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最弱、はじめての

鼓動が早くて心臓が破裂しそうだ。

足取りも自然と音を消している。

右手に力が入り、目は獲物を狙う

余計なことは考えず、獲物の一瞬の隙、刹那を狙う。


ーー「今だ!!」


全身に力を入れ地面を蹴る。

高く跳躍し、あっという間に獲物の真上へ。

獲物は驚いた様子で対抗しようとするが、こちらが一歩早い!


「取った!」


振りきった剣は獲物に深々と突き刺さり、一刀両断に。

獲物はピギィ、と言う小さい断末魔と共に消え去った。


すさまじい達成感を感じると共に力が抜ける。

地面にへたり込み、跳ねていた心臓を落ち着かせる。

ーー勝った、ついに勝った。何度諦めそうになったことか、諦めず努力した甲斐があった。そう。

「念願叶ってやっと勝ったんだ。この、



スライムに!」





「お前なぁ、スライムに勝って自慢しに来るやつがあるか!スライムだぞ!スライム!」


俺、カナタはダンジョンから帰還し、さっき手に入れた素材を換金。賑わう酒場に勝利の凱旋と洒落込もうと、飲み友達のカインを呼び出し今日の戦果を鼻高々と報告したところ、その伸びきった鼻すぐにへし折られた。


「だって、今まで勝てなかったし...これって成長したってことだろ!?」


「馬鹿野郎!今時スライムなんか剣一つあればレベル1でも勝てるっていっつも言ってるだろ!ドアホ!だいたいスライムなんかの素材売っていくらの金になるよ!」


...確かにそうだ。換金所で素材を売って来たら、3G。実に薬草一個分だ。そういえばこの前なんか足でひょいっと蹴り上げただけで倒している冒険者も見た。その冒険者が強いのでは?なんて希望も抱いたが多分その考えは違うだろう。


「で、でも、俺が倒せるのってコイツくらいだし...」


「はぁ、確かにお前レベルが1からずっと上がんないのは俺も知ってるけどさ、一緒に探索始めた俺でさえもう20になってるしさ。」



「そもそも俺ってなんでいくら戦ってもレベルアップしないんだ...?そんなのおかしいだろ普通!」


「まぁ、レベルアップはその人それぞれのタイミングって言うけど、お前は流石におかしいよなぁ」


俺は数年前からいくら戦ってもレベルアップしない

と言うか現象に悩まされていた。他の同期はカインのように20、成長が早いやつはもう30近くにはなっていると聞く。レベルアップの仕方は人によって異なり早くからレベルアップするものや晩成型で最初が長く残りは短い人もいると言う。俺は多分後者だが、数年もレベルアップしないってのは聞いたことがない。


「もう探索者なんてやめちまった方が良いのかな...」


カインは突然なにか悩むような表情で俺を見つめて来た。

「な、なんだよ?」



「...しょうがねぇ、良いことを教えてやる!」

「??なんだよいきなり。」

「お前、深海塔にはなにが眠ってるか知ってるよな?」


深海塔、自分がさっき潜って来たダンジョンがそう呼ばれている。

昔、国が資源の枯渇から深海を探索し始めた時のこと。

ある探索班が見つけた深海へと伸びる塔、それが深海塔である。

中にはおよそ今の人類では理解し得ないロストテクノロジーである魔力で動く魔力道具と呼ばれる道具の数々。

国は未知の資源に大いに沸きすぐさま探索者を募って探索させたが、魔力と言う不思議な力に当てられた未知の生物であるモンスターが行く手を阻んだ。

皆モンスターを恐れて探索熱は収まったかのように思えたが、こんなにロマンのあるダンジョン。死にたがりと言うか物好きというか、つまり俺たちのような探索者と呼ばれるもの達が現れるのはそう遠いことではなかった。


「なにって、魔力道具だろ?それが目的で探索してるやつがほとんどだろう。」


「そう、今じゃあの電灯にも使われてるあの魔力道具だ。」


そう言ってカインは天井を指差した。そう、深海塔が発見されてからというもの、一気に生活水準は向上した。今や街の電灯から移動手段まで魔力道具からエネルギーを取って来ている。魔術道具とは塔に眠っている古代の兵器である。その中に眠る魔力は絶大で、一都市のエネルギーを三年カバーできるほどの物なんかもあるらしい。


「そしてそれが武器なんかにもなっていることはお前も重々承知だよな?」


「あぁ、なんで今更そんなこと聞くんだよ?」


「いやな、噂で聞いたんだがな?」

カインは周りを気にし、小声でこちらにだけ聞こえるように言う。

「塔の中に、桁違いの魔力を持った魔術道具があるらしいんだよ。」

確かに耳より情報ではあるがそれならば周りを気にする必要もないほどのよくある情報だ。


「そりゃすごいな、んでそれがどうしたって?」


「やばいのはこっからさ!特別にお前にも教えてやるが、そいつが銃や刀なんかじゃなく、人間の形をしてるって言うんだよ!」


「人間の?それって昔話に出てくる魔力で動く人間ってやつだろ?そんなものが...」


「そう!昔話に出てくるあれだよ。まぁ、噂程度で俺も信じちゃいなかったが、本当に血眼になって探してるやつもいるみたいなんだ。」


昔話においてその人間型魔術道具は持つものを悪魔にも天使にも変えることができるほどの力を持つと呼ばれている。実際にその話の中では持つものが悪党で世界が滅んだとか。そんなものが本当にあるなら是非手に入れたいものだが...


「レベルアップできないならめちゃくちゃ強い武器を探そうぜってことで、早速行ってこいよ!案外すぐ見つかるかもしれないぜ!」

「無茶言うなよ...まぁどうせもう一度潜ってみるつもりだったし、一応探してみるけどさ。」

自分が潜れる程度の階層にそんなものがあるはずがないだろう。

そうは言っても、確かに胸躍る展開だ。

自分は期待を隠せず、軽い足取りで塔へと向かった。













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