第六十一話 不穏な馬車
あれからいくつかの村や町を過ぎ、次の目指す街はこの地方では一番大きい都市だった。
話し合いの結果、その街では3~4日程過ごす事にした。
「後どれくらいだろうねぇ。楽しみだなぁ、街」
「アソートは行った事ないのかい?」
サイリールの問いかけにアソートは首を横に振る。
「ないよー。あると言えばあるんだけど、ほら、前の体の時で檻の中だったからね」
「ああ……。ごめん」
「いやいや、いいよ。あの時は辛かったけどさ、でも今があるのは捕まったおかげもあると思うんだ。だから、気にしないで」
そういって笑うアソートにサイリールも笑顔を向けた。
そんな会話をしていたら、馬車の中で子供達の相手をしていたエルが声をかけてきた。
「マスター、後方から怪しい馬車が着いてきております。闇を飛ばして探って頂けませんか?」
「わかった。アソート、中へ入ってエルと交代してもらえるかい?」
「うん、エル、代わるよ」
「はい、宜しくお願い致します」
エルとアソートが場所を交代し、エルが御者を代わった。
彼は闇を生み出すと薄くして後方へ流し、自身は目を閉じて闇へと感覚を移した。
闇にのって後方からゆっくりと着いてくる馬車へと近づいていく。
御者席にはみすぼらしい格好の男が一人座っていた。
帽子を目深に被っており、表情が見えない。
そのまま隙間から馬車内へ入ると数名の男が中にいた。
それぞれが武器を持っている。
男達が乗った馬車の後ろにはさらに馬に乗った数人の男もいた。
手近な男へと闇を伸ばし素性を探る。
予想はしていたが、案の定山賊だった。
この少し先の所で街道が林の中を通る、カーブも多いのでそこで後方の馬に乗った男達を先行させ、挟み撃ちにするつもりなのだろう。
ここを通る前に多少の食料を購入した村で、最近山賊が出るから気をつけろと言われていたのだ。
闇を戻しつつ意識も戻す。
小さく溜息をついたのをエルが気づいた。
「マスター、やはり山賊でございましたか?」
「うん、山賊だった。今は誰が見てるか分からないから、闇は薄めて馬車を覆っておくよ」
「はい、承知致しました。マスターが降りられましたら少し先の方で馬車を停車致します」
「うん、闇で覆うから危険はないけど、子供達には見せないようにしてね」
「はい、承知致しております」
エルの返事を聞いた後、馬車内を覗き込み声をかけた。
「僕はちょっと馬車から離れるけど、すぐ戻るから、アソートと大人しく遊んでいてね」
子供達は元気よく返事をし、アソートは頷いた。
それを確認したサイリールは入り口の布を下ろし、エルに頷いてから馬車を飛び降りた。
お読み頂きありがとうございます。
もし宜しければ励みになりますので、評価・ブクマを宜しくお願いします。




