第六十四話 美しい客
その日のうちには街へは着かなさそうだったので、道中にあった町で一泊する事にした。
宿の部屋は男部屋と女子供部屋でとる事にしている。
馬はこの町で二頭だけ売り払った。残りは次の街で売る予定だ。
町についた時に衛兵にご飯のおいしい、いい宿はないかと尋ねた所、紹介された宿屋があったので、そこへと向けて馬車を進めた。
紹介された宿へと着き、サイリールが宿内へと確認に行った。
御者席にはアソートが残った。
宿に入るとドアについている小さな鐘がカランカランと音を鳴らした。
その音に宿の受付にいた13歳くらいの赤毛をおさげにした少女が声をあげた。
「いらっしゃー……」
言葉の途中で口を開けたまま動かなくなった少女へ少し戸惑いながらも声をかけた。
「こんばんわ、宿に空きはあるかな?」
しかし、サイリールが声をかけても少女は口を開けたままサイリールを見つめ固まったままだった。
サイリールが困惑していると奥から、人のよさそうな恰幅のいい女性が出てきながら少女へと声をかけた。
「エリー、お客様が来たのかい?エリー?」
そうして出てきた女性もサイリールを見て固まってしまう。
「あの……」
サイリールが困惑しつつも声をかけると女性はハッとしてエリーと呼んだ少女の頭を叩き、サイリールに声をかけた。
「すいません、お客さん、あんまりにもお客さんが綺麗な顔してるから見とれちゃいましたよ。あはは。エリー、あんたボサっとしてないで受付しなさい」
「ハッ!だってお母さん!仕方ないじゃない!このお兄さんすごい綺麗なんだもん!」
少女が驚きを交えて女性へと言い訳をしたが再び頭を叩かれた。
それを見たサイリールは少し苦笑してしまう。
「これっ余計な事言わない。早く受付しなさい」
自分の頭をさすりながら、少女が声をかけた。
「ごめんなさい、おにいさん。それで泊まりですか?食事ですか?泊まりなら銀貨1枚、食事だけならその場支払い。食事と泊まりなら銀貨2枚だよ。です」
「ああ、食事と泊まりでお願いしたいんだ、部屋は二部屋とりたい」
サイリールの言葉に再び驚く少女。子持ちだとは思わなかったのだろう。
「はひ。二部屋ですね、わかりまひた」
驚きのせいだろうか、言葉遣いがおかしかった。
「うん、お願いするよ」
「はい、えっとそれじゃあ二部屋なので、銀貨4枚です」
「分かった」
小袋をこっそり闇から取り出しつつ、馬車について尋ねた。
「あ、あとここは馬車を停められるかな?」
「あ、はい、裏手にまわってくれれば、馬車と馬止めがあります。藁と水はこっちであげておきますよ」
少し落ち着いたのか、少女も普通に会話しはじめた。
「わかった。ありがとう。じゃあこれ、先に払っておくね」
そう言ってサイリールが小袋から銀貨を4枚取り出しカウンターに置いた。
少女がしっかり数え、その後木の札を2枚渡した。
「札に部屋の番号が書いてあります。部屋はあの階段からあがって少し奥の二部屋になります。食事の時間はいつでも大丈夫だけど、あまり遅い時間はやってないので注意してくださ。」
「うん、わかった。ありがとう」
サイリールがニコリと微笑みかけ、礼を言った。
そのままサイリールは馬車にいる家族のもとへ向かったが、残された少女は頬を赤く染めて、再び奥の部屋から出てきた母親に頭を叩かれるまでサイリールの出て行った扉をうっとりと見つめていた。
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宿の料金形態に関して少し変更しました。
人数計算だったのを部屋計算に変更
宿の料金が銀貨5枚だったのを2枚に変えました。




