第五十八話 花の機能
よし。とひとつ頷いて彼が言った。
「それじゃあ、次はサーシャの右目のお花を変えよう。いいね?サーシャ」
サイリールの言葉にサーシャはぎゅっと目を閉じ、右手でそっと自分の右目の花に触れた。
「サーシャをうんだひととおなじおはな。でも、サーシャのかぞくがすきっていってくれたおはな。だから、サーシャはサーシャのかぞくがすきっていったおはながすき。でも、サーシャはみんなとおなじになりたい、ごめんね」
サーシャの言葉に二人共一度ぐっと目を瞑った。
「パパ、おにーちゃん、サーシャおわかれちゃんとした」
「うん。パパもお別れちゃんとしたよ。パパは今のサーシャもこれからのサーシャも大好きだからね」
「僕もサーシャのお花にお別れしたよ。サーシャは花があってもなくてもボクにとってはずっとずっとかわいい妹だからね」
彼らの言葉に頬をうっすらと染めてはにかんだ。
「うん。パパもおにーちゃんも、エルもファニーもだいすき」
そう言ったサーシャはすっと目を閉じた。覚悟を決めたのだろう。
サイリールも、アソートと視線を交わし、頷きあう。
ぽこりと闇が零れ落ちる。
するりとサーシャに近づき、顔の右半分を闇で包み込んだ。
顔の右半分と言っても実質は眼球がある場所付近だけであとは花びら状になって覆っているだけではある。
彼はサーシャの右目を変えるとなった時に、実質眼球と周辺の形成だけなので花部分は多少余る事を予想していた。
すべてを無くすのは忍びなかった、だから余った部分に闇を混ぜて花の髪飾りを作ろうと思っていた。
そんな事を考えつつもしっかりと精査していく。
花自体に重要な器官があるかもしれないからだ。
細かく精査していくといくつか分かった事があった。
サーシャとサーシャの母親も同じ能力なのだろう。
サーシャ自体はまだ幼いから機能していないが、機構はきちんと備わっていた。
実際これはあまり良くない、危険な能力であった。
花に備わっていた機能は毒と同じであった。
それも中毒性が非常に高いものだ。
彼女の母親がこれを知っているのかはわからないが本能で使っているだろう。
サーシャも性熟したら自然と本能で使ってしまっていただろう。
今回、サーシャが見た目を変えたいと言ってくれたのは正直助かった。
花に備わっている機構から考えると花の中で甘い蜜という毒を作り出し、それを本体が吸収、全身から甘い蜜の香りを放つ。
その香りを吸い込んだ者はその香りに毒される。
また、あの匂いを嗅ぎたいと、中毒になっていくのだ。
きっと、それだけではない、多分性的に興奮する作用もあるのだろう。
能力的には異性に一番効果が出るのではあろうが、同性でも闇の住人であれば効果がある程度ある気がする。
さらに言えば推測でしかないが、この毒は本人にも影響を少なからず与える気がする。
多分、性的思考が緩くなり、そして、興味という形で強くなってしまうのだろう。
そこまで確認した所で、その機能以外は特に重要な器官はないようであった。
だから闇を混ぜ始める。少しずつ、他を傷つけないように。
だけど、花の機能はすべて消して。
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