第八十三話 大金を手にして
宿を出た一行はわいわいと話しながら屋台広場へ向けて歩いていた。
昨日子供達に依頼をしたギルド前がもうすぐ見えそうな場所まできた。
さすがに今日は理由もないので子供達がいても依頼はしてあげれないが、帰りに何かお土産に持って帰ってこようとそう思っていた。
ギルド前に差し掛かった時、サイリールとアソートはとんでもないモノを見てしまった。
確かに昨日見た子供達が何人かいた。
いたにはいたのだが、一人の子供の顔が青紫に腫れていたのだ。
何事かと気になったサイリールがファニーをエルに預け、アソートに目配せをして子供達の元へと向かった。
サイリールに気づいた左目らへんを青紫色に腫らした子供が声をあげた。
前歯が1本抜けた、赤毛の勝気な少年だった。
「あ、きのうのにーちゃん」
「おはよう、ねぇその顔はどうしたんだい?」
「なんでもねぇさ!きにすんなよ!」
精一杯の空元気だろう、ニカっと笑う子供にサイリールはしゃがみこんで目線を合わせる。
「気になってしまうよ。僕に教えてくれないか?なぜそんな事になってしまったんだい?」
優しく声をかけられ、気丈に振舞っていた少年はじわりと目元に涙を浮かべた。
言葉につっかえながらも少年がぽつぽつと話してくれた内容に、彼は自分の迂闊さを呪わずにはいられなかった。
サイリールと別れた子供達は笑顔で家路を急いでいた。
親がいる子供もいたが、親に捨てられ、子供同士で暮らしている子もいた。
そのうち、子供だけで暮らす子同士で今日一緒に街を周った客との楽しかった思い出を話しながら帰っていた。
「あまいぱんおいしかったねー」
クセ毛が強く、茶色の髪の毛がくるくるしている少年が思い出しながら笑顔で話すと、前歯が1本抜けた赤毛の勝気な顔した少年が答えた。
「おう、あのにーちゃんいいひとだったなー!」
そしてもう一人、アソートに懐いていた黒髪の少女が弟妹達を想って声をこぼした。
「リーアたちよろこんでくれるかなぁ」
勝気な少年がその小さな呟きにニカっと笑って答える。
「きっとよろこんでくれるぜ!ラリーもリーアもエリーもさ!そのためにみんなはんぶんだけパンのこしたしな!」
「うん、そうだよね。セイにいちゃんありがと」
セイにいちゃんと呼ばれた勝気な少年はニヒヒと照れ笑いをしていた。
実際はこの少年達は実の兄弟ではない。
みんな親に捨てられるか、親を失い、寄り集まって家族として暮らしているのだ。
「さ、テト、イーナ、はやくかえろうぜ!あ、おまえらちゃんと銀貨はしまってるな?」
テトと呼ばれたクセ毛の少年とイーナと呼ばれた少女はポケットにいれた銀貨をぎゅっと握り締めてセイに返事をした。
「うん、だいじょうぶ。ちゃんとポケットに銀貨はいってるよ、セイにーちゃん」
「うん、あたしもだいじょうぶ。ちゃんとあるよ」
そうしてセイ達は家路を急いだ。
弟や妹にあげる為に半分残した甘いパンと、大金である銀貨を握り締めて。
そんな彼らの会話を聞いている者がいるとも知らずに。
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