第四十六話 ある女の話し 5
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今日は随分と激しかったわね。
どうかしたの?
そう、昨日の母親の話しでまだ憤っていたのね。
ありがとう。いい子ね。うふふ。
続きは今日は止めておく?
聞くの?わかったわ。
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下男に相談した日から数日後、あの母親がベランダから落ちて亡くなったの。
ベランダの一部が弱くなっていたんだと、そう下男が言ってたわ。
かわいそうにねぇ?
夜、あの子が私の部屋に来たの。
慰めてって。お母さまが死んじゃったって。
母親が亡くなったその日の夜に。
次の日の夜も来たのよ、母親がいなくて寂しいんだ、なんて言ってね。
あの子、本当は母親が死んだ事なんてどうでも良かったのよ。
だって、笑顔で私に会いにきて、すぐに恍惚とした顔で私の足に頬ずりしてるんだもの。
私に会いに来る理由が出来てむしろ嬉しかったんじゃないかしら?
あはは。本当に素敵だわ。
父親?もちろん彼も毎日来てたわよ、妻が亡くなった直後もね。
父親はいつも夜の食事後に来てたわ。
あの子は夜中だったわね、親が寝静まってから来てたもの。
だけど、母親がいなくなってからしばらくして、あの二人は昼も夜もなく私に会いに来るようになったわ。
偶然なのか、数日は鉢合わせしなかったのよ。すごいわよね。
でも、ずっとは無理な話し、父親と真っ最中にあの子と鉢合わせしたの。
鉢合わせしたその日の昼、父親が私を訪ねてきたの。
君の為に素敵な宝石を見つけたんだって、君の顔に咲く大輪の花によく似合うと思うんだ。なんて言って。
口実がないと会いにこれないのよ、とても良く似てる親子よね。
だから私、奴隷だったのに、とてもたくさん宝石や服を持っていたのよ?
今はそんなにいらないわ。私自身が宝石だもの。
着飾らなくても私は綺麗でしょう?
そして、私に贈り物をした彼は私をとても大切な物のようにそっと抱き上げてベッドへ連れていくの。
そうして愛し合ってる時に、あの子が来たの。
あの子全然気づいていなかったのね、父親が私としてる事。
すごく驚いていたわ。父親もね。
だけど、慌てる二人に、私が優しく声をかけてあげたの。
「みんなで仲良くしましょう?」ってね。
私の声を聞いた二人はトロンとした目になったの。
あの子に優しく手招きをして三人で仲良く愛し合ったわ。
そんな生活が5年程した頃かしら?
いつのまにか、屋敷にはメイドがいなくなってたわ。
残っているのは私に堕ちた男ばかり。
女は私だけになっていたの。
屋敷の内側は随分荒れ果てていたわねぇ。それはそうよね。
だって、みーんな私に夢中だったんだもの。
それでも、私の行動範囲内はとてもきれいに片付けられていたし、飾られていたのよ。
だから、外から見る分には美しい屋敷のままだったと思うわよ?
食事もいつもおいしかったわ。
お庭が寂しいわねって言えば、次の日にはたくさんの花で彩られていたの。
そんな日々を過ごしていたんだけど、ある日たくさんの兵士がきたの。
私が、彼にたくさん兵士がきたわよ?って言ったんだけど、彼もあの子も私に夢中だったの。
兵士が部屋へ踏み込んできても、二人は私に夢中だったわ。
君は全身から甘い蜜の香りがする、なんて言って、丹念に丁寧に私を愛撫していたの。
踏み込んできた兵士と、それを率いていた貴族はぽかんとしていたわねぇ。
くすくす。
だって、たくさんの人がいるのに、私への愛撫をやめないのだもの。
だから、私、彼らに見せ付けるように二人の愛撫を受けたの。
面白かったわ、兵士も貴族も、みんな顔を赤くしてしばらく私達、いえ、私を凝視していたんだから。
だけどそこで終わり。
私を手に入れたいからか、正気に戻ったのか、貴族が兵士に捕らえろと怒鳴りつけたの。
私にむしゃぶりついてる二人を必死になって引き剥がしていたわね。
すごい力だったみたいで三人がかりで一人を取り押さえていたのよ。
私は直接その貴族に連れていかれたわ、他の奴隷の子は知らないけれど。
そう、私だけ連れて行かれたの。
そういえば、その貴族がぽつりと溢した言葉があったのよ。
『君はなんて濃密な甘い香りがするんだ・・』ってね。
貴族特有の口説き文句だったのかしらね?くすくす。
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ん?私からは本当に甘い蜜の香りがするっって?
ああ、そういえば、みんなそんな事を言っていた気がするわね。
それもそうかもしれないわね、私はお花だもの。
愛されて愛でられる、お花。
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