第七十二話 甘えるフォウ
起きたフォウを見ると本当にかわいらしかった。
見た目は狐に近いだろうか。
ただサイズはとても小さく、子供なせいもあるが手の平に乗るほど小さい。
尻尾まで含めて全長20cmくらいだろうか。
尻尾を除くと体長12cmほどだ。本当に小さい。
目はアーモンド型でとても大きく、色は深い青色をしている。
耳は狐よりも長めで、毛が耳の先から少し長めに生えていた。
耳を動かすたびに毛がぴこぴこと揺れ、それもまた愛らしい。
そして胸の毛がとてもふさふさとしている。
そんなフォウの全身を覆う毛は基本は薄茶色だが、耳の先と尻尾の先、そして胸の毛、足先が白銀色の毛で覆われている。
フォウを見ていると、フォウからキュルルルと小さな音が聞こえた。
首を傾げていたフォウはその音がしてすぐにぴぃぴぃと鳴き声をあげはじめた。
「お腹が空いたみたいだねぇ」
「うん、そうみたいだね」
そう言ったサイリールは指先からしゅるりと闇を生み出し、先がぷっくりと膨らみ、先端が乳首になった細い管を作り出した。
「飲んでくれるといいんだけど……」
そっとフォウに指先を近づけてみると、ぴぃぴぃ鳴いていたフォウが鳴くのをやめてくんくんと匂いを嗅ぎ始めた。
管の先端からはじわりとミルクが染み出している。
それに気づいたフォウが乳首に吸い付いた。
母親の乳房を押すように前に足を突き出しては空振りをしている。
ゆっくりと指の位置を下げ、フォウがちょうど籠につめた布を押せる場所へと誘導した。
そんな様子を二人はじっと眺めていた。
あたりにはフォウの乳首に吸い付く音だけが小さく聞こえていた。
ミルクをたっぷりと飲んだフォウは満足気に口周りを舐めていた。
サイリールがそっと手を伸ばしてフォウの頭を指先で撫でると、フォウはそんなサイリールの指に自ら頭をこすりつけてぴぃと鳴いた。
幼くとも、フォウの種族は賢い。
フォウは自分が助けられた事、優しくされている事を理解していた。
もちろん、自分の親や兄弟がすでに死んでいる事もしっかりと分かっている。
なにせ、フォウの目の前で母親は闇獣にかみ殺され、幼い兄弟達も踏みつけられ、爪で切り裂かれ死んだのだ。
フォウだけが足を踏み外して川に落ち、そのおかげで助かったのである。
親兄弟が殺されてしまい自分が一人ぼっちである事はとても寂しい事だった。
だけど、今目の前にいる大きな生物は、自分に乳をくれ、優しくしてくれる。
その事にフォウはとても安心を覚えていたのだ。
優しく撫でてくれる指にフォウは甘え、親愛を示した。
母に甘えるように、兄弟に親愛を示すように。
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