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第五十九話 新しい右目と花飾り

 サーシャの右目に取り掛かってから30分程がたった。

 彼女の顔の右半分を覆っていた大輪の花は今はもう姿がない。

 あるのは右目の部分であろう場所に黒い塊が蠢いているだけである。


 それももう終わりを迎えていた。

 黒い塊の半分がぽこりと離れ、サイリールの元へ戻っていく。

 残り半分はサーシャの目の部分にぴったりとはまり、徐々にその色も形も変わっていっている。


 数分もしないうちにサーシャの右目は左目と同じようになった。


「サーシャ、ゆっくりと目を開けてごらん」


 サイリールの言葉に、サーシャが少しずつ目を開いていく。


「どうだい?何か変な所はあるかい?」


 少し周りをキョロキョロと見回したあと、一度目を閉じてまた開いた。


「ううん、だいじょーぶ。まえよりよくみえるよ!パパ、ありがとう!」


 そう言って満面の笑みで答えるサーシャ。


「パパ!かがみなーい?サーシャかがみみたい!」

「あるよ、ほら」

「ありがと!」


 サイリールから手鏡を受け取り自分の顔をまじまじと見るサーシャ。


「えへへ、みんなとおなじだ」


 そんなサーシャを見つつもサイリールは手元で闇をこねくりまわしていた。

 先程サーシャの右目から半分離れて戻ってきた分である。

 すでに闇と混ぜているので元の花の色も、見た目も残ってはいないが、せっかくだから花があった部分から同じ形の花の髪飾りを作りたかったのだ。

 もちろん、サイズは以前よりもぐっと小さくなるが、それでもサーシャの金の髪にはきっとよく映えるだろう。


 しばらくして、やっと形になった。

 最後に髪留めの部分を作りあげる。


 そうして完成した花の髪飾りから顔をあげ、アソートと嬉しそうに言葉を交わすサーシャに声をかけた。


「サーシャ、ちょっとこっちにおいで」


 サイリールの言葉に首を傾げながらも素直に移動してくる。


「なぁに?パパ」

「じっとしてて、サーシャにとてもよく似合う髪飾りをつけてあげる」

「わーい!どんなのー?どんなのー?」


 嬉しげにそわそわするサーシャを宥めつつ、彼女の右側頭部の髪を少し纏めて、そこに先程作り上げた髪飾りをつけた。

 大きさの割には軽いので負担はないだろう。


 真っ赤な美しい大輪の花がサーシャの金の髪に彩りを加える。


「パパー、みていいー?」

「いいよ、喜んでくれるといいんだけど」


 そうして手鏡を覗き込んだサーシャが目を見開いた。

 急速に目に大きな涙の粒が盛り上がる。

 ぽろぽろと大粒の涙を溢しながら、サイリールを見た。


「パパ、あり……ありが……。うぅー」


 サイリールに抱きつきサーシャはしばらく泣き続けた。

 右手をそっとサイリールが作った花飾りに添えて。


お読み頂きありがとうございます。


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