第二十二話 新しい体
森を歩く事数時間、やっと開けた場所が見えてきた。
彼が家を出てから3日が経っていた。
「ああ、やっとついたよ。いえについたらすぐにためすかい?」
「タイミングは君に任せるよ。ボクはもう覚悟は出来ているから」
「わかった。ファニーのようすをみたら、はじめよう」
そうして家についた彼が扉を開けるとメイドが頭を下げて帰りを迎えた。
「お帰りなさいませ、マスター」
「うん、ただいま。ファニーはげんき?」
「はい。お嬢様は先程お食事を終えて今は眠られております」
「そうか。ありがとう。ちょっとみてくるよ」
彼が居間へ向かうと、玄関の入り口には黒くて丸いものが残っていた。
メイドは首を傾げる。
「ふむ。どちらさま……というべきなのでしょうか?」
黒くて丸いのが針金のような手足をワタワタとさせて答える。
「あ、えっと!初めまして。ボクはアソート。サイリールの……えっと友達?」
「疑問系で返されましても困りますが、マスターのご友人であれば歓迎いたします。玄関ではなんですので、こちらへどうぞ」
そうしてメイドはアソートを食堂へと案内した。
「居間はお嬢様が寝ておられますので、食堂で申し訳ないのですが」
「いやいや、ありがとー。こんな風に丁寧に持て成されたの初めてだから、緊張しちゃうよ」
「きちんとしたお持て成しを出来ず心苦しいばかりです。茶葉もありませんので、水になってしまいます」
「あはは。サイリールに聞いているよー。何も用意してないって彼が言ってたからねぇ」
メイドの言葉に笑っていたアソートだったが、少し真剣な顔をして質問をした。
「ねぇ、少し聞きたいんだけどいいかなー?」
「なんでしょう?お答え出来る事でしたらなんでも。」
「えっと、君は人間じゃないんだよね?サイリールが作った……んだよね?」
「ええ、そうなります。私はマスターに作られたモノです。人間ではありません」
「やっぱりそうなんだ。すごいなぁ、彼は。どこからどう見ても、君も彼も人間にしか見えないや。いいなぁ」
メイドは首を傾げた。
「あなたは立派な生物でありますが、何か問題があるのでしょうか?」
「あはは、ありがとー。でもねぇ、ボクは人間の見た目になりたいんだ。彼に、人間の見た目にしてもらうんだー」
「そうですか。今の見た目もかわいらしいのですが、きっと立派な人間の姿になられる事でしょう」
そうしてメイドはニコリと微笑んだ。
アソートも嬉しそうに頷いた。
しばらくして、ダイニングに彼が顔を出した。
「ああ、ここにいたんだ。ごめんね、またせた?」
「いいや、全然。もういいのかい?」
「うん、ファニーはよくねむっていたよ」
「そっか。ボクも人間の見た目になれたらファニーちゃんに挨拶させてもらっていいかな?」
アソートの言葉に彼は笑みを溢す。
「いいよ。今でもいいけど」
「ううん、人間の見た目になれたらにするよ」
「そう。じゃあはじめようか。ここだとかくにんしにくいから、そとでいいかな?」
「もちろん!行こうか」
そうして二人はメイドに見送られて外へと出た。
「じゃあ、まずはたましいからぬくね。すこしへんなかんじがするかもだけど、がまんしてね」
「う、うん。大丈夫。宜しく頼むよ」
そうして彼は手のひらから闇を出すとアソートを包み込んだ。
闇がくるくるとアソートの周りを回る。
次第に、アソートの一つだけある目の瞼が垂れ下がっていく。
そして完全に闇に包まれた。
少しして、彼がアソートの体から闇を放すと、そこには地面に転がるアソートの体があった。
「うん、うまくぬけたね。はは。アソートのたましいはちいさくてかわいいな。かれらしい」
闇に包まれ、ピョコピョコと動く小さな魂をみて、彼は笑顔を浮かべた。
「じゃあつぎはにくたいだね。ぼくのやみとアソートのにくたいをまぜて……」
再び別の闇を手のひらから出し、アソートの肉体を包み込む。
闇が蠢き、アソートの肉体もぐにぐにと動き始める。
しばらくして、完全にアソートの肉体は原型をなくしていた。
「さて、つぎはにくたいだけど、アソートのたましいはちいさいからな。どのくらいのおおきさがいいかな?きおくをみてみよう」
アソートの魂の大きさに合いそうなサイズの人間の姿を求めて彼は様々な記憶を掘り返した。
その中で数人よさそうなサイズがあった。
そっくりにしてしまうと問題があるだろうと考えた彼は記憶の中で特にきれいだなと思えたモノを参考にそれぞれバランスよく混ぜ合わせた。
最初に大体の大きさを決める。
アソートの肉体と溶け合った闇が蠢き人間で言えば10歳~12歳ほどの大きさになる。
そこから、大雑把に人の形を作り上げると、真っ黒い人形が出来た。
最初に肌の色を決める。白磁のような自分とは違うタイプの色にした。
そして、ふわりと明るい蜂蜜色の髪の毛。大きな目、そして瞳の色は青空のような色。
小さめの鼻にぷっくりと膨れた桜色の唇。
頬はほんのり薔薇色をしている。
手足はスラっと長く、少年特有の美しさも兼ね備えている。
最後に、闇で作った服を纏わせていく。
真っ白いシャツに、黒いベスト。首元の襟には赤いリボン紐。膝より少し上の、短めのズボン。そして膝下まである白い靴下に、濃い茶色の革靴。
外見が完成したので慎重にアソートの魂を入れていく。
少年の胸の辺りからアソートの魂を入れる。少しずつ染み込むように。
完全にアソートの魂を入れてしばらくすると、少年の口からふっと息が漏れた。
それを見た彼はほっと一安心する。
まだ目を覚まさないけど、馴染むまで少しかかるだろうと思い、少年となったアソートを抱き上げ、家へと向かう。
玄関をあけ、空いてる部屋のひとつにアソートを寝かせる。
柔らかいベッドに横たえるとドアをそっとしめて彼は居間へと向かった。
居間にいてもこの家の中であればアソートが起きた程度ならばわかるからだ。
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