第六十三話 戦闘と後処理
山賊達の会話を聞いてサイリールは溜息を一つつくと、意識を切り替えた。
大人しく山賊が出てくるのを待つ必要もないので、サイリールは走り始める。
間の悪い事に御者役の男は馬車内を見ていてサイリールが走り出した事に気づいていなかった。
サイリールが近づいてきているのに気づいた時にはもうサイリールはほぼ目の前にいた。
「おかしゴボッ」
お頭と、叫ぼうとしたのだろうが、最後まで叫ぶ事もなく御者役の男は
胸に穴を開けて死んだ。
御者の男から剣を抜いたサイリールは、そのまま近くにいた馬の尻の上に飛び乗り乗っていた男の首を刎ね、そのまま跳躍して次の男に襲いかかっていた。
そこでやっと襲われている事に山賊達が気づき、次々と怒号を上げて馬車から飛び出してきた。
しかしその時にはすでに御者を含め三人が死んでいた。
ここで山賊の残りは九名しか残っていなかった。
馬車から出てきたのが七名、馬に乗っているのが二名。
それでも普通であれば九名に対し相手は一人である。
だから山賊達は引かなかった。
普通であれば、負ける事などないからだ。
それを後悔した時にはすでに遅く、逃げ出そうと走っていた最後の生きた山賊の胸からはニョッキリと剣が生えていた。
その剣を眺めながら、最後の山賊は意識を永遠に失った。
すべてを殺し終わったサイリールがふっと一息ついた。
そしてエル達のいる馬車を覆っている闇の一部をエルに飛ばし、声をかけた。
「エル、悪いんだけどアソートと場所を代わってくれないか。アソートに相談があるんだ」
『はい、承知致しました』
エルの声がしてしばらく、アソートが御者席にやってきたようだ。
『よいしょ。よし、いいよ、サイリール』
「すまないな、少し相談があるんだがいいかい?」
『大丈夫だよ。どうしたの?』
「血なまぐさい話しですまないんだが、先程山賊を全滅させたんだ」
『やっぱり山賊だったんだね、ありがとう、サイリール』
「いいんだ。それで、山賊の死体と馬や馬車をどうしようかと思って」
『ああ、そうだね。馬はさすがになぁ……、あ、馬を眠らせて闇に取り込んでおく事はできたりする?』
「多分できると思う」
『もし可能ならやってみて。馬車を買ったから分かると思うけど、馬って結構高いんだ。大きな町なら売れると思う。あと馬車はどう?あまり傷んでない?』
「いや、かなり傷んでいるね。かなりボロボロだ。剣の傷跡なんかもついてる」
『ああ、それはだめだね。馬車は潰してしまっておいて。放置しておくのも良くないから』
「わかった。死体は回収でいいかな」
『うん、放置して腐敗したら病気の元だしね。今回は衛兵に伝えないし』
この世界では人間の死体を放置していると闇がとりつき、歩く死体になってしまうのだ。
しかも腐敗は進むので病気を撒き散らしているようなものである。
この世界では死体は焼くか、首を切断するのか、どちらかが一般的なのだ。
首を切断するとなぜか闇がとりつかないのだ。
以前の山賊を殺した時は衛兵に伝える必要があったので首だけ切断しておいたのである。
「よし、ありがとうアソート。片付けたらそちらに戻るよ」
『うん!わかった!待ってるよ。あ、そうだ、あと…………』
アソートとの会話を終えたサイリールは適当に闇を飛ばして山賊の死体を回収した。
走って逃げ去っていない馬をすべてそっと眠らせ闇に取り込む。
最後に馬車を闇に取り込み潰した。
薪になりそうなのでそのまま闇において置くことにした。
そうしてすべてを片付けた後、ウサギの姿をした闇を生み出し、山賊の記憶から得た、山賊の塒へ向かえと命令した。
闇色のウサギはコクリと頷くと走り出した。
それを見届け、サイリールは家族が待つ馬車へ向けて走り出した。
サイリールが去った後には何も残ってはいない。
ただ血の跡が残るのみである。
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