第二十七話 頼まれごと
食堂へと着き、ファニーを幼児用の椅子へと座らせ、その隣にサイリールも腰をかける。
向かい側にはアソートが腰かけた。
エルは、食事の用意をする為に台所へと移動していく。
最初の頃はアソートが手伝おうとしていたのだが、断固として固辞されてしまっていた。これはメイドの仕事だからダメだと。
今ではアソートも口を出さずに、完全に任せている。
少しして、エルがワゴンを押して戻ってきた。
「お待たせ致しました。本日は豚肉をメインとした料理となっております。お嬢様のは特別仕様でございますよ」
そうして料理が配膳されていく。
「わぁ、今日もおいしそう!いただきます!」
「うん、おいしそうだね。いただきます」
「いたーたきま」
「はい、召し上がれ」
アソートが来てからは、彼も食事をとるようになっていた。
食材自体は彼が作り出しているので栄養摂取で言えば意味はないのだが、自分の口と舌で味わうというのを楽しんでいるのだ。
そうして、出来立ての料理に手をつけていく。
ファニーへはエルが食事を手伝う。
ファニーの料理は豚肉が細かく刻まれ、柔らかく仕上がっており、水多めで煮込んだ米と、蒸されて柔らかくなった野菜をこれも細かく刻み薄味のソースがかけてある。
デザートにはリンゴの摩り下ろしだ。
もうだいぶ離乳食も食べるようになってはいるのだがそれでも時たまエルに乳をせがむ時もある。
エルも無理に断乳はせずに、飲みたがる時は飲ませている。
とはいえ、出る量は減らしているのだが。
食事が終わり、お腹がいっぱいになって船をこぎ始めたファニーを彼が抱えて居間へと移動する。
居間へと新しく設置したベビーベッドにファニーを横たえるとすぐに眠った。
しばしファニーの寝顔を眺めてからソファーに腰掛けると、エルが紅茶を出してくれた。
「ありがとう。エルもすわりなよ」
エルも最初の頃はメイドの知識どおりの行動をしようとしていたが、アソートがもう家族なんだから線を引かれるのは寂しいと涙目で訴えてからは適度にメイド仕事を楽しむようになっていた。
ただ、言葉遣いだけはクセになっているので簡便して欲しいと言われている。
ソファーに腰かけたエルを見てから、サイリールは懐から今日買ってきた物を取り出した。
「きょうはファニーによみきかせするための、ほんをいろいろかってきたんだ」
すでに町では彼が小さい子を育てているというのは知られていた為、彼がうろうろしてるのを見たファンのおば様達に何を探してるのかと問われ、子供のお土産をと言ったら、本を薦められたのだ。
「わー。見せて、見せてー。あ、懐かしいなーこれ。昔子供が読んでるのを見たことがあるよー」
「まぁ、いいですね。お嬢様が起きたら早速お読み致しましょう。」
「ボクも一緒に聞いてていいー?」
首をコテンと傾けてエルにお願いするアソート。
それを見たエルは脳内で鼻血をふきだしながら答えた。
「ええ、もちろんです。かまいませんよ」
「サイリールも一緒に聞かない?」
「ああ、すまない。まちのひとにたのまれたことがあるから、それをしてくるよ」
「頼まれごと?また獣退治?」
「いや、このもりにあるやくそうとり」
「ああ、薬屋のおばさんのお願いかな」
「そう」
「じゃあボクも一緒に探そうか?二人で探せば早いだろう?」
そんな提案をするアソートに、彼は首を横に振る。
「いや、いいよ。アソートはファニーといっしょにいてあげて」
「いいの?」
「うん、ついでにやることもあるから」
「そう、わかった。気をつけてね!」
アソートの言葉に笑顔で頷いた。
「じゃあ、いってくるね」
そうして彼は家を出た。
薬草とりは本当の事だ。だけどついでの方が本命でもある。
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