第三十五話 少女を連れ帰る
商人との交渉が無事すんだアソートはニコリと微笑んでサイリールに支払いを任せた。
商人は実際1大金貨でも売れた事に少し安堵していた。
この町で売れなければ世話も維持費も大変だから、殺して廃棄しようとしていたので1大金貨であっても売れただけありがたいのだ。
貴族へ支払わされた額よりも4大金貨ほど安いが、0よりはマシである。
とはいえ、さすがに商人としての矜持があるので1大金貨以下であれば断っていたであろうが。
これまで大きな町で値段を下げて販売したがどうしても歩けない事や、腕が人型ではない事などで売れず、中には珍しいモノだし世話は他の奴隷にさせればいいと買おうとした者もいたのだが、声がほぼ出せないというのを聞いて皆やめてしまった。
やはりこんな幼い子供を好んで買うのだ、声を聞きたいのだろう。
運が悪かったのか、こんなモノでも買ってくれそうな人は最近新しく奴隷を購入をしたばかりで資金に余裕がないと、買えない事を残念がってはいたが断られ、仕方なく本店に戻ろうとした途中の小さなこの町で気まぐれで売ってみただけであった。
多少の補填は出来る予定があるので痛い出費ではあるがなんとかなると商人は考えていた。
この後商人は本店に戻った時に、販売予定で本店に置いている性奴隷達が強い闇の住人に襲撃され全員連れて逃げられているという衝撃を受ける事になるが、今は少女が売れた事に安堵していた。
サイリールが商人へ1大金貨分の、100金貨を支払うと、商人が鉄の棒の先端を燃やし始めた。
それを見たアソートが慌てて言う。
「焼印はいらないよ。あと、首輪も不要だ」
「そうかい……?まぁいいだろう。逃げられても責任は持たんよ」
「いらないよ。サイリール、この子を抱き上げてあげて。家に帰ろう」
「うん、わかった」
檻から出されたまだ幼く、痩せた少女をサイリールがそっと横抱きにかかえる。
片手で抱き上げられる程、小さく軽い事にサイリールは悲しみを覚えた。
少女は大人しく抱き上げられるが恐怖で震えていた。
後で知った事だが、少女は抱き上げられた事がなかったのであんなに高く持ち上げられてそれが怖かったらしい。
アソートとサイリールはそんな幼い少女を見て心を痛めていた。
途中の露店で適当に布を購入し、薄着のままの少女を布でくるむ。
そしてアソートが屋台で簡単に手でもって食べられそうな物を購入した。
屋台のおばさんにアソートが愛想を振舞ってから戻ってくると、手に持った袋からは焼けたパンと香ばしい匂いがしてきた。
その匂いを嗅いだ少女はお腹をぐぅぅとかわいく鳴らす。
そんな少女を見てアソートはニッコリと笑い、近くの座れる所へ移動した。
サイリールが布にくるんだ少女を下ろすと、アソートが袋からソーセージが挟まったパンを取り出し、少女に差し出した。
「食べていいよ。君の為に買ったんだから。君のご飯だよ。」
アソートの言葉に驚く少女だったが、空腹に勝てずそっと左手を伸ばしてパンを受け取ると、夢中になって食べ始めた。
右手は決して布からは出さずに。
きっと右手を見せると叱られたのだろう……。
少しして食べ終えた少女は名残惜しそうに自分の指を舐めていた。
「アソート、まだある?」
「あるよ。はい、もうひとつどうぞ。食べ切れなかったら教えてね。」
2個目のパンを差し出され、目をキラキラさせた少女はパンを受け取ると大きく口をあけてかぶりついた。
それからもうひとつパンをお代わりした少女は最初の恐怖もすっかり忘れ、お腹がいっぱいでとても幸せな気分になっていた。
少女は生まれてから一度もお腹いっぱいになった事がなかったのだ。
しばらくすると幼い少女は布にくるまったまま眠ってしまった。
サイリールが再びそっと抱き上げ、町の外へと向かっていく。
「たくさん食べたねぇ。でも良かった。今は幸せそうだ」
そんなアソートの言葉にサイリールも頷く。
町を出て街道を歩きながら2人は少女について話していた。
「多分、その子は貴族の所にいた闇の住人が産んだ、人間とのハーフじゃないかなぁ」
「いくつくらいなんだろう」
「ん~結構痩せてるけど、多分……身長からして、3、4歳かな……?まだこんなに小さいのにね……」
「きっとファニーのいいおねぇさんになってくれるさ」
「うん。そうだね!僕もかわいい妹が増えて嬉しいよ!」
サイリールの手の中でスヤスヤと幸せそうに眠る少女を大事に抱えながらサイリール達は家路を急いだ。
家に帰るまでの間、少女を起こしてしまわないように森についてからはアソートに抱えてもらい、二人で闇の中に入ってもらっていた。
家についてからも少女はぐっすり眠ったままだった。
とても疲れていたのだろう。
部屋をどうするか、増設しようかなどを軽食を食べながら話していたが、アソートが僕の部屋で一緒でいいんじゃないかと言った。
まだ幼いから、一人で寝るのは寂しいだろうという事でしばらくは慣れるまでアソートと一緒に寝かせる事にした。
エルは夜は居間でずっとファニーを見ているのでエルと一緒にするのは難しかった。
エルもサイリールも睡眠は本来まったく必要としない、アソートも今の体になってからは睡眠や食事は必要なくなっていたが、今までの習慣で食事をとり、夜は眠っていた。
エルはファニーを見るために夜はずっと起きてはいるが、サイリールはアソートに倣って夜は何もない時は眠るようにしている。
話し合いと食事を終えた三人は少女を抱えてアソートの部屋へと向かった。
子供用のベッドを増設すると少し部屋が狭く感じたのでちょっとだけ拡張をする。
そっと少女をベッドへと横たえ、ふわりと毛布をかける。
少女はすうすうと寝息をたてていた。
それを確認したエルは優しく少女の頭を撫で、居間へと戻っていった。
アソートはそのまま少女が起きても不安がらないように傍にいると言うので、アソートにまかせてサイリールも居間へと戻った。
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商人とのやり取りでの金額の表記や価格を変更しました。
100万を、1大金貨(100金貨)
400万を、4大金貨(400金貨)




