第六十二話 山賊達
後方から着いて来ていた馬車の御者席に座っていた男は前方の馬車から一人、男が降りた事を訝しみ、馬車内に何かを話しかけていた。
そのまま通り過ぎる事にしたのかサイリールを避けるように馬車を動かした。
通り過ぎさせる事など出来ないので、山賊の馬車との距離はまだあったが、サイリールは腰に差した剣を引き抜いた。
それを見た御者がまた何かを馬車内に向けて話しかけている。
少しして馬車の速度が落ち、後方から馬に跨った男が三名程馬車を追い越してサイリールに近づいてきた。
サイリールは剣を抜いたままそれを見ていた。
近づいてきた男達が声をかける。
「おい、綺麗なツラした兄さん。うちの馬車に何か用か?そんな物騒なモン出してよ」
「そうだぜ、俺らはあの馬車の護衛だ。大人しくどいてくんねーかな」
そんな男達の言葉にサイリールは答えた。
「そうか。山賊の護衛がお前達の仕事か。驚きだ。このまま大人しく引き返せば殺さない。引き返さないなら、殺す」
サイリールの言葉に一瞬呆けた男達だったが、すぐに声を出して笑い出した。
「あははは!面白い事言うな!あんちゃんよ。たった一人で?俺らを殺すってか!」
「大人しく道を明けてりゃ死なずにすんだのになぁ。あの馬車の護衛かなんかしらねぇが、バカなやつだな」
「まぁでもよ、その勇気に免じて、せめて苦しまずに殺してやろうぜ」
最後に口を開いた男が、腰から剣を抜き、そのまま馬を走らせサイリールに切りかかった。
いくら男が馬の扱いに慣れていようと、所詮はただの山賊である。
剣の技術に長けているわけでもなく、馬の扱いが騎士のようにうまいわけでもない。
あっさりとサイリールに剣をかわされ、切り返しで剣を持った腕を切断される。
男の腕からパっと血が噴出し、それに気づいた男が、腕の激痛に走る馬から落ちた。
運が悪かったのか、落ちた際に驚いた馬に頭を踏まれそこで男の命は終わった。
一瞬の出来事に残り二人の男はぽかんとしてしまった。
そんな男達を見て、サイリールが再度を声をかける。
「大人しく引き返せ。次は皆殺しにするぞ」
そんなサイリールの言葉に二人ともハっとして顔を見合わせた。
「おい、戻るぞ」
男の一人が言い、もう一人もそれに従った。
激昂して切りかかってくるかと思ったが、やけに素直に戻るなと思ったサイリールは山賊達の会話を聞く為にそっと闇を飛ばした。
男達が馬車に戻り内部に向けて何かを話していた。
闇に耳を傾けると会話が聞こえてきた。
「お頭、あいつにトーマスが殺されました。かなりのやり手のようです」
「ああ、そのようだな。入ったばかりだがトーマスは仲間だった。おい、アヒム。それとベンノとザシャ。おめぇらであいつ殺してこい。いけんな?」
「へっお頭問題ねぇよ。すぐぶっ殺してきてやる」
そんな会話を山賊が交わしていた。
サイリールが聞いているとも知らずに。
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