第六十九話 リトーフォウ
意識を切り替えたサイリールは、手を伸ばそうとして今は霧のように実体がない事を思い出し、即席で中身は空っぽだが、本体と同じ形を作った。
そっと手を伸ばし、鳥かごをあけてみた。
中にいた小さな動物が少し顔をあげたがすぐに力なく項垂れ、ぴぃぴぃと小さな声で鳴き出した。
どうしようかと困ったサイリールは、小さな動物に少し触れて覗いてみた。
小さな動物からは強い不安と寂しさが伝わってきていた。
小さな動物の記憶を覗いたサイリールは眉間に皺を寄せる事となってしまった。
記憶を見て分かったのはこの子がまだ子供、本当に幼い子である事、親兄弟は闇獣に襲われ死んでおり、その襲われた時にこの子だけが川に落ちて生き延び、弱っていた所を山賊に捕まえられ、このカゴに入れられた、という事だった。
カゴにいれられてからまだ1日もたってはいないようだ。
しかし、随分と弱っているのだけは痛い程わかった。
そっと手ですくいあげ、闇の中へと保護した。
何を食べるのかは記憶を見た事でわかったので乳の成分を確認する為に小さな動物の体内、胃を調べてみた。
ごくごくわずかではあるが胃の中に乳が残っていたのでそれとまったく同じ成分の乳を作り出す。
闇で細い管を作り、その先を少し膨らまし先端はこの子の母親の乳首に似せて作りあげる。
それをこの子の口にそっと入れ、少しずつミルクを流し込んでいった。
お腹がすいていたのだろう。
ミルクを流し込まれた小さな子は乳首に吸い付くとゴクゴクと飲み始めた。
しばらく飲み続けお腹がいっぱいになったのだろう、小さな子は眠り始めた。
それを確認したサイリールは洞窟から出ると人型の闇を崩し、鳥に変化させると宿に飛んでくるように鳥に指示を出した。
そして意識を切り替えた。
「ただいま」
「おかえり、サイリール。それでどうなった?」
アソートの質問に簡単に小さい動物について説明した。
親兄弟がすでに死んでいる事、まだ子供であり、弱っている事。
「そう……かわいそうに……」
「うん、それでとりあえず今連れ帰ってる。ほっておけないから」
本来であれば闇は分けても中身は繋がっているのだが、こういう偵察などに単独で出す場合は最近は中も切り離す事にしていたので、この場ですぐ取り出す事は出来ないのだ。
サイリールの言葉にアソートは笑みを溢した。
「いつかその子が、自分から巣立つまでは一緒にいてあげよう」
そう言うアソートに、サイリールも頷いた。
「そうだね。それでアソート、あの子の名前はわかる?」
「ええっとね……確か……リトーフォウだったかな……?どこかの言葉で小さき獣って意味だったと思う」
「へぇ、じゃあ、とりあえず呼び名はフォウでいいかな?」
「うん、フォウ、いいね」
小さな動物に呼び名をつけた二人は、鳥が宿に帰って来るまで他愛無い話しをしつつ待つ事にした。
お読み頂きありがとうございます。
もし宜しければ励みになりますので、評価・ブクマを宜しくお願いします。
修正
何を食べるのかは記憶を見た事でわかったので乳の成分を確認する為にフォウの体内
・フォウの部分を小さな動物に変更しました。
指摘ありがとうございました。




