第三十三話 売られる子供
町へ到着したのはちょうどお昼過ぎくらいであった。
まずは隊長に報告をしようと、詰所へ向かった。
「こんにちは。たいちょうさんいる?」
「ああ!サイリールさん、どうも。隊長呼んできますね」
若い兵士が奥の部屋へと入っていく。
しばらくして壮年の男性がやってきた。
彼は以前山賊の洞窟から女達を助けた時、門で対応して、その後彼へ質問などをしていた男である。
隊長なのに、とても礼儀正しい男なので、町民からは信頼されている。
もちろんサイリールも彼には信頼を寄せている。
そうでなければ今回の依頼も受けなかっただろう。
「お待たせしました。さっそくですが、どうでしたか?」
「うん、いたにはいたけど、けものだった。どうくつのいりぐちの、いちぶがくずれてたから、そこからはいりこんでたのかもね」
「そうでしたか!安堵しました。でもまた入り口を塞ぎに行かねばなりませんか……」
「いりぐちは、ほうらくさせておいたから、もうはいれないとおもう」
「おお、それはありがたいです!では、こちらが報酬となります。少なくて本当に申し訳ないのですが……」
「ううん。もんだいないよ、ありがとう」
数枚の銀貨が入った小さな皮袋を受け取ると、サイリール達は詰所を後にした。
詰所入り口まで来た隊長は深々と頭を下げ、彼らを見送った。
本来正式に依頼された場合は彼のハンターランクを加味しなくても、金貨3枚相当の仕事である。
しかし、森に入って調査をしてくれる信頼出来るハンターなどそうはいないし、不確かな情報であった為正式に依頼する事も出来なかったのだ。
仕方なく、隊長は自らのポケットマネーで恥を忍んで、サイリールに依頼をしてみた所、あっさり受けてくれたのである。
当初は見てくるだけだしお金はいらないとサイリールは言ったのだが、不確かな情報なのに危険な森に入るのだから、本当にわずかばかりだが、受け取って欲しいと隊長に言われ、了承した。
隊長はサイリールがその危険な森の奥深くに住んでいるなどとは知らないのだ。
詰所を出て、次は薬屋へ向かった。
薬屋のおばさんに依頼品の薬草の束などを渡したら、今回も品質がとてもいいと喜んでもらえた。
通常なら森の入り口付近で採取する為、品質も悪く、薬草も小さいので銀貨数枚がせいぜいなのだが、彼の場合は、量もあるし品質も非常に高い為報酬が高くなる。
とはいえ、実際の採集場所を考えると危険度も合わせ金貨にするととてつもない額になるだろう。
さすがに初期の頃から色々とよくしてもらっている薬屋さんなのでそこについては黙っている。
金貨2枚を受け取り薬屋を後にした二人は、適当な屋台でお昼をすませ、露店が並ぶ道を少しぶらついてみた。
「あ、これ面白いねぇ!ファニーと一緒に遊べそう。買ってもいいかい?サイリール」
「ああ、ほんとだ。よさそうだね、かおうか」
露店に出ていた簡素な箱に積み木が詰まった物を、銅貨2枚で購入した。
積み木を購入した後もぶらぶらと眺めていると、人がやけに集まっている場所があった。
近づいて行くと何やら声が聞こえてくる。
「出来損ないだからお安いですよ!これ一体だけの出品となります!」
その言葉を聞いた瞬間、アソートは眉をしかめ、サイリールの裾をぎゅっと握った。
「どうしたの?アソート」
「うん……。多分これ闇の住人の販売だと思う……。普通はこんな小さな町で販売はしないんだけど……。」
なるほど、とサイリールが声のした方に目を向けると、一瞬だけ人垣の隙間から檻にいれられた小さな子供が見えた。
それを見た瞬間、サイリールの眉間にぐっと皺がよる。
ファニーを育て始めてから、サイリールは子供に対する思いはとても強くなっていた。
「アソート、ちいさいこどもみたいだった。みにいってもいいかい?」
「子供……!うん、行こう。助けられるなら助けよう」
アソートの言葉にサイリールはとても嬉しくなる。
「ありがとう」
サイリールは微笑んでお礼を言った。
そんなサイリールの微笑みを見た周囲の女性が薄っすら頬を染めてサイリールを見つめていた。
そうして人ごみを抜け檻がようやく見える所まで来た。
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隊長の依頼が通常なら金貨30枚相当の依頼というのを3枚に変更。
薬草の代金を10枚から2枚に変更。




