第五十五話 話し合い
話し合いの結果、サーシャの見た目を変える事には全員が頷いた。
ただ、サイリールはサーシャが右目の花を嫌っていたのに少し悲しみを覚えていた。
サーシャの名前はその右目の大輪の花から思い浮かんだものだからだ。
なので、その事についてはサーシャと話したいと皆に相談している。
アソートもエルも、サーシャの右目の花はとても好きだったので嫌っていて欲しくなかった。
話し合いを終え、馬車へと戻ると子供達は目を覚ましていた。
ちょうどよいのでサイリールがサーシャと話しをする事にした。
「エル、御者を任せてもいいかな」
「はい、畏まりました」
「じゃあ、ファニー、おにーちゃんと一緒に前のお席に行こう」
「にーにとおせき!いく!ねーねは?」
「おねぇちゃんはちょっとパパとご相談だよー。お邪魔しないように、一緒に行こうね」
「はーい!」
アソートも本当はサーシャと話したいはずなのにサイリールに任せてくれたのだ。
その事に感謝をする。
エル達が御者席へと向かったのを確認して、サーシャに声をかける。
「サーシャは僕と中でお話ししよう」
「……うん」
馬車の中へと入り、御者席から少し離れた所にクッションを並べる。
「サーシャ、ここへお座り」
「うん」
馬車の後ろ側へと二人は座った。
「サーシャ、エルから聞いたよ。気づいてあげれなくてごめんね」
「ううん。パパはわるくないの。サーシャがこんなだから、だめなの」
そういったサーシャは目に涙を溜めた。
「そんな事ないんだよ。サーシャはそのままでもとてもかわいいし綺麗だよ。だけど、サーシャが辛いなら、見た目を変える事は可能だ」
彼の言葉を聞いてサーシャの目が輝いた。
「ほんと!?サーシャみんなとおなじになりたい!」
「うん、今日の夜は野宿にするから、その時にやろう。だけどね、サーシャ、聞いて欲しい」
涙の溜まっていた目をこすっていたサーシャが彼の言葉に顔をあげる。
「なぁに?」
「サーシャは目のお花が嫌いかい?」
サイリールの言葉にサーシャは俯くと少し唇を尖らせた。
「……すきじゃない。あのひととおなじだから」
「そっか。でも、僕はサーシャのお花はとても好きだよ。とても綺麗だし、サーシャにすごくよく似合っている。それに、サーシャの名前はそのお花を見て浮かんだ名前なんだ」
彼の話を聞いたサーシャは更に俯いてしまう。
「だから、サーシャ。嫌わないで欲しいんだ。僕達はサーシャが大好きだし、サーシャの今の見た目も大好きだ。だけど、この世界ではその見た目では辛いというのも分かっている。だから、サーシャの願いも叶えるよ」
顔を上げたサーシャはぽろぽろと涙を零していた。
その涙をそっと指で拭う。
そしてサーシャをぎゅっと抱きしめた。
「サーシャ、大好きだよ。だから今の自分を嫌わないで」
「うん……。サーシャもパパだいすき。……ほんとはおはな、すきなの。ファニーもエルも、おにーちゃんも、みんないっつもおはな、ほめてくれた。でも、でも、まちのいりぐちにいた、へいしさんのことばをきいて、パパがサーシャのせいで、ばかに、ヒック、されてて、ヒック、すごく、つらかったの。ううー」
彼の胸に頭を押し付けて大粒の涙を溢しながら、胸のうちを吐露するサーシャ。
彼は、そんなサーシャの頭を優しくなでた。
「サーシャのせいじゃないんだ。あれは、僕が彼と仲良く出来なかったせいなんだよ。だから、サーシャのせいなんかじゃないんだ」
しばらくそうして泣き続けていたサーシャだったが、そのうち泣きつかれて眠ってしまった。
そんなサーシャの頭を優しく撫でながらポツリと彼が溢す。
「ほんとに、情けないパパだね、ごめんね、サーシャ。だけど君が今の君を嫌っていなくて本当に良かった」
そうしてサーシャの頭を撫で続けた。優しく、優しく。
お読み頂きありがとうございます。
もし宜しければ励みになりますので、評価・ブクマ・感想を宜しくお願いします。




