第七十七話 貧しい子供達
二人が宿を出た後、客がいない受付では従業員が小声で会話をしていた。
「すっごい美形揃いだったな」
「ああ、あんな美人見た事ないよ、俺」
「夫婦なのかな?」
「俺案内したけどそんな感じしなかったな」
「へぇ。お忍びかなんかかねぇ?」
「かもしれないな。ま、余計な詮索はここまでだな」
「ああ、そうだな。とりあえずあれは男と分かっていてもドキっとする美人だ」
「確かに、俺案内終えた時に笑顔でお礼言われてキュンとしちまった……」
そんな事を噂されているとは知らない二人は街に出てからぶらりと歩いていた。
「さすがに大きい街だから広いね」
「だねぇ、んー。ね、サイリール、案内頼む?」
「案内?」
「そう、どこの街でもお金のない子供はいるんだ。そういう子に街の案内を頼むの。大体はギルド前にいたりするねぇ」
「ふむ、そうか。いいね、頼もうか」
「うん!じゃあ行こう。馬車で来る時にギルドは見かけたから」
「わかった」
二人はギルドへ向けて移動を開始した。
ギルドに着くと、ギルドの前には数人の薄汚れた子供がいた。
子供達は、大体7,8歳くらいだろうか。
サイリールが眉尻を下げた顔でアソートを見た。
見られたアソートはこうなるだろうと予想していたので、少し苦笑しつつ、頷いた。
「いいよ、サイリールが好きなようにして、君のお金なんだから」
「すまない、ありがとう」
そしてサイリールは子供達に声をかけた。
子供達はサイリールの依頼を聞いて嬉しそうに声をあげていた。
こうして、二人はゾロゾロと子供を連れて街を見て回る事になった。
二人の美しさと、多くの小汚い子供を引き連れている事でかなり目立ちはしたが、子供を連れている事で誰も声をかけてはこなかった。
子供達は機嫌もよく、二人にあれこれと教えてまわっていた。
それもそうだろう、子供達は破格の報酬をもらえるのだ。
通常街案内であれば、良くて銅貨数枚が貰えるのだが、サイリールは皆に銀貨1枚を約束していた。
銀貨は銅貨100枚で銀貨1枚になる。
子供達から見ても大金であるが、普通に大人から見ても大金だ。
平民の平均的な1ヶ月の稼ぎが大体銀貨10枚程だと言えば分かりやすいかもしれない。
そう考えると本当に破格の報酬なのである。
だから、子供達は自分達の家族や兄弟にたくさんご飯や、お金を持って帰れるからとても機嫌がよいのだ。
しかもかなり節約すれば人数にもよるが、銀貨1枚で、1~2ヶ月分くらいにはなる。
そうこうしてるうちに屋台市場に到着した。
これはサイリールからの依頼の場所だった。
「にーちゃん、ついたぜ!ここがやたいいちばだぜ!」
案内をしてくれていたうちの前歯が一本抜けてる勝気な少年がそう言った。
この少年が主にあれこれと教えてくれていた。
少年が言った瞬間あちこちからきゅるるるとお腹が鳴る音がした。
お腹を鳴らした子のうち、アソートと手を繋いでいた女の子が顔を赤くして俯いてしまった。
ギルド前にいた子の中で女の子はこの子だけで、少し引っ込み思案だったようでアソートが話しかけ仲良くなっていたのだ。
少女の兄だという先程の勝気な少年も少女がとてもいい子なんだとアソートに話していた。
お腹を鳴らしていた男の子達はあはははと笑いながらもごまかすようにキョロキョロと目をそらしていた。
チラリとサイリールを見るとパチリと視線があった。
二人して苦笑すると頷きあう。
「よし、じゃあ君達にも何か買ってあげるよ。僕達も少しお腹すいたし」
「えっ!いいよ、にーちゃん。おれらはあんないがしごとなんだぜ」
少年がぐっと我慢をしてそんな事を言った。
だからサイリールはニコリと笑って答えた。
「子供は遠慮しなくていいんだよ。なんでも好きなの買っていいよ」
サイリールの言葉に別の子供がもじもじとしながら尋ねた。
「ほんと……?なんでもいい……?ぼく、おさとうがいっぱいついたぱんたべたい……」
そう尋ねたのは、先程の勝気な少年の弟である男の子だ。
茶色い髪の毛はクセ毛でくるくるとしている。
こんなに貧困であれば砂糖のまぶされたパンなど食べれないのだろう。
「お砂糖がまぶしてあるパンはオヤツで皆に買ってあげるよ。普通にお腹の膨れる物を頼みなさい」
サイリールの言葉に子供達みんなが、目を輝かせた。
我慢をしていた少年も嬉しそうな顔をしている。
アソートと手を繋いでる女の子も目をキラキラさせていた。
そうして少しの時間をかけて全員の食べたい物を購入した。
どれも銅貨5枚程度の食べ物ばかりだ。
みんなで座れる場所へと移動してそれぞれが買ってもらった物にかぶりついた。
サイリールとアソートは石段に腰かけ、その様子を眺めていた。
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