第三話 知識と経験が足りない
今回は少し短いです。
小さな赤子を抱えた彼はしばし思案した。
母親から必要であろう知識や記憶を取り込み、赤子へは乳が必要である事などを把握した。
彼は乳を闇から作れるかを試してみた。
母親を闇に取り込み、そこから一部を作り出した。
これまでたくさんの動物を吸収して栄養が豊富にあったおかげで赤子の為の乳を作る事ができた。
しばらくして目を覚ました赤子に乳を含ませる。赤子はお腹が空いていたのか、必死になって乳を吸い始めた。
彼はそんな赤子を眺めながら不思議な気持ちになっていた。
母親の知識と記憶を鮮明に取り込んだせいか、これを言葉にするとしたら「愛情」だろうか。
自分から発生したモノではないが、それは確かに「愛情」と呼べる感情ではあった。
母親からの懇願を思い、闇から出たことがない彼はほんの少しだけ外の様子を見てみる事にした。
だけど、完全に外へ行くにはまだ知識は足りていない。
そんな風に考えていると赤子が乳を吸うのをやめたので、彼は知識を元に赤子を抱えなおし、背中をぽんぽんと軽く叩き始めた。
ケプっと小さなゲップをした赤子を再び抱え直し、過去に吸い取った知識を吟味し始めた。
吟味した結果やはり足りないという結論に至った。
これまでは人間の生活や文化、国などの知識だけを吸い取っていたので
死んだ母親から吸い取った山賊などのような戦闘についてはまったく知らなかった。
その辺の知識をつけないと、外を出歩くのは自分は平気でも赤子が危ない気がした。
彼は知識を得る為に行動が必要だと考え始めた。
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