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第九十五話 辛くても

 15歳未満の貧乏な子供達は危険を冒して森へ行き、薬草をとってくる。

 しかし、苦労してとってきた薬草はギルドでは買い取りをしてくれないのだ。

 では、どこへ売るのか、それは裏市で売る事になる。

 正規の薬草店などでも哀れんで稀に買ってくれはするが常時買ってくれるわけではない。

 そうなると買い取ってくれるのは非正規の裏市になってしまうのだ。

 非正規だから、当然買い叩かれる。

 普通なら薬草一束銅貨10枚の所を5枚とかで買い叩かれるのだ。

 裏市の薬草買取が多い日などは、3枚になったりもする。


 それに対して抗議しても買わないと言われるだけなので意味がない。

 ただ、それでも街中で子供が出来る仕事で5枚も銅貨を稼ぐのは大変なのである。

 だから子供達は危険を承知で時たま森に入る。

 もちろんそれで戻って来ない子供もいる。

 分かっていても、そうしなければ今度は飢えて死ぬだけなのだ。


 だが、セイにはハンターにならないと、その森へ行くという選択肢が出来ない。

 もし、今セイが死んでしまったら、弟達は生きていけないのだ。

 もちろん、ハンターになっても死の可能性はある、それでもその時には弟達もだいぶ大きくなっているのだ。

 今の幼い弟達を残して死ぬわけにはいかない。


 セイが死んだら、最近一緒に仕事をしてくれるようになったイーナやテトだけではきっと稼ぐのは難しい。

 イーナもテトも内気なので自分から声をかけれないのだ。


 だからセイは死ねない。

 危険を冒して森へはいけない。

 まだ幼い弟達を残して死ねないのだ。

 それでも年を経るごとに食料事情が厳しくなってきている。

 自分含め、弟達も成長期なのだ。

 たくさんご飯を食べさせてやりたいが、お金を稼ぐにも限界がある。

 1日10銅貨稼げたらいい方なのだ。


 たったの10銅貨では、少量の野菜クズが入った味の薄いスープとパン一個を皆でわけるのがせいぜいである。

 今日のように切れ端とはいえ、肉が入ったスープなどほぼ食べれない。

 当然それに見合った体型である。

 皆痩せているしあばらは浮いている。


 分かっている。このままではいずれ死を迎えるのを。

 栄養が足りていないのだ。

 盗みをやめてから食料事情は本当にきつい。

 かといってまた盗みをはじめても、いずれ殴り殺されてしまうだろう。

 しかし、しなくても栄養が足りずに死ぬ。

 どうすればいいのか。


 いずれ自分は決断をしなくてはいけなくなる。

 危険を冒して森に入り、それでも足りなければ盗みもしなくてはいけないだろう。

 だってそれ以外に出来る事がないのだ。


 まだたったの9歳で、ろくに知識も学もない少年に、何が出来るというのか。

 何も出来ないのだ。いい考えも浮かばない。

 結局セイは悩み続けるしかない、いずれ訪れる緩やかな死を迎えるまで。


 そうして屋台広場を抜け、商店街へと向かった。

 ここは昨日サイリール達を案内した場所である。

 高そうな服や、武器、防具、薬、道具、宝飾品などを売っている店が並んでいる。


 宝飾品や、高そうな服を扱う店はもう少し奥にある。

 彼が言うには武器、防具、薬屋には家族は行かないという事だった。

 道具屋も行かないと思うが、子供が興味を示して寄ってる場合もあると。


 武器などの店には寄らないとの事だったが簡単ではあるがチラリと覗きつつ、彼の家族がいそうな店をしっかり見ていく。


 もうそろそろ商店街も終わるという所で一つの高級服屋を覗いた所で金髪できれいな顔をした少年を見つけた。

 昨日一緒に周ったにーちゃんの一人だった。


 セイが顔をパっと輝かせて思わず店に入ろうとした所で店員に突き飛ばされる。


「いたっ」

「きたねぇガキが、商品が汚れるだろうが」


 そう言われても仕方ない事ではあった。

 セイの服はもうずっと同じ服でボロボロだし、体も井戸水で拭いてるとはいえ、薄汚れてはいる。

 こんな見た目では、高級店には足を踏み入れる事さえ出来ないだろう。


「さっさと向こうへ行け!小汚いガキが!」


 店員に怒鳴られ、心が疲れきっていたセイは目に涙が溜まるのを抑える事が出来なかった。

 そんなセイに店員がさらに怒鳴りつけようとした所に声がかかった。


「どうしたの?」


 その声に覚えがあったセイが顔を上げ、店員がぺこぺことしながら声を返した。


「あ、これはお客様。申し訳ございません。この薄汚い子が店に入ろうとしまして……すぐにどこかへ行かせますので」


 そう声を返した店員が見たのは、その客が不愉快そうに眉根を寄せた顔だった。

 この客はどこかの富豪の息子なのか、メイドと幼子二人と来ており、とても気前良く服を買ってくれる客だったのだ。

 だから、その客が不愉快な顔をしているのを見た店員は薄汚い子供がいて不愉快なのだと思い、慌ててセイを店から離そうと怒鳴ろうとした。


お読み頂きありがとうございます。


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異世界転生!俺はここで生きて行く

新作始めました。こちらはのんびり進めて行きます。もし良かったら↑のリンクから見てみて下さい。

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