第三十二話 アソートにはかなわない
森を数時間駆け抜けて、やっと家についた。
息のひとつも乱していないサイリールはそのまま玄関を開け家に入った。
居間に向かうとまだ二人は起きていたようだった。
「お帰り、サイリール。大丈夫だったかい?」
「お帰りなさいませ、マスター」
「うん、ただいま。もんだいはないよ」
サイリールは普通に答えたつもりだったが、アソートが少し眉を眉間によせた。
「ねぇ、サイリール、本当に?何かあったんじゃないのかい?なんだか辛そうな顔をしているよ?」
アソートの言葉にベビーベッドで眠るファニーを見に行っていたサイリールは驚いた。
「アソートはどうしてそう、わかってしまうんだろうね。ふしぎだ」
「やっぱり何かあったのか。話してごらんよ。聞くしか出来ないけどさ」
「うん……」
そうしてソファーに座り、エルが淹れてくれた紅茶を飲みながら、何があったかを説明した。
「そっか……。確かにボクが一緒にいても何も出来なかっただろうね。だけど、それでも、次は一緒に連れて行ってよ。一人で抱え込まないでよ、相談くらいなら出来るからさ」
「うん、ごめんね、ありがとう。つぎはちゃんというよ」
「うん!よかった!」
アソートが満面の笑みを浮かべて喜んでいる。
うん、次はちゃんとアソートにも相談しよう。
なんでも一人で決めてはいけないな。
そう、サイリールは思った。
翌日、彼は2つの依頼の報告に行く事にした。
アソートに声をかけると、一緒に行くとの事だった。
出かける為に玄関まで行くと、エルがアソートに何かを言っていた。
「いいですか、アソート様。アソート様はかわいらしいので、町ではマスターの傍を絶対離れませんように」
エルの言葉に以前男に襲われかけた事を思い出し、少し眉を寄せて答えた。
「う、うん。気をつけるよ。前みたいなのはボクも嫌だし」
そうして二人は町へと向かった。
歩くとかなりの時間がかかるのでアソートを背負うと、サイリールは走りだした。
「うひゃー!相変わらず速いね!」
アソート自身も全力で走れば彼のようにスピードは出せるのだが、さすがにこのデコボコの森では全力で走ると何かしらに躓いて転んでしまう。
なので、全力では走れないから、サイリールに背負ってもらっている。
しばらく走り続け、街道付近に近づいたのを確認してアソートを下ろす。
「じゃあここからは、のんびりいこうか」
「うん。お昼ぐらいにはつきそうだねぇ」
ここから町へは2時間程で着く。
以前助けた女性の時は、彼女がたびたび休みたいと休憩をかなり多くとったので彼女の言った3時間よりも多く、4時間程かかった道だ。
サイリールは気づいていないが、彼女は、最初は彼との会話を多くしたくて、後半は精神的、肉体的疲れで多く休憩をとっていたのだ。
アソートとサイリールは町でこういうのがあれば買おうか、などを話しながら、のんびりと向かった。
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