第九十九話 無意味でも期待してしまう
セイは一頻り泣いた後落ち着くまでその木の根元で蹲っていた。
それでも不安や恐怖、そして自分の不甲斐なさは拭いきれない。
現状は親切なサイリール達からお金や食材をたくさん貰っている。
だけどそれは一時的なものでしかない。
節約すれば、数ヶ月は頑張れるだろう。
だけど、いずれ貰ったお金も食材もなくなる。
その時、自分はどうすればいいのか。
いつかまた緩やかな死へと向かう事になる。
どうすればいいのか、ずっと悩んできた事だ。
だけど答えなんて出てこない。
にーちゃんが優しくしてくれる、頼りたくなってしまう。
すがって助けてと言いたくなる。
出来ない事だと分かっている。
分かってはいても、イーナを助けてくれた後、自分達もまとめて助けてもらえるんじゃないか、そんな無意味な期待をしてしまう。
ここでどんなに自分が悩んでいたって答えなんて出てこないのに。
そんな事は分かりきっているのに。
頼れる大人がそばにいる、それだけで期待をしてしまう。
―― こんな事なら助けてくれなくてよかった ――
そんな事をふと考えてしまい、ハッとする。
こんな事を考えてしまった自分に嫌悪を抱く。
彼は親切で助けてくれているのに、自分の情けない浅ましい気持ちでこんな事を考えてしまった。
セイは両手で自分の顔を挟むようにバチンっと叩いた。
叩いた頬は薄っすらと赤くなっている。
「よし、かえろう。くだらないことをかんがえてるひまなんてないんだ。フォウにもっとたくさんおしえないと。」
そうしてセイは家へと戻っていった。
多少目元は腫れているが、幸か不幸か、殴られて左目は腫れており右目も擦り傷などがあるのでそこまで目立たない。
セイが家へ入ると弟達がどこに行ってたのかと問いかけてきた。
ちょっとな、と濁しつつフォウについて尋ねる。
「で、どこまでフォウはおぼえたんだ?」
セイの質問に弟達、特に一生懸命だったラリーが答えた。
「あのね、だいぶおぼえたんだよ。もうこのいえのなかのものなら、なんでもわかるんだよ!すごいね!」
予想以上にラリー達は頑張ってくれたようだった。
「そうか、ありがとな。おまえら」
そう言ってセイはラリーの頭を撫でた。
それを見ていた他の弟や妹も、僕も私も頑張ったと頭を差し出してきた。
そんなかわいい弟や妹にセイは苦笑しながらも全員の頭を優しく撫でた。
それからセイはフォウに対して単語ではなく長文の会話を理解するように教えていた。
教え方なんて知らないから、ただ長い文章で質問をし、その回答をフォウがして、正解であれば褒め、違えば再度繰り返すという簡単な方法ではあったが。
それでも賢い種族なだけあり、フォウはどんどん知識を学んでいた。
むしろこれまで捕らえられたリトーフォウの中では一番学んでいるかもしれない。
通常は大人のリトーフォウを捕まえて教えるので覚えがそこまでよくないのだ。
フォウはその点、非常に幼いうちに親と離れたので下地自体がまだ真っ白で染まっていなかった。
そんな所に人の会話を聞き続けているので吸収がとても早いのだ。
そうして日が落ち始めた頃、フォウがセイのヒザの上に飛び乗るとくるりと体を丸めて眠ってしまった。
最初はどうしたのかと思ったが、眠っているのだと分かったセイはあまり綺麗とは言えないが、布を畳んでその上にフォウをそっと乗せた。
ちょうどフォウを布に乗せた時にイーナがいる部屋の扉が開いた。
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