第四十話 闇の血液
喜ぶサーシャが落ち着くのを待って、サイリールが声をかける。
「じゃあ、あしもみようか。じっとしててね、サーシャ」
「うん!」
またサイリールの手から黒い闇が溢れ出す。
スルスルと近づくとサーシャの下半身を闇が覆っていく。
先程ので慣れたのか、サーシャは闇をじっと不思議そうに眺めていた。
「ねー、これはなにー?」
「それはサイリールの能力だよ。触っても何もないんだよー」
「わーほんとだー!みてみて!つかめない!」
「うん、本当だねー。ほら、サーシャじっとして。うん、いい子いい子」
アソートとサーシャが仲良くしているのを見つつもサイリールはサーシャの足が動かない原因を探っていた。
しかし、いくら探っても構造的にはなんら問題は見つからなかった。
首を捻りながら再度こまめにチェックをしていく。
首を捻るサイリールを見てアソートが声をかけた。
「サイリール、どうかした?」
「うん、こうぞうてきにはもんだいがないんだよ。なぜうごかないのかふしぎなくらい」
「えっそうなの!?なんでだろう……」
「サーシャ。もうすこし、ぜんたいてきにみてもいいかい?」
サイリールの言葉にサーシャは意味がわからなかったのか首を傾げる。
「ぜんたい?」
「そう、くびからしたぜんぶみてみる」
「よくわかんないけどいいよ!いたくないし、へいき!」
サーシャの言葉にサイリールはニコリと微笑んだ。
そして、そんなサーシャをアソートが褒める。
「サーシャはいい子だね!かわいいなー。よしよし」
アソートはサーシャの頭を撫でながらぎゅっと抱きしめる。
そんな二人を見てからサイリールは改めてサーシャの体全体を闇で包み込み、しっかりと内部のチェックを始めた。
しかしいくら探ってもおかしな所がなかった。
そこでサイリールは少し見方を変えてみる事にした。
内部構造や、肉体に問題がないのならば、闇の住人特有のモノかもしれないからだ。
目に見えない部分を見ていく。
言わば、闇の血液というものだろうか。
体内を血液のように巡っているモノがあるのだが、それは目に見えるものではない。
人にはまったくないモノである。
ソレに気づいたのはこの池の畔に家を構えてからだった。
たびたび、サイリールの張った闇に闇のオーラを纏った獣が侵入してきていた。
その獣は追い返しても追い返しても侵入してくるので仕方なく殺して栄養に変えていたのだが、たまたまその獣を他の獣とどこが違うのか生かしたまま調べていた時に、その闇の力の流れを見つけたのだ。
あの時は数日かかってソレを見つけたので、あの時調べていて良かったとサイリールは思っていた。
ゆっくりと精査していくと、やはりあった。
ちょうど腰の部分で捩れて流れが止まっており、足の部分にはほとんど流れていない。
「これか、みつけた」
無意識にサイリールが呟いた言葉にアソートが反応する。
「見つかった!?治る?」
「ああ、うん。だいじょうぶ、なおるよ。いまほぐしてみる」
そうしてサーシャの腰の部分で捩れているモノを慎重にほぐしていく。
少しずつ、足に向けて力が流れていく。
流れていくごとにサーシャが自分の足に触れ首を捻っている。
それに気づいたアソートが声をかけた。
「サーシャどうかした?」
「あのね、なんかね、あしがほわほわってして、ちくちくするの」
「ちくちく?痛いの?」
「ううん、いたくはないの。へんなかんじー!」
少し不安になったアソートはサイリールを見た。
しかしサイリールはじっとサーシャの腰あたりを見つめ、少し眉間に皺をよせて真剣な顔をしていたので邪魔をしてはいけない、と、サーシャの頭をなでながらサイリールの処置が終わるのを待っていた。
サーシャが感じているのは、言わば指の血を少し止めてから再度流した時のような、そんな感じだろう。
実際、闇の力が腰の部分で捩れて止まっており、それをほぐして下半身に流れるようにしているのだから、似たような感じにはなるかもしれない。
そうして地道な、流れをほぐす作業は続いた。
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