第八十二話 愛しい子供達
翌朝、嬉しそうにアソートと手を繋いだまま部屋から出てきたサーシャは、ソファーにいるサイリールに気づいた。
「パパ!おはよー!」
サーシャのそんな元気な声にサイリールは穏やかな笑みを向けて挨拶を返した。
なんとなく、サイリールの様子に違和感を感じたアソートが声をかけようとした時、ふと目が合った。
サイリールはアソートの様子からなんとなく気づいたのか、少し苦笑を浮かべて軽く首を振った。
それを見たアソートはなんとなく察して何も言わずに明るい声で挨拶をするだけにとどめた。
「やぁ、サイリールおはよー。フォウもおはよー」
「ああ、おはよう」
「ぴぃ!」
そんな彼らの後に続いて、まだ少し眠そうなファニーとそんなファニーを抱き上げているエルがやってきた。
「おはよう、ファニー、エル」
「おあう、ぱぱ」
「おはようございます、マスター。さ、お嬢様方、お顔を洗いに参りましょうね」
エルの声に、抱えられたファニーと、アソートから離れたサーシャは素直に返事をして洗面所へと向かっていった。
アソートは何事もなかったかのようにサイリールに今日の予定を聞いていた。
そんな彼の気遣いに感謝しつつ、サイリールも考えていたルートを話していた。
「とりあえずは朝ごはんを兼ねて屋台広場へまず行こうと思う。その後は露店通りかな。さすがに大きい街だから露店通りもすごい数だし、多分今日はそこで終わりだと思う」
「確かに、あそこはすごかったねぇ。ちらっと見ただけだけど、面白そうなのがたくさんあったもん」
そんな会話をしていると顔を洗ってお出かけの準備を終えた子供達がやってきた。
「おにーちゃーん!」
久々にアソートと一緒に眠れてお兄ちゃん子熱が高まったのか、サーシャはアソートにしがみついて甘えていた。
そんなサーシャを見たファニーは無言でトテトテと走るとサイリールにしがみつき顔を押し付けていた。
そんな愛しいファニーをふわりと微笑み抱き上げる。
「ファニーは今日は甘えんぼさんだね?いい子いい子」
優しくファニーの頭をなでると、ファニーは嬉しそうに笑顔になった。
そんな笑顔に少し胸が痛む。
だけど、そんな表情は絶対に子供に見せる事はできない。
彼は自分の痛みを隠して笑顔で声を出した。
「よーし、それじゃ、そろそろ行こうか。今日は屋台で朝ごはんにしようね」
やはり普段と違う事なので子供達は目をキラキラさせて喜んだ。
ファニーが降りたがらないので、結局サイリールが抱き上げたまま出かける事になった。
サーシャはアソートと手を繋いでご満悦の顔をしている。
エルはそんな子供達を見て目を細めて笑顔を浮かべていた。
そうして一行は宿を出て屋台広場へ向けて移動を開始した。
まさか、あんな事が起こっていたとは思わずに。
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