第七十八話 複雑な思い
石段に腰掛けて子供達が楽しそうに食事をする風景を見つつ二人も適当に買った物を食べていた。
「あの子達、楽しそうだね」
アソートの呟きにサイリールも頷いた。
「うん、良かった。大きな街だとああいう子がたくさんいるのかな」
「そうだね、小さい町だと人数自体多くないから、教会が面倒を見てくれるんだけど、大きい所だと教会もそんなにたくさん子供の面倒は見れないから……」
「そうか……。僕がずっと見てあげれるわけじゃないし、こうやって一時的な施しをするのは反ってあの子達が辛い思いをする事になったりしないだろうか」
サイリールの言葉にアソートも少し黙ってしまう。
「……確かに、今いい思いをした分、次はいつ甘いパンが食べれるかわからない。反ってあの子達には辛い思いをする事もあるかもしれない。だけど、ボクは何もしないよりはいいと思っているよ」
「そう……かな……?」
「うん、だってさ、もしかしたらあの甘いパンをもう一度食べたいと頑張る子もいるかもしれない、今日食べた甘いパンを思い出に辛くても頑張れるかもしれない。それはあの子達次第だもの」
最後の一切れを口に放り込んだアソートが石段から立ち上がり、くるりとサイリールに向き直った。
「ね、だから笑ってサイリール。今はあの子達のために。何もしないよりは何かした方がきっといいんだよ」
眩しいほどのアソートの笑顔に、サイリールも自然と笑顔になる。
「うん、そうだね。何もしないよりはした方がいいよね」
そう、例え一時的な施しだとしても、それであの子達は少し飢えをしのげるのだ。
その後また辛い時期を過ごすかもしれないけれども、何もせずにいるよりはきっとまだいいのだ。
「さ、子供達!甘いパンを買いに行こう!このお兄さんが買ってくれるよ!」
子供達から歓声が沸いた。
昼過ぎに宿を出て、夕方近くになってやっと町の案内が終わった。
町の案内を終えた子供達に銀貨を1枚ずつ渡し、手を振って別れを告げた。
別れを告げる際にアソートが銀貨を使う時は出来るだけ親か信用できる大人と一緒に使う用に注意をしていた。
子供達は銀貨をぎゅっと握り締め頷くと、笑顔で手を振り去っていった。
中には、母親や、幼い兄弟に甘いパンをあげたいと自分の分を少し残して持って帰っている子もいた。
アソートと手を繋いでいた少女も小さく手を振ってあの少年の後を追いかけていった。
彼らがこの先どんな生活をしていくのか、無事大人になれるのかは分からない。
それでも、今日何もしなかったよりはよい結果に向かってくれる事を祈りたい。
いつか、子供みんなが笑顔でいられる世界になればと、思わずにはいられなかった。
子供達を見送った二人は宿へと足を向けた。
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