第二十四話 茶葉や調味料を作る
身もだえしつつもメイドの役割をこなす為、台所へ向かおうとしてまだ茶葉などがまったくない事を思い出す。
楽しそうに眠るファニーに小声で挨拶している少年を横目で見つつ、メイドは彼に申し訳なさそうに告げた。
「マスター、申し訳ないのですが……その、茶葉を作って頂けましたら……と」
「ああ、そうだね。ついでだからほかのもつくってしまおうか」
彼の言葉にファニーを見ていたアソートは顔を上げ、かわいらしく首を傾げた。
「茶葉を作る?サイリールはそんな物も作れるのかい?」
「うん、きおくにあればなんでも、さいげんできるとおもう」
「それはすごいね!ボクも人間に捕まるまでは紅茶が好きで、コッソリ色んなおうちにお邪魔してはちょびっとだけ茶葉を貰って飲んでいたんだー」
小声で叫ぶという器用な事をこなし、ニコニコ笑う少年をうっとりした顔で見るメイド。
「それは素晴らしいですね。もしよければ、マスターに茶葉の記憶を見て頂くわけには参りませんか?」
「ボクはいいよ!もし再現出来るなら、メイドさんにボクのお気に入りの紅茶を淹れてもらいたいな!サイリールにもぜひ飲んでほしいもの」
そうして彼はアソートから紅茶に関する記憶を貰う。
「わぁ、アソートのちゃばのきおく、すごいね。なんしゅるいあるんだろう」
「どうだろう?多分30種類くらいはあるかもしれないねぇ」
そんな会話をしながら、起きたファニーをメイドが抱き上げ、台所へと向かう。
「アソート様はどの紅茶が一番お好きなのですか?」
メイドの質問に、アソートがぱっと顔を輝かせて答える。
「あのね!ボクが一番好きなのはディンブラって茶葉でね、ほんの少しハチミツを溶かして飲むんだ。鼻を抜ける香りが薔薇のような香りがするんだよ!」
「そうなのですか、では、マスターに作って頂けましたらそちらをお淹れ致しましょう」
うん!と元気よく返事をするアソートを見て、彼もメイドも顔を綻ばせる。
台所についた彼はまず調味料類を作っていった。
メイドもアソートも興味深げにそれを見ている。
彼らの目の前で次々と小瓶などに調味料が満たされていく、ものの数分とかからずに調味料は完成された。
「わぁ。すごいねぇ。どうなっているんだろう?不思議だなー」
「ううん、どうなんだろう?ぼくもげんりまではわからない。ただできるとしか」
「あはは。それが君の能力だろうからねぇ。理由を分からずとも出来てしまうものさー」
「本当に、マスターのお力はすごく便利でございますね。とても助かります」
そうして次は茶葉の作成に取り掛かった。
彼はメイドを見ながら訊ねた。
「ちゃばはぜんしゅるい、ほしい?」
「はい、可能であればお願い出来ましたら……と。マスターにも、アソート様にも色々な味や香りを楽しんで頂きたいです。それに、私の元となられた方はとても紅茶の淹れ方がお上手だったようなのですよ」
「そっか……。じゃあつくろうか。」
そうして今度はアソートの記憶から茶葉と、その茶葉を入れていた入れ物を同時に作り出していく。
彼自身も原理などはさっぱり分からないが、本物と遜色のない栄養があり、味も見た目も同じモノが出来上がる。
なんなら、豆一粒に、色々な栄養を詰め込んだ物も作れるだろう。
取り込んだ動物達の栄養が元となっているはずだが、茶葉などはどうなっているのか、本当に不思議である。
彼が茶葉を作っている間に、お腹が空いたと泣くファニーにメイドは乳を与えていた。
記憶を受け継いだせいなのか、今までよりもいっそうメイドはファニーに愛情を感じていた。
彼が全ての茶葉を作りあげる頃にはファニーはおなかイッパイになっており、アソートがメイドに抱かれたファニーに変な顔をしたり、手で顔を隠してからばぁと出してみたりとあやしていた。
ファニーは楽しそうにキャッキャと声をあげている。
「うん、できた。どこにしまっておこうか?」
「それは私が致しますよ、マスター」
「そう?たりなくなったらいって。またつくるから」
「はい、有難うございます。マスター。では、早速紅茶をお淹れしますね。申し訳ございませんが、お嬢様をお願い致します、マスター」
そうして、メイドからファニーを受け取る。
彼に抱かれたファニーは彼の顔をじっと見つめたあと、嬉しそうな声をあげて笑った。
「あっあー!あううー」
「かわいいな、ファニーは。ほんとうにかわいいね」
ファニーを見つめ優しく声をかけるサイリール。
アソートはそんな彼を見て、ニコリと笑う。
メイドはそんな彼らを見てほっこりしながらも紅茶の準備をしていく。
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