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第五十四話 少女の悩み

 町を出発して3時間程たった頃、馬車内で眠っていたサーシャが目を覚ました。


「おはようございます、サーシャお嬢様」

「んぅ」


 目をこすりながらガタガタ揺れる事に首を傾げる。


「今は馬車で移動中でございますよ」


 エルの説明にあっと気づいた。

 エルに御者席へ行ってみるか?と言われたが、サーシャは俯いて首を横に振る。


「どうされましたか?何か不安な事でもございますか?(わたくし)でよければお話し下さいませ」


 エルに優しく問いかけられ、昨日眠れぬ夜を過ごしたサーシャは目に大粒の涙を浮かばせた。

 そしてつたない言葉で自分が抱える不安や悲しみ、悔しさを伝えた。


 自分が咎められたりバカにされるのは慣れている、だけど家族がそのせいでバカにされるのは辛い、このまま自分が一緒にいたらまたバカにされるのではないか、人前に出るのが怖い。

 どうして私はこんな姿なのか、みんなと同じならこんな風に家族がバカにされないのに……。


 そんな内容を必死になって伝えてた。

 話を聞き終えたエルはサーシャをぎゅっと抱きしめた。

 あの時、聞こえてしまっていたのにそれを気づいてあげれなかった事、こんな小さな子に辛い思いを抱えさせてしまった事。


「申し訳ありません、サーシャお嬢様。こんな辛い思いをなさっていたとは……」

「ううん、サーシャ、どうしたらみんなとおなじになれるのかな……。このかおのおはなも、サーシャをうんだひととおなじですきじゃないもん……」


 涙を目にいっぱい溜めながらも、そう訴えるサーシャ。


「そう……でございますね……。後で皆さんに私から相談をしておきましょう。きっと何か方法がございますよ」

「ほんとう?サーシャ、みんなとおなじになれる?」

「ええ、きっと。さ、涙をお拭きいたしましょう」

「うん。えへ、たのしみ!」


 解決方法があると言われた事でサーシャは笑顔を浮かべた。

 とはいえ、エルもサイリールがどこまで出来るかはわかっていない、だがきっと大丈夫だと、なぜかそう思った。


 そうしてサーシャは幌の隙間から外を眺めて過ごし、お昼は馬車を止め、外に出たくないというサーシャの為に御者席と馬車内とで分かれて食事を済ませた。

 その後二人の幼子はお昼寝をはじめた。

 動いてなくとも、馬車の揺れなどや初めての景色で興奮していて疲れていたのだろう。


 二人を寝かしつけた後、馬車を出そうとしたサイリールとアソートをエルが呼び止めた。


「マスター、アソート様、少し宜しいでしょうか?」

「どうしたの?何かあった?」


 アソートの疑問の声にエルは頷く。


「サーシャお嬢様の事で少し」


 エルの言葉でサーシャの様子が変だった事を気にしていた二人は頷く。

 馬車からほんの少しだけ離れ三人は会話をした。


「と、言う訳でございまして、サーシャお嬢様の目のお花と、腕の蔓をどうにかできませんでしょうか?私、あんなに小さな体であんなに辛い思いをさせてしまっていたのかと……、本当に情けないのです」


 エルの話を聞いたアソートは愕然としてしまう。

 サイリールも眉間に皺を寄せ、サーシャにあの衛兵の言葉が届いてしまっていた事を、いや、自分の迂闊さを恨んだ。


「そうか……。サーシャには辛い思いをさせてしまったね……。僕が迂闊だった。考えておくべきだった」

「そんな事ないよ!ボクだって……。むしろ僕の方があの姿で長く生きてたのに!わかってあげれてないなんて……ごめんね……ごめん」


 三人共しばし無言になってしまう。

 サーシャがいつも明るくしていたから、忘れていた。

 サーシャの過去を見たのに。人の心の醜さを知っていたのに。

 闇の住人が人間扱いされないというのを分かっていたのに。


「本当に、情けない限りだ。僕はサーシャを守ってあげれていなかった」

「私だってそうでございます」

「ボクだってそうさ……。誰よりもサーシャと長くいるのに、何も気づいてなかった」

「うん、後悔はここまでにしよう。僕達であの小さなお姫様達を今度こそ守ろう」

「うん……!」

「はい。全力で」


 そうして三人それぞれ小さな罪と傷と、新たな決意を胸にし、サーシャの手と花の目について話し始めた。


お読み頂きありがとうございます。


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異世界転生!俺はここで生きて行く

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