松屋アウトレッド…


個人経営の癖にスーパー池松屋はやたらに専門館が多い



「こんにちはー」


「いらっしゃいませー」


「いつものありますか?…」


「ありますけど、ちょっと新製品が入ったんで見ていきませんか?…」


店員の女性が珍しく新製品のアピールをしてきたのでちょっと興味が沸いた


「え?…ネコ砂に新製品もクソももあるんですか?…」


「ネコ砂だって新製品は出しますよ、くそは別売りです」


女性なのに「くそ」 とか言うんだな…とちょっと思った。


「それはそうですね、なんとなく砂はどれも大差ないかと…」


「はい、実は色々あるんですよ、猫が後ろ足で砂をかけやすいサラサラの砂とか、ミネラルたっぷり沖縄の星の砂とかも」


「なにかお土産みたいですね」


「たまにはネコさんに新しい砂はいかがでしょう?…マンネリはペット生活の敵ですよ!…」


「ほう、なにか夫婦生活の話みたいですね」


「夫婦になったことが解らないですがそんなものです」


この店員さんのネームプレート 『わらび』と書かれてある


蕨と書くのだろうか?


緑色とオレンジ色の成松屋のエプロンをしている二十代くらいの女性で長い髪はなんか鳥のクチバシみたいので止めている。



「しかし星の砂にオシッコをかけるのはなにか抵抗ありますね…」


「流れ星と考えたらどうでしょう?…」



「え?…オシッコが流れ星なんですか?…」


「オシッコも流れ星も同じ軌道で空から落ちてくると本で見たことがあります」


「その本はなんて名前の本ですか?…」



「ええと…確か星の王子さまかか何かかと」



「え?…星の王子さまにそんな話がありましたっけ?…」



「う、うそじゃありませんよ!…書いてありましたよ!…ホシノオウジサマジャナカッタカモデスガ…」


あ、ちょっとムキになるんだなこの人も



「あ、いや、私もそんな詳しくないし、うろ覚えなもので…」



「じゃあ今度その本を持ってきますよ!」


「え?…」


「ウソじゃないのを証明します!」



こうして私は 次にネコ砂を買いに行く時に その本を見せてもらう事になった。


新製品の試供品をもらい、 いつものトリキッーズのお徳用ネコ砂を買っての日は店を後にした。


ネコ砂を肩に背負って帰ろうかと思ったが、背負うにはちょっと小さ過ぎた


私はちょっとその本が気になっていた


星の王子さまにそんな記述があったのだろうか?…


もしや訳した人にもよってニュアンスも変わっているのもあるのではないか?…と


しかし 次のネコ砂を買う時はなかなかこなかった。


イクラがなぜかその日以来そんなにオシッコをしなくなったのだ。


なんなんだ?…オシッコの断食か?…


今月はオシッコのラマダンか?…


腎臓の病気なんかじゃないのか?…


私はちょっと心配になってチラシを動物病院に連れていくことにした。


最近、ペット保健にも入って 肉球のイラストの書いてある保険証を忘れずもった。



待合室は 消毒と動物とワラと試供品の匂いがする…。



待合室には あのネコ砂の店員さんがいた。


シルバニアファミリーが住んでいるような家の形のキャリーケースにネコを入れていた


耳の垂れた猫だ


いつものエプロン姿ではなく 何かポケットのたくさんついた白いワンピースで


武士のようにシャンとした姿勢でキャリーケースを膝の上に乗せていた


「あ、こんにちは」


私は軽く会釈した


「………」


私だと気づかないのか?…返事がない。


「あ、この間は流れ星の話、ありがとうございます…」


私は 私だと解るエピゾードを無理矢理話した


「………」



無視だ…



気づいてないわけがない…。



あれ?… プライベートに話しかけるなオーラか?…


それとも外で飼い猫に会ったら知らんぷりされるあれか?…



私の心は「???」とちょっと不安になってやや傷ついた



看護師さんから月初めだからと保険証の提示を要求された



結果、お医者さんのイクラの診断結果はこれといった病気はないとのこと。



「あはは♪イクラちゃんの反抗期なんじゃないですな?…」


医者の 井口松中柴原先生がそう冗談ぽく言ったが笑えない。


「さーて来春のサザエさんさんは!」


イクラちゃんの反抗期


マスオの反乱


波平最後の晩餐


…の三本です! ウンガフッフ!」


…というナレーションが脳内に聞こえてきた。


色々あって サザエさんも番組改編期の特番でしかやらなくなったのかな?…



…しかし猫のトイレの砂館の店員さんのあの態度はなんなんだろう…。



気になる…。



私は嫌われたのか?…



イクラよ!


早くオシッコをしてくれ!




乾季が有れば 雨季があるように


今までの反動のようにその日からイクラはおしっこをスコールのようにジャアジャアするようになった!


ネコ砂のコビ砂漠は バイカル湖のように水浸しになった。


お寿司を買った時のバランで笹舟を作り浮かべてみた


風情はなかった。



よしネコ砂は無くなった!



いよいよ成松屋ネコ砂館にネコ砂を買いに行かねば!


私はちょっとお洒落をして虹が湖に落ちてバウンドしたような色の刺繍の入ったポッケのジーンズを穿いて


私は店に向かった。



(つづく)



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