第五十七話 新しい右手
闇と右手の蔓が混じりあった後、変な感じがするのかサーシャが少し身じろいだ。
それもそうだろう、右手はいまや完全に闇と混ざり形をなくしているのだから。
もちろん、闇の住人特有の闇の力の流れも止まっている。
だから、右手の感覚が失われ不思議なのだろう。
そんなサーシャを安心させる為にアソートは優しく彼女の髪を撫でながら声をかけた。
「大丈夫だよ、サーシャ」
全身が強張っていたサーシャだったが、アソートの声を聞いて安心したのか、体の力を抜く事ができた。
サーシャの髪を優しく撫でながらもアソートはじっとサーシャの右手を見つめていた。
しばらくぐにゃぐにゃと歪んでいた右手だったが、じわじわと動きが収まり黒い丸い塊となった。
アソートはそれを見て、昔の自分みたいだな、と思い、クスリと笑った。
チラリとサイリールを見ると目があった。
どうやら、サイリールもアソートと同じ事を少し思ったようだった。
二人してクスリと苦笑した。
そして、数分そのままでいたかと思うとぱっと色が変わった。
サーシャの肌色と同じ色になったのだ。
肌色になった後は早かった。
するすると伸びると手の形になっていく。
形が出来た後、サイリールはサーシャの体内の闇の力の腕にあった流れを戻していく。
とはいえ、そのままではない。
最初のは蔦に適応して何本も伸びていたので、今の腕に合わせて闇の力の流れも変える。
何本もあったのはひとつにまとめ、先端は指に合わせて伸ばしていく。
左手と違和感がでないように、慎重に。
そうして数分……。
「ふう。出来た。まずは右手だけ。どうかな?サーシャ」
サイリールの声にサーシャが目をあけて自分の右手を見る。
今までは蔓が集合して腕のようになっていたのが、今は左手と同じになっている。
大きく目を見開いたかと思うと、満面の笑顔で彼を見た。
「パパ!サーシャのて!おなじ!みんなとおなじ!」
サーシャのはじけるような笑みと喜びに二人共笑顔になる。
「おにーちゃんみて!サーシャのて!いっしょ!ね!」
「うんうん、一緒だ。ちっちゃくてかわいい手だねー」
アソートの言葉にサーシャは頬をさらに薔薇色に染めるとニーっと笑顔になった。
サイリールはサーシャが落ち着くまでしばらく待つ事にした。
少し落ち着いてきた所でサーシャに尋ねる。
「サーシャ、手に違和感はないかい?痺れるとか、動かしにくいとか」
サイリールの言葉にサーシャは自分の右手を回したり手を握ったり開いたりしてみる。
「ううん!へんなかんじしない!まえのてよりうごかしやすいよ!」
「そっか。うん。それならいいんだ」
「えへへ。パパ、ありがと。サーシャうれしい」
「うん、パパもサーシャが喜んでくれて嬉しいよ」
そうしていよいよサーシャの花の目に取り掛かる事になった。
「それじゃあ、次はサーシャの右目のお花を変えよう。いいね?サーシャ」
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