第六十七話 使い魔
食事はそれなりにおいしいものだった。
いつもと違う味に子供達も楽しんでいたようだった。
食事を終えた一行は今日はもう寝て、明日早めに出発する事にした。
それぞれの部屋の前まで来ると子供達に、アソートとサイリールがおやすみの挨拶をして別れた。
男二人で部屋へ入り、受付の少女の事を話したりしているとサイリールが何か思い出したように声をあげた。
「どうかした?サイリール」
「ああ、ごめん。そういえば山賊の塒にウサギを送ったのを忘れていて。今ウサギから着いたって合図があったんだ」
「あっ、そういえば、そうだった。ボクが言った事なのに忘れてた。ごめん」
「そんな事ないよ。あそこでアソートが山賊のお宝を回収する事を言ってくれてなければ、僕は気にもとめなかっただろうし。お金はいくらあっても困らないからね、ありがとう、アソート」
「あ、でも山賊の塒に捕まってる人とかいたらどうしよう……?」
「ああ、それは大丈夫。ありえる事だから、放った闇ウサギは結構濃くしてあるんだ。だから、そのまま山賊がいれば飲み込めるし、捕まってる人がいれば闇で保護して、この町の隅にでも解放しておくから、大丈夫だと思う。助けた人はすごくびっくりするかもしれないけどね」
「はは、確かにびっくりしちゃいそうだね。というか、そんな事も闇だけで出来るようになったんだ!サイリールはすごいなぁ」
サイリールが闇で出来る事が日々進化していってる事にアソートは素直に驚きと賞賛を覚えた。
「アソートにも一部闇を譲渡しただろう?」
「うん、でもあれは操作が難しいよー。ボクはまだまだ修行がいりそうだ」
そう苦笑しつつ、アソートも自らの手の平から小さい闇を生み出し、くねくねと動かした。
「きっと君ならすぐに使えるようになるさ」
サイリールのそんな言葉にアソートは頷いて頑張ると告げた。
アソートがサイリールから闇を譲渡されたのは旅に出る少し前の事だった。
夜、子供達が寝静まってから三人で少し話をしていた時にふとサイリールが提案してきたのだ。
「ねぇアソート。君は近接戦闘が苦手だから、闇を操ってみないかい?」
サイリールのそんな言葉にアソートは首を傾げた。
「闇はサイリールの能力だろう?ボクには使えないんじゃない?」
「多分いけると思うんだ、君の肉体自体ほぼ闇で作ったから、相性はいいと思う。少し僕の闇を分けるから手を出して。多分なんとなく分かると思う」
サイリールにそう言われたアソートは素直に手を差し出した。
そんなアソートの手のひらの上にサイリールが自身の手から生み出した闇を落としていく。
トロリと液体のように見えるのに、闇はアソートの手の上に留まった。
そんな闇を良く見ると液体のようだけど濃度の強い霞のようにも見える。
「そのまま、目を閉じて、闇に意識を向けてみて」
「うん、分かった」
サイリールの言葉どおり、目を閉じ、今自身の手の上にある闇に意識を向ける。
すると不思議な事になんとなく闇の扱い方が分かった。
サイリールの様になんでも闇で出来るわけではないが、闇を使って防御壁を貼ったり、逆に闇で相手を覆い取り込んだりと、簡単な操作なら出来そうであった。
「あ、本当だ。なんとなく使い方がわかる。サイリールの様になんでも出来るわけじゃないけど、簡単な防御や攻撃ならボクでも出来そう」
「ああ、今その闇はまだ僕の所有物だから、今切り離すよ。そうしたらもう少し色々出来るかもしれない」
そうサイリールが言った直後、闇の性質が変わった気がした。
闇に意識を強く向けると、闇がアソートの所有物に切り替わっていくのが感じられた。
自身のモノとなって、改めて闇に意識を向けると確かにやれる事が増えた感じがした。
やはりサイリールのように生物を作ったりは出来ないし複雑な物体に変化させるのは難しいようだったが、中身のない小さな使い魔のようなモノなら作れるし、他にも出来そうな事があるようだ。
サイリールが時々森の探索や見張りとして小さなクモや小鳥を作っては放っていたが、多分これだろう。
「うん、確かに、少し出来る事が増えた。でも簡単なようでこれは難しいね。練習がいりそうだー」
そう言ったアソートの手のひらの上では小さな闇がうねうねと動いていた。
そんな訳でアソートも闇を扱えるようにはなっていたのだった。
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