第二十九話 闇の住人
依頼は二つあった。
薬屋のおばさんからの物と、町の衛兵である隊長からの依頼だった。
隊長からの依頼は、最近またあの洞窟に何か住み着いたようだという話しだった。
自分達で行きたいが、情報がハンターからの物でそれもいた気がする程度なので調査に行く許可は降りなかったらしい。
また前回のような悲しい事件は起こさせたくないので、わずかばかりの報酬になるが個人的にお願いしたい、と依頼されたので了承した。
また山賊が住み着いていたら彼としても不愉快なので、もし住み着いていたら皆殺しにするつもりであった。
だからこそ、今回はアソートの手伝いを断ったのだ。
アソートは戦いが出来ないというのもあるが、やはり彼は心が優しいのだ。
血塗れた仕事は自分だけで十分だと、彼は思っている。
今回は走って移動した為に4時間程で洞窟の近くまでやってこれた。
普通に歩けば彼の家からだと9時間近くかかってしまうだろう。
洞窟のそばまで来た彼は洞窟の入り口に木の板や石などが積まれているのに驚いた。
何かが住み着かないように対策したのだろう。
近くまで行くと、積みあがった石や木の板の一部が崩れ壊されているのを見つけた。
人一人がなんとか通れそうな隙間が開いている。
それを確認した彼は中へ入る事にした。
とはいえ、彼の体格では簡単に入れそうにないので少し体を崩してスルリと入り込む。
洞窟に入り込んだ彼はキョロキョロと周りを見る。
明かりは光り苔がごくわずかにあるくらいで、ほぼ真っ暗ではあるが、闇よりは明るい。彼には問題はなかった。
奥へ進むと布がかけられた部屋があるはずだったが、布はすべてとられていた。
布がないので中の確認が楽である。
さくっと確認してT字路まで到着したが、右側は途中で崩落しており道が土砂で埋まっていた。
彼は左へと進んだ。
更に奥へと進み、調理場を過ぎ、広場へ出る。
広場に出た途端、左右から襲い掛かられた。
右側からの攻撃は腰に差していた剣を抜き対応できたが、左からの攻撃は受けてしまう。
受けた所で彼は傷つきはしないのだが、まだまだ技術が低いと彼は思ってしまう。
「やった!確かに切ったぞ!」
「おう、ナイスだ兄弟!このままぶっころすぞ!人を切るのは楽しいなぁ!」
そんな声と共に、再び剣戟が舞う。
右から左から、下から上から、あらゆる方向から剣が迫ってくる。
彼は世話しなく目を動かしつつ、空気の流れを感じながら剣を受け、剣を流し、剣を避ける。
「くそっちょこまかと!大人しく切られやがれ!」
「アニキ!俺らの剣避けるとかやばいぞこいつ!」
「わかってる!くそ!」
二人から焦りが伝わる。
彼は冷静に少しずつ相手へダメージを与えていく。
しばらくして血を失いすぎたのか、一人が膝をつく。
「ぐっ……はぁはぁ。くそっ……」
「アニキ!大丈夫か!」
膝をついた男の前にもう一人が庇うように立ち塞がる。
彼はこれまで切り結んでいる間に、相手が人間ではない事に気づいていた。
最初は姿が人間のように見えたので人間かと思っていたが、良く見れば顔が毛に覆われて、頭からは耳が生えており、猫の顔をしていた。
さらに尻尾も生えているようで、よくよく見れば剣を握っている手や腕もふさふさとした毛で覆われている。
服を着ているのでわからないが、多分全身に毛が生えているのだろう。
二人共靴は履いておらず、獣のような足をしており、するどい爪が生えている。
だからこそ、彼は殺さないように動いていた。
「ねぇ、きみたちはやみのじゅうにんだろう?ぼくもやみのじゅうにんなんだよ」
分かり合えるんじゃないかと期待して、彼は二人に声をかけてみた。
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